いよいよF1 2021シーズンが始まりました。
今シーズンは角田選手がF1デビューを飾り、プレシーズンテストでは全体2位、FP2ではチームメイトのガスリーのタイムを上回り、予選はミディアムの熱入れに失敗したようですが、決勝9位と期待に応えてくれました。
そしてPUマニュファクチャラーとして参戦しているホンダにとってもラストイヤーになります。
ボアピッチを狭め、カムシャフトの位置を下げ、バルブ挟み角も変えるなど、「新骨格」と称する完全に新設計のICEを投入して来ました。
F1公式サイトではメルセデスを凌駕したかも、などと気の早い評価もされているようです。
さて、これまでホンダ以外にもエンジンサプライヤーとして数社、日本のメーカーがF1に参戦しています。
無限はベースがホンダエンジンでしょうから除外すると、スバル、いすゞ、そしてヤマハ。
スバルのF1エンジンはスバリストであれば消してしまいたい黒歴史の大失敗作で、いすゞのエンジンは評価は高かったようですが、テストしか走っていません。
そういう意味ではそこそこ成功したのはヤマハくらいという感じでしょうか。
ヤマハと言えば、1967年に発売されたトヨタ2000GTのエンジンのヘッド周りをDOHC化した事で知られています。
これだけを聞くと、トヨタにはDOHC化する技術は無く、DOHC化を実現するにはヤマハの技術力を借りるしかなかったように聞こえます。
Wikipediaにも、以下のように書かれています。
2000GTの高性能エンジンや良質な内装には、ヤマハ発動機のエンジン開発技術や日本楽器の木工技術が大いに役立てられている。ヤマハ発動機は戦時中に航空機用の可変ピッチプロペラの装置を製造していた技術・設備を活用するため、1950年代中期からモーターサイクル業界に参入して成功、高性能エンジン開発では10年近い技術蓄積を重ねていた。また1950年代後半以降のモーターサイクル業界では、四輪車に先駆けてSOHC・DOHC弁配置の高効率なエンジン導入・研究が進んでいた。このような素地から、ヤマハはトヨタ・クラウンのM型直6エンジンにDOHCヘッドを備えたエンジンを製作することができた。
かく言う、私もトヨタ3MエンジンのDOHCヘッドはヤマハの技術力があればこそ、と長い間思っていました。
が、実はそう簡単な話では無い事が分かりました。
内燃機関超基礎講座 | ヤマハとDOHC:レーシングエンジン、そしてトヨタとの密接な関係
トヨタ2000GTの発売が1967年なのに対し、ヤマハ初の4ストロークエンジン搭載車の発売は1970年なのです。
ヤマハ初のDOHCではありません。発売されたのはSOHCエンジン搭載車です。
初のDOHC搭載車の発売は1973年です。
それまでのヤマハは2ストロークエンジンしか作って来なかった訳です。
幾ら4輪のエンジンより2輪のエンジンの方が高回転高出力とは言え、、DOHCはおろかSOHCエンジンすら一基も市販した事の無い会社の方が何万基もSOHCエンジンを生産して来た会社より技術力があると思う方がどうかしています。
と考えると、トヨタ2000GTのエンジンを開発していた1960年代中頃、ヤマハは4ストロークエンジンの市販に向けて鋭意研究開発中で、DOHCエンジン設計のノウハウを他社に提供するどころか、トヨタに教えを乞うレベルだったと推測されます。
という事は、トヨタ2000GTのエンジン開発を通じて4ストロークエンジン、DOHCエンジン設計のノウハウを手に入れ、その後の開発の礎とした、というのが正しい認識なのでは無いかと思います。
そうやって見ると、トヨタからの一方的な持ち出しのように見えますが、トヨタとしてはその後の4A-Gや1G-Gなどの開発委託につながり、ヤマハとしてもDOHCエンジン開発のノウハウを手に入れた事で二輪のGPやF1に参戦出来た訳ですから、WIN-WINの大成功だったと言えるのでは無いでしょうか。