少しだけ、自分のことを話してみる

 

僕はタバコが好きじゃない

 

美味しいと思ったことがない

 

初めてタバコを吸ったのは大学4回生の頃だ

 

大好きな人を亡くした直後だ

 

初めてのタバコは、吸い方もわからず、ただ苦くて煙たくて

 

そして、雨が降っていた

 

吸いたかったというよりも、なんでもいいから自分が手を出していないものに手を出してみたかったのだと思う

 

次にタバコを吸ったのは父の通夜の夜だった

 

その時は、空を眺めながら吸っていた

 
雨が降っていた

 

僕には、ずっと後悔をしていることがある

 

父が亡くなったとの報せを受けた時に、少しホッとしてしまったことだ

 

父と不仲だったわけではない

 
脳内出血により倒れ、見る影もないほどやせ細り、
 
僕たちが誰かもわからず、会話すらもまともにできず
 
毎日のように熱を出し、回復の見込みのない、寝たきりになった父

 

死なせないように、胃に直接栄養を流しこみ、ただ命をつなぎ止めているだけの父

 

そんな父に会いに、毎日病院に出向いている母

 

それが2年続いていた

 

だから、父が亡くなった時に少しホッとした

 

これで父も母も、そして僕も解放されると思ってしまった

 

後悔している

 

生きようとしている父に対する侮辱だ

 

懸命に父の元に通いつめていた母に対する裏切りだ

 

ずっと後悔している

 

父さん

 

いつか僕がそちらに行ったときには、叱りつけてほしい

 

こんなことを思ってしまった僕を、どうか許さないでほしい

 

僕はタバコが好きじゃない

 

僕は自分がどれだけちっぽけな人間かということを知っている

 

それを忘れないように

 

そして迷わないように

 

僕は時々、タバコに火をつける