藤田まことさんを偲んで「はぐれ刑事純情派最終回スペシャル」でのちょっとしたエピソードを・・・。





僕は警察官役で1シーンだけですが藤田さん演ずる安浦刑事を絡む場面があり

そのシーンの撮影がクランクイン初日って事もあり

まず別室に神主さんを呼びキャストスタッフ全員で撮影無事終了祈願のご祈祷を受けまして

杯のお神酒を手に取り藤田まことさんの挨拶。

病からの復活とは思えない程凛とした立ち姿と力強い挨拶に見惚れてしまいました。



そして僕との撮影シーンに。



勝「警察官役の松本勝です、宜しくお願いします」


藤「藤田です 宜しくお願いします(微笑)」



なんせ小さい頃から「必殺」シリーズを親に内緒で盗み見?してたぐらい好きでしたから(笑)

藤田さんを目の前にして緊張というかなんというか感慨深い想いもありつつ

挨拶をすませすぐさま動きと台詞の確認へ。


藤田さんの「どうした?」の台詞の後に僕の台詞があったのですが

テストが終わり本番準備をスタッフさんがしてるところで

僕の台詞に「街中」という言葉があり藤田さんが


藤「なぁ 最近「街中」って言うかね?」


勝「えっ?はい?・・・そうですねぇ あんまり使わないですね」

(突然の問い掛けに驚いてしまいました)


藤「こういう場で使うかぁ?」


勝「台本通りにやってますけどちょっと使いませんね」



注:この話だけだと別に「街中」って使う人もいるしと思われるかも知れませんが

そのシーンや役柄のシチュエーションも全てひっくるめての話しですんで

その辺も想像しながら読んでください。



藤「そうだろう」


勝「そうですねぇ」


藤「(突然大声で)監督ー!」


監「藤田さんどうしました?」



監督がやってきてそこで藤田さんと監督と僕とで少し話しをして言葉を削り再開



藤「そっちの方がしっくりくるな」


勝「そうですね」


藤「自分 関西か?」


勝「はい、大阪ですわ」



藤田さんは「そうか」と二度ほど うなずき微笑みながら


「頑張りや」


と優しく声をかけて頂きました。



その後撮影が終わり僕は控え室に。

控え室で一緒だった役者の細川純一さんは15年以上

藤田まことさんの殺陣のシーンでの代役(晩年)も務め

藤田さんの座長公演にも出演してはる方で


その事は過去の記事を読んでもらうとして

楽屋にて・・・


闘病から復活し必殺仕事人の撮影を経て

今回のはぐれ刑事SPだったのですが

細川さん的にはありえないほどの回復力なんやったと。

普通に動き台詞言ってるだけで驚異なんですよと話してくれた。

病み上がり後の「必殺」の撮影では座ってるシーンが多く

撮影後はまだご自分の力では立てずスタッフに立たせてもらってって姿を見てて

そこからまだ半年しか経ってないのに

もう今は普通に立って芝居をしてる藤田まことさんがとんでもないんですと。


僕は細川さんの話を聞くまで全然そんな事思いませんでした。


だけど良く考えてみれば76歳で

癌の治療を終え病院を出てすぐに半年間の撮影に入り

それが終わってこの撮影でしたから

ただたんに体が強いとかそういうレベルじゃなくて

役者としてスイッチが入ると体調とかそういうのは二の次になるんでしょうね?


しんどさとか共演者に微塵も感じさせないどころか

僕のように無名な役者たちにも気さくに声をかけてくれて

リラックスして撮影に臨める空気を自らがつくってくれる。


僕はつくづく運が良いと言いますか

素敵な役者さんと一緒に仕事をさせてもらえているんだなと。



藤田まことさんの「がんばりや」とかけてくれた言葉と

その時優しく微笑んでくれた笑顔を

僕はいつまでも忘れません。



ほんまにお疲れ様でした。


心よりご冥福をお祈りいたします。




僕、頑張ります!




松本勝





勝のでんがなまんがな!-はぐれ刑事 台本