居心地が良い
とうとう本格的に冬が来ようとしている週の４～５日は一日中分厚い雲に覆われて、空が黒から灰色になって、そして夜になると（というか四時だから夕方といった方がよいか）また黒に戻る晴れの日は八時くらいに明るくなってきて、四時くらいにまた暗くなる。これから六週間、冬至まで事態は悪化し続けさらに三か月くらいこんなんかと思うと気が重くなる北欧ライフにあこがれている人には私のブログを読むことはお勧めしない（キッパリ）なぜなら私の、ブログを書こうと思う時のこの、執筆意欲というのは、ほぼほぼ、怒りや憤り、苛立ちからくるからである。きらきら素敵な海外生活のブログはたくさんあると思うので、そういうのがいい人はそちらを読まれるといいと思う。『ネガティブなこと言ってるとそうゆうのを引き寄せる』とか、『無い物にばっかり目が言ってると、幸せになれない』とか、そんなことはわかっているし、試みてないわけがない。でもそれにも限界というものがあるのだ、太陽の光を浴びることが出来なければ栄養医学の事を勉強しているとき、なるほどと思ったことがあった。『ニューヨークに移住してきた黒人種の間で結核が流行っている。理由として考えられるのは、本来であれば赤道に近いところで、軽装で、炎天下で暮らしていて丁度よかった人種が北に移住し、長袖を着て、日照時間も日差しの強さも弱いところでは、十分なビタミンDを産生できるだけの日光が得られていないので、結果、免疫力が下がり、結核を発症しやすくなる』というのである。白人種が日光に対して、私たちは普通に日焼けして黒くなる程度でも、彼らが火傷のような反応を起こすことがあるのは、要は少しの日光で事足りるようになっているからである。黒人種ほどではないが、私たち、黄色人種もやはり影響を受けやすい。太陽光を得られないので、睡眠リズムも狂いやすくなり、睡眠の質も悪くなる。ここまで読んで、なぜタイトルが『居心地がよい』なのかというと、この時期のスウェーデンの頻出単語であるからである。スウェーデン人はよく『Mysigt（ミューシグ）』という。これは、居心地がいいね、とかほっこりするね～とかそんな感じだ。こっちでいうところの、例えばキャンドルに火をともして、暖炉の薪に火をくべて、ぱちぱちという音を聞きながら、あったかい毛布にくるまって読書や編み物をしてる人が感想として使う言葉、といえばおわかりいただけるだろうか。家でほっこりするのはわかる。でも職場にそれは要らない朝出勤するときはもちろん暗く、クリニックのすべての電気をつけてさあ働こう！と行きたいところだが、クリニックの休憩室や、スタッフルーム（ミーティングなどをする）も時に電気をつけずに、キャンドルをともして同僚が『Mysigt』と言っていることがあるのだが、そのたびに私は『いやいやいやいや、これはただただ暗いだけや！レントゲン読影でもするんか！』と思わずにいられないのである。スウェーデン語にすごいエネルギーを使い、仕事中はもうアドレナリン全開で働かないと、言葉が理解できないのだ。まったりしている余裕はないし、したくない。スウェーデン人も冬の暗さや、天気の悪さをよく愚痴るが、キャンドルが大好きである。あの間接照明の色合いが、彼らにとっては普通なのだ。故に、診療室のチェアで、ライトが目に入らないように口のできるだけ下の方を照らしても、まぶしい！と言われて、サングラスをお貸しすることがよくある。日本では白内障のオペ直後の患者さんぐらいしか『ちょっと今、光に敏感なんですよねー』といわれることはなかったと思う。最初、そういう場面に遭遇した時『やっぱり、北欧の人たちはこの日光の少ない過酷な状況を、少しでもポジティブにとらえられるようにそういう風に、いいように暗さを解釈して生きているのかなあ』と思って感心したものであるが、私が『今日も暗ぇな』と思うたびにキャンドルや間接照明をともして『Mysigt』という単語を聞くたびに次第にイライラし始めて、この週末は家でこの単語を使うことを禁止し（旦那さんはとんだとばっちりであるが、）、家のありとあらゆるところの電気を全開にすることにした。北欧ライフになれるのにはまだまだ時間がかかりそうである
