DPC対象病院:定額制病院を倍増 

最大1,400カ所、医療費抑制狙い

厚労省方針

 厚生労働省は09年度に、医療費が定額の「DPC(入院費包括払い)対象病院」を大幅に増やす。



最大で今の2倍、約1,400病院とする方針で、全国の約9,000病院中、15%がDPC対象病院となり、91万床ある一般病床の50%が包括払いに変わる。ゆくゆくは出来高払い中心の現状を改め、定額制を広めた上で病院の選別を進め、病床削減につなげる意向だ。

 

DPCは病気や手術の種類ごとに、1日当たりの入院医療費を決めている制度。厚労省は過剰診療を防ぎ医療費を抑制するため、03年度に大学病院など82病院にDPCを先行導入させた。年々増え、08年度は718病院に達している。



 718病院とは別に、約700の病院は07年度からDPC導入に向け準備を進めている。



厚労省はこのうち看護師の配置などが基準以上の病院は09年度にDPCへ移ることを認める意向で、多くは移行可能となる見通し。名乗りを上げる病院が増えているのは、医療関係者の多くが厚労省の思惑を察知しているためだ。



 現在、DPC病院には導入後の収入が減らないよう報酬を加算する激変緩和措置がある。しかし、厚労省は10年度から段階的にこの措置を廃止し、妊産婦受け入れ数などで判断する地域医療への貢献度などを高めないと収入が激減する仕組みに改める。



DPCの評判を高め、ブランド化する意向だ。

 

各病院は、DPCでなければ患者を集めにくくなるとみており、参加せざるを得なくなっている。ただ、今後は「名ばかりDPC」では生き残れない。



厚労省は定額制の普及で医療費を抑え、その次に病院間の競争激化で結果的に病床数が減ることを狙うが、退院後の受け皿が不十分な現状では、行き場のない患者も出てきそうだ。

【吉田啓志】毎日新聞 20081227日 東京夕刊



厚労省の思惑(下線部分)



字数の関係か、この記事の内容を一般ピーポーが理解するには困難であると思われます。



私流に訳してみますと、まず、厚労省は次の思惑を持っています。



DPCでは、入院期間が長いと、診療報酬が下がります。



例えば、A病院にXという病気で入院したとします。



これまでは、入院1日につき5,000円+投薬+処置で医療費を支払いました。



これを、入院5日目までは、1日につき10,000円

6日目から15日目までを 1日につき 7,500円

16日目からを      1日につき 5,000円にするというものです。



単純計算では

5,000円×20日=100,000円


10,000円× 5日= 50,000円

 7,500円× 5日= 37,500円

5,000円×10日= 50,000円

   計        137,500円



となり、DPCにすると入院費が高くなると思われます。



しかし、点滴、内服、血液検査、レントゲン検査などが別に算定されるため、実際病院に入る収入は150,000円(1日7,500円)程度になり、収益が出(損益計算分岐点)ます。



従って、病院の収益を比較すると


          DPC        出来高

10日目まで  87,500円    75,000円

11日目まで  92,500円    82,500円

12日目まで  97,500円    90,000円

13日目まで 102,500円    97,500円

14日目まで 107,500円   105,000円

15日目まで 112,500円   112,500円



このようになり、16日目からは損をすることとなります。



病院としては、収益を上げるために何をするのでしょうか。

1 入院日数を短縮させる。

2 入院中の費用を下げる。



この結果予測されることは

1 何が何でも退院させる。(受け皿があろうとなかろうと)

2 入院中の検査をできる限り少なくさせる。使用する薬品を価格が安いジェネリックに変更する。



1の結果、在宅で療養を継続しなければならない。(これには、地域連携医療体制の構築を必要とします。:これについては、項を改めて書きます。)



2の結果、必要な検査を躊躇することもありうるし、効果や副作用が確認されていない医薬品を使用することもあります。



また、入院日数(平均在院日数)を短縮すると、病床の空きが増えます(病床利用率の低下)ので、入院患者を増加させる努力が必要です。



重篤な疾病は、必然的に入院日数が長くなります。一方でそれほど重症でない場合は、短期間で退院させることができます。



重篤な疾病には医療資源が多く消費されます。



例えば、脳血管疾患で人工呼吸器をつけてIVHポートで中心静脈栄養(常時点滴をしている)状態であれば、医薬品も、看護師による処置も多く必要です。



虫垂切除術(DPCであっても、手術は、出来高で算定される。)の場合は、長くて7日もあれば退院できます。



この結果、病床利用率が低く平均在院日数が長い病院(特に僻地の病院)は、経営が成り立たなくなり、廃院となります。



DPC適用病院であっても、病床利用率の上昇と平均在院日数の短縮(医療費の削減)に勤めなければなりません。



どちらに転んでも自然に医療費は削減されますし、生き残った病院の医師は、過重労働から解放されません。



これこそが、患者不在の厚労省の思惑なのです。



なにがなんでも病床数を削減し、医療費を削減する。