狂気か情熱か | 日々是一進一退

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20年以上接客業に携わってきました。
その前は公務員をちらりと。
接客メインで書こうとしておりましたが、すっかり四方山話になっております。


ヨーロッパの磁器ブランド、マイセンのドキュメンタリーを観たのですが。

当時は中国や日本でしか作られていなかった磁器に憧れたポーランドのアウグスト2世が情熱を注いでヨーロッパでも作れるようになり、国を潤す資金にもなった、くらいの知識しかありませんでした。

いや、これ情熱というレベルではないですよ。

もともとエネルギーに溢れ、「美しいもの」を追い求める人だったらしく、80人の愛人がいたそうです。(飽きると追放されていたらしい汗)
そんな王が出会ったのが「磁器」。

ヨーロッパにはない、滑らかで強いつやを持ち、繊細な造形も可能で美しく鮮やかな色つけ。

王は大量のコレクションを始めるとともに、自国で製作する事を、最終的には「磁器で出来た城」を作る事を夢見ます。

ちなみにコレクションの一つ、「竜騎兵の壺」は自国の兵士600人と引き換えに手に入れているのですが、後日その兵に攻め入られるという中々因果なコレクション。




まず初めに、「どうすれば白く輝く器が作れるのか?」を突き止めるために、当時頭角を現し始めていた若い錬金術師を雇います、というか問答無用で連れてきて城に幽閉、彼の知識は門外不出でなければならず、外部はおろか内部の人間との交流もなく、磁器を産み出す事は出来たものの寂しさを紛らわす為にお酒に溺れた結果、37歳で世をさります。


幽閉されていたマイセン城。
美しいですが、監視がしやすく逃げられないという事で選ばれたそう。

次の問題は色。

中国の青に柿右衛門の赤。
かの錬金術師が研究をしていたのですが、途中から王に売り込みをかけたシノワズリの絵柄を得意とする絵付け師が、真実は明らかではないものの、彼の研究を奪うようにして自分の成果とし、寵愛を受けることになります。

しかしそれもまた新しい才能に脅かされます。
磁器を使って「像」を作る、立体表現に取って変わられようとします。

そしてそれこそがまさに王の目指した「磁器の城」を作るための技術であると。
実際は現代の技術を持ってしても、磁器が建造物としての強度を持つことはあり得ないそうですが、夢を見るならそのくらい壮大な方が様々なイノベーションに繋がる気はします。

が、数々の犠牲のもとに作られた美でもあります。

後年、自身の行いを振り返って王が言います。

「磁器は魔物だ。いくら手に入れても満足する事がない。」と。

美しいものを見極める能力を持った事もある種の不幸かもしれません。


白に青、美しいです。