星屑レゾンデートル | よみがえれ毛魂

よみがえれ毛魂

薄れゆく毛根とともに失っていった何かを探す日々。

帰宅途中の電車の中で、
不思議な会話を耳にした。

『あの仕事は彼にはできない』

『俺くらいのスキルとスピード感がないと無理』

などなど・・・

いくつもハテナが浮かんだ。
酔っ払いの戯言にしてはちょっと面白い。

この兄ちゃんはなにものだ?
自分の能力をアピールする辺り、
鼻持ちならないクサレインテリって感じがしなくもないんだが。

いい時計してる…
スーツもバリッとして
スタイリッシュで、
労働者の臭いがしない。

金融屋かな…。

漏れ聞こえてくる会話の中身も、
なんとなくカネの臭いがする。


この兄ちゃんに
俺のもってる仕事お願いしたら
持ち前のスピード感で
バリっとこなしてくれるのかな。

彼の仕事ぶりを想像するに…

きっと
泥臭い作業とは無縁のタイプだろう。
負け戦を知らない、
攻めるだけ攻めて、
形勢が悪くなる前に、
次のエサ場を求めて飛び去っていく。

そういう嗅覚に優れた人種なんだろな。

それはそれで、
彼らの仕事には重要な能力なんだろう。

リスク回避っていうのかな。
・・・当たり前か。

あぁ、
なんか勝手な妄想膨らませちゃってごめんよ。

さながら旧日本軍のように、
補給線が延びきった最前線で、
横のつながりも見えないまま、
ジャングルの中を掻き分けさまよってるような日々を暮らしていると、
目に見えるものすべてに噛み付きたくなってくる。

車窓に映る自分の、
ぼろ切れを巻きつけたようなスーツと、
荒縄のようなネクタイを見てたら、
なんだか君が一段と眩しく見えるから・・・
ついひがんでみたよ。



「たっきーさん、
仕事はもっと楽しんでやらないとダメですよ」

孫請けのソフト屋に上から目線で言われた。

君が楽しんで仕事をやっているおかげで、
こっちがどれほど苦労しているか、
こんこんと説教してやろうかと思ったけど。

やめた。

自分のやっていることに、
自分のやっている仕事の成果に、
まったく自信をもっていないから。

楽しんで仕事をするってどういうことなんだろね。

孫請けの君が、
自分がかかわる仕事の大局を見据えることなど、
無論無いだろう。

そういう機会を与えない自分のせいかもしれないけど。

君が仕事を楽しんでいる姿勢を見ていると、
絶対に絶対に、
仕事の大局など見据えようという気概は感じられない。

結局のところ、
自分の与えられた役割だけを全うして、
その結果にまで思いを至らせることなどないんだろう。

仕事のスタイルとして、
それはもちろん正しいんだろうと思う。

今の世の中の状態から言っても、
ある一つの商品に、
初めから終わりまで関われる人は稀なのかも知れない。

そういう昔かたぎの仕事が効率的でないこともわかる。

だけど。

なんだろう・・・、
うまく言いあらわせないんだけど。
自分を正当化したいだけと思われるのも嫌なんだけど。

仕事を細切れにすればするほど、
達成感も喜びも減っていくように思う。
無論楽しさなんて望むべくもないように感じる。

与えられた役割に対する成果。
成果に対する対価。
それだけが仕事の喜びなのかな?
楽しさなのかな?

「ぶっちゃけ、仕事に楽しみなんか求めない。
金さえ入ればそれでいい。」
それが人間の本音なんだったらそれでもいい。

「仕事を楽しむ」って言葉が、
金と労力を天秤にかけながら
うまいことやり繰りする人間の詭弁であるならば、
それでも構わない。

隣の芝の青さばかりを羨んでるつもりはないんだが、

まぁ…

いまだに仕事に疑問が付きまとうんだよね。
情けない話だけど。

籠に乗る人、担ぐ人、
そのまた草鞋を作る人、

ってね。
うん。

自分の知らないところで、
色んな人が色んな課題を抱えながら、
社会も経済も会社も動いていくわけだけど。

だけど、
もっともっと根本的なところで、
なにか歯車が噛み合ってない感じがする。

本末転倒ここに至る。
そんな感じ。

需要家の要求に対して、
最善の努力をして、
最良の回答で応じる。

仕事って、
それが大原則なはずなんだ。

金を貰うっていうのはそういうことなはずなんだ。

ただストイックに成果を出す。
そこには楽しさとか喜びとかそんなものが介在する余地はない。

うわべの知識を弄して、
手を汚すこともしないで。

形だけきれいにまとめあげて、
本質をないがしろにして。

体裁を整える為のルールで縛り上げて、
独創の芽を摘み取る。


何のための仕事だ?
誰のための会社だ?

こんなの、
仕事ごっこじゃんか。

とは言えども・・・

それなりにでかい木の元で、
それなりにぬくぬく暮らしている自分の言葉は、
どう聞いたって
愚痴以外のなにものでもないんだ。


このおにいちゃんのように、
決められたルールの中で、
結果に向かって一路突き進み、
自他共に認める輝きを放てる人の言葉を、
戯言と切り捨てられる資格は
俺にはないんだよ。


なんだ、
結局人は人、自分は自分ってことなのか?


・・・・

お兄ちゃんの仕事にも、
何か問題はあるのかい?

君の仕事のいいところは、
なんとなく伝わってきてるから、
君の悩みを聞いてみたい。