鯖江素子は都内に住むOL。同居している彼氏の優希は芸人をやっているが、鳴かず飛ばずの芸歴10年目に突入。なかなか面白いネタを苦しんでいる彼に少しでもアイデアを提供したいと、素子は日常の中でネタ探しを欠かさなかった。
ある日、優希は発熱を起こし寝込んでしまった。あいにく家には薬は置いておらず、素子は近くのドラッグストアで薬を買いに行くことになった。
「いいか、絶対に寄り道なんてするなよ?」
優希がいつものふりを素子に振る。
「こんな時まで私にネタ探しなんかさせて。なら自分で薬買いに行けばいいのに。」
そんなことをぼそぼそとつぶやきながら素子は優希の寝込む家を後にした。
ドラッグストアは家から自転車でたった3分ほどのところにある。行こうと思えばすぐたどり着くことはできるのだが、素子はなぜか優希の言葉がよぎり歩いて行くことにした。とはいえ歩いても10分もかからない距離。あまり期待できるようなことは起こらないなと素子が考えていると、道端に占い師を発見する。普段なら決してこういったものには興味を示さない素子だったが、これもきっと何かの縁。ネタができたらという気持ちで素子は占い師に近づいた。
「素子さんこんにちは」
占い師は言った。素子はとてもびっくりしたが、これは面白いことがありそうだと占い師に乗ることにした。
「こんにちは、占い師さん」
「大変急がれてましたがどちらへ?」
「ちょっとそこのドラッグストアに買い物に。」
「なら買い物をする前にこれを買っていきなされ。効果抜群、風邪なんて一気に吹っ飛ばせます。」
占い師がで出したのはドラッグのようなものだった。さすがにこれは手にしてはダメだと素子は感じながらも、これくらいパンチのあるネタなら優希も使うことができるかもしれない。素子は占い師に渡された粉を買い、家に帰って優希と使ってみることにした。二人はアメリカ映画で観たように鼻から一気に粉を吸い上げ、気絶した。
二人が意識を失い倒れたちょうどその時、二人が住むアパートの一つ下の階に住む青年は頭上でドスンという音を聞いた。なにやら怪しいぞと思った青年は階段を上がり部屋の様子を確かめることにした。幸い二人はドアの鍵はかけ忘れたらしく青年はドアを開け、意識を失っている二人を発見した。青年はすぐさま救急車を呼び、なんとか二人は一命を取り留めた。
それから1ヶ月後、素子と優希が買い物に向かっている途中に、あの時の占い師を発見した。占い師はこっちには気づかない様子で中年の女性を占っていた。素子は自分が殺されかけた恨みを晴らそうとそっと彼女に気づかれないように彼女のバックを盗み、近くの公園に捨ててしまった。それはマリファナが入っていたバッグだった。さあドラッグを失った占い師は大慌て。なんせ自分の吸う分も入っていたのですから。ドラッグを吸えず活力を失った占い師はホームレスとなり、近くの公園に暮らすようになりました。
一方優希は大喜び。すぐさまその話を先輩にするとその話を気に入った先輩が優希をいろんな人に紹介してくれ、優希は芸人として仕事をもらえるようになった。素子もそんな優希を見て喜びました。しかし、もう二度と、ネタのために人生ドブに捨てまいと心に誓ったのでした。
