救急医療崩壊5秒前・・・京都

大丈夫か京都

救急搬送され死亡、遺族に情報公開へ 京都市消防局4月から

2月13日 京都新聞

京都市消防局は、救急搬送された人が死亡した場合、搬送状況や病院に到着するまでの時間などの記録を4月から、遺族に対して公開する。遺族が、故人の死亡時の状況に心を寄せることができるのに加え、社会問題になっている「たらい回し搬送」の有無を確認できることになる。

 市消防局によると、これまでは個人情報保護条例が開示対象を本人のみとしていたため、遺族が情報公開請求などで故人の搬送状況を知りたくても、詳しい内容は提供できなかったという。今回、故人の配偶者か第二親等までの血族(法定代理人も含む)に限り同条例の目的外使用とすることで、市個人情報保護審議会で了承された。

 遺族に公開されるのは、「救急活動記録書」に記載されている事故の概要や原因病名や搬送時の状況応急処置の有無搬送先の病院の紹介状況や病院に搬送された時間-など。

 市消防局は「故人の最後の様子を知ることができるため、遺族にとっては有益な情報を提供でき、しっかりとした説明責任も果たすことができるようになる」としている。

 


京都市も救急医療崩壊を推進することに決定したようです。

 >個人情報保護条例が開示対象を個人のみとしていた

 

 個人情報の保護に関する法律では、第2条(定義)に「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」とある。


一方京都市個人情報保護条例では第2条(定義)第1項第1号に「個人情報 個人に関する情報で,個人が識別され,又は識別され得るものをいう。ただし,法人その他の団体に関して記録された情報に含まれる当該法人その他の団体の役員に関する情報を除く。」とあるので、法律は生存者を対象としているものの、条例では死者も含まれることになる。

 

>遺族にとっては有益な情報

  京都市消防局は、誰にとっては有益でない情報だと考えているのか。


京都府保健医療計画では、3次救急に対応する病院として、次の3病院がある。

京都第一赤十字病院       東山区本町15丁目749

京都第二赤十字病院       上京区釜座通丸太町上ル春帯町355-5

国立病院機構京都医療センター  伏見区深草向畑町1丁目1

 言い方を変えれば、救命救急センターを有する病院は、京都府には、この3つしかない。

このほかに、洛和会音羽病院が京都ER救急救命センターを持っているし、大学病院、市立病院などに救急部門がある。


京都市当局は、今、全国で救急医療崩壊が叫ばれていることを知っているのか。


救急医療崩壊の原因は、いまさら言うまでもなく、劣悪な労働環境(当直明け通常勤務や月8回以上当直など)やコンビニ受診により仮眠もできない当直という名の通常勤務などで、医師が逃散したこと。


小泉改革により伸びが抑えられた総医療費(受診者は増大するが診療報酬は減少する)のおかげで、救急という不採算部門を維持できない病院が救急部門から撤退したことなどである。


>社会問題になっている「たらい回し搬送」の有無を確認できる


京都市消防局からのアナウンスであろうが、「たらい回し搬送」が社会問題になっている原因を解消せずにすべての情報を開示するのはいかがなものか。


情報開示には賛成であるが、これを開示することによって、遺族に押しかけられる病院では、誰が対応するのか。


受入不能であった病院は、その理由、当日の勤務体系、救急患者の受診状況などを時系列で明らかにし、釈明しなければ収まらないだろうし、これに対して多くの時間と労力が必要になる。


不幸にして、搬送された患者が死亡した病院にとっては、ますます大変なことになる。


子どもが搬送後に亡くなったとする。情報開示後に祖父(第二親等までの血族)が事情を説明しろと病院に押しかけた場合、そのときに偶然担当した(当直であった)医師が外来を中断してまでも一から説明しなければならないだろうし、場合によっては、説明会を開けということにもなりかねない。


損害賠償請求事件(医療訴訟)が、増加することも考えられる。

京都市保健福祉局はこのことをどのように考えているのか。総合企画局は調整したのか。

 NICUベッド数の不足や救急医療崩壊促進のエントリーでも述べたが、国や地方公共団体が抜本的対策を考えずに、それぞれが勝手な方策を立てて実行してしまうことで、この国の医療はますます疲弊し、崩壊してゆくだろう。