「まだうねりが残っているから、ジギングは無理やな。湾内でサビキでもやるか。小魚の群れが入っていれば、餌無しで十分釣れる」

 サビキに茄子型重りをつけて準備する。

 魚探で湾内を探ると、いたるところに小魚の群れがある。

「適当に入れて。落ちなくなったらすぐに巻き上げないとからまるぞ」

 次から次へと小鯖が揚がる。次から次へとえらを抜き、はらわたを取って洗い、クーラーボックスへ放り込んでいく。二時間で百匹余りを釣り、子供たちは、飽きてきた。

「岸壁近くで泳がせ釣りをするか。シーバスが釣れるかもしれない」

 息子二人の竿に、ほぼ同時に来た。シーバスとチヌだった。

 娘たちが帰りたがったので、昼前で上がって昼飯の準備をした。

「おじちゃん。お昼はなあに」

「冷やし中華と揚げ春巻きやな」

「お手伝いしたい」

「じゃあ二人でもやしを洗って、髭をとってもらおうか」

 錦糸卵を造り、胡瓜の千切りとハムの千切り、トマトを薄切りにして、冷蔵庫へ。もやしは軽く湯がいて良く水切りし、冷蔵庫へ。

 市販の棒ラーメンを硬めにゆで、冷水で良く洗い、ぬめりを取る。コチュジャン、チーマージャン、甜麺醤を黒酢に加えウエイバーと水を足して火にかける。溶けたところで冷まし、冷蔵庫に入れる。

 全ての材料を麺の上に並べ、汁をかけて、仕上げに黒酢を一振りする。

 冷凍してある春巻きを揚げて準備完了。

「好みで辛子とマヨネーズをかけてもいい」

「うちは、春巻きには、酢醤油とラー油やなあ」

「俺は昔から酢と辛子だけで食べてるなあ」

「私は、ごま油と塩。七味をかけて」

「私は醤油と和辛子だけ」

 皆さん独自の食べ方があるようだが、冷やし中華は全員辛子とマヨネーズだった。

 夜は、久しぶりにトンカツを揚げた。豚バラと玉ねぎのスープに山盛りの千切りキャベツとトマトを用意した。

 ナイフとフォーク、スプーンをセットし、飯も平皿に盛り付けた。

 子供たちは自由だ。トンカツを一口大に切り飯の上に乗せてウスターソースをかけ、スプーンで食う。キャベツもトマトももりもり食う。

 大人たちも釣られて食う。俺は酒も飲まずに、飯を三杯食った。二十年ぶりのことだった。

 母親たちもおかわりしていた。

 三日目は朝から快晴。しかも凪。

相当沖へ出てフローティングミノーを引かせる。

メジが追ってくるのだがチェイスしない。

「クーラーボックスからトビウオを出せ。でかいネイルシンカーをケツから入れて、ジグの代わりに引いてみろ」

 すぐにきた。メーターオーバーのメジだ。

「おい。カジキがジャンプしとるぞ。もっとラインを出せ」

 メーター五十はあるカジキが掛かった。銛で急所を何度も刺し、ウインチで揚げた。念のため大ハンマーで頭をたたき、つのを切った。船上で解体し、心臓とレバー、卵を残して、後はサメの餌にした。

 帰って柵取りし、冷蔵庫で寝かせた。