在る日のことである、2人の女性が電話をしている。この2人というのは元来知り合いで、何でも話す仲である。
この際も、日に起こったなんでもない出来事をさも大ニュースだ、大事件だと敢えて大げさに騒いでは大きな声で笑う。
いきなり、ふっと、電話先の声が消えたのは午後10時頃だったらしい。声が消える瞬間までも、笑い声を発していて、電話が切れたことに気づくのが少し遅れた、この時の原因はなんてことはない、携帯電話の充電が切れたのだ。充電が残り僅かな事態を把握せず、友達と談笑をしていたのに、終に充電が切れて、電話が止まったという顛末である。

すぐさま携帯電話の充電を始め、電源が着くのを待って、再び電話を掛けた。それから異変に気付いたのは早かった。
電話から聞こえてくるのは、さっき、電話が切れた瞬間の笑い声、それも延々聞こえてくるのだ。
何を呼び掛けても、こちらがいくらか黙ってみても、聞こえてくるのは、何某の話題によって引き出された楽しい笑い声なので、女性はその状況から鑑みて、
いくら非論理的であっても、非科学的であっても、この女性は、さっきの電話が切れる瞬間の時間に閉じ込められてしまったのだ、と思い至るのは、この時ばかりは自然であった。

 

女性はひどく怯え、本人に直接会ってみても、医師に見せても駄目だった、終には治療には至らなかった。と、試していない事態をさも現実のように、脳内でのみの忠実な再現によって、一瞬で私は彼女のためにやり切ったと胸を痛めた。