はじめに
日本医療機能評価機構のホームページから抜粋
産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児に対する補償の機能と脳性麻痺の原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ制度として創設されました。
分娩機関が本制度に未加入だったことにより、本来、補償されるべき脳性麻痺児が補償を受けることができないという事態は防ぐべきです。
従いまして、すべての分娩機関が「産科医療補償制度」に加入いただく必要があります。
目的1 分娩に関連して発症した脳性麻痺児およびその家族の経済的負担を速やかに補償します。
目的2 脳性麻痺発症の原因分析を行い、将来の脳性麻痺の予防に資する情報を提供します。
目的3 これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります。
運営組織=財団法人日本医療機能評価機構
財団法人日本医療機能評価機構は、制度の運営組織として、分娩機関の制度加入手続、保険加入手続、掛金集金、補償対象の認定、原因分析および長期の補償金支払手続(保険金請求手続)等の制度運営業務を行います。
分娩機関
制度に加入する分娩機関は、平成21年1月1日以降に自ら管理する全ての分娩について補償の提供を約束します。また、分娩機関は、運営組織に取扱分娩数を申告し、これに応じた掛金を支払います。補償対象となる脳性麻痺が生じた場合には、分娩機関に保険会社から補償金となる保険金が支払われます。
補償内容と掛金について
分娩により次の基準を満たす状態で出生した児
1 出生体重が2,000g以上かつ在胎週数33週以上
2 身体障害者1・2級相当の重症児
なお、出生体重・在胎週数の基準を下回る場合でも、在胎週数28週以上の児については、分娩に関連して発症した脳性麻痺に該当するか否かという観点から個別審査を行います。
【個別審査により補償の対象となる児】
(1) 低酸素状況が持続して臍帯動脈血中の代謝性アシドーシス(酸性血症)の所見が認められる場合(pH値が7.1未満)
(2) 胎児心拍数モニターにおいて特に異常のなかった症例で、通常、前兆となるような低酸素状況が、例えば前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮破裂、子癇、臍帯脱出等によって起こり引き続き、次のア~ウのいずれかの胎児心拍数パターンが認められ、かつ、心拍数基線細変動の消失が認められる場合
ア 突発性で持続する徐脈
イ 子宮収縮の50%以上に出現する遅発一過性徐脈
ウ 子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈
ただし、先天性要因等の除外基準に該当する者は除かれます。
【具体的な除外基準】
(1) 先天性要因
ア 両側性の広範な脳奇形(滑脳症、多少脳回、裂脳症、水無脳症など)
イ 染色体異常(13トリソミー、18トリソミーなど)
ウ 遺伝子異常
エ 先天性代謝異常
オ 先天異常
(2) 新生児期要因
分娩後の感染症など
2 補償金額
補 償 内 容 |
支払回数 |
保障金額 |
準備一時金 ※ 看護・介護を行う基盤整備のための資金 |
1回 |
600万円 |
補償分割金 ※ 看護・介護費用として毎年定期的に支給 |
20回 |
120万円/年 |
3 掛金(1分娩あたり)
1分娩あたり 30,500円 |
分娩機関所有のパソコンからインターネットを通じ、妊産婦登録等の事務が可能となる「Webシステム」を導入する場合、掛金は1分娩あたり30,000円となります。(22週以降のすべての分娩が対象となります。) |
原因分析・再発防止について
1 原因分析
十分な情報収集に基づき、補償対象となった事例について、原因分析委員会において※医学的な観点で事例を検証・分析し、その結果を児とその家族および分娩機関にフィードバックします。
※ 原因分析は、分娩機関の過失の有無を判断するものではありません。
ただし、重大な過失が明らかであると思料されるケースについては、医療訴訟に精通した弁護士等から構成する調整委員会に諮って、法律的な観点から検討し、その結論を得て、当該分娩機関との間で負担の調整を行います。
2 再発防止
原因分析された個々の事例情報を体系的に整理、蓄積し、広く社会に公開することで、将来の脳性麻痺の発症の防止等、産科医療の質の向上を図ります。
<具体的な施策>
○ 報告書の定期的発行
○ 関係団体や行政機関と連携・協力した研修会の開催
○ ガイドライン、マニュアルの作成
○ 国の実施する再教育制度との連携 など
以上引用終わり
この制度のさまざまな問題点を羅列します。
1 金額の根拠について
1分娩あたり30,000円の根拠がない。
1年間の分娩数が、100万件です。
これに30,000円を乗じた額300億円が収入になります。
では、30,000円の根拠は、ありません。
2 30,000円は、誰が負担するのか
現行の出産一時金350,000円を380,000円に値上げして、出産された方が、医療機関に支払います。
では、この一時金の原資は何かというと
2/3が自治体負担(地方交付税で補填される。)⇒税
1/3が保険料収入から支払われます。⇒保険料
一見して、個人負担はないように見えますが、税と保険料で負担していることになります。
3 300億円は、どうなるのか
N年度の収支は、次のようになります。
収入 30,000,000,000円
支出 5,788,800,000円
差引 24,211,200,000円
支出の内訳
補償金(6,000,000円+1,200,000円)
=7,200,000円
7,200,000円×800人
=5,760,000,000円
事務費(初年度の事務費を5%、2年度以降を0.75%とします。)
5,760,000,000円×0.005
=28,800,000円
N+1年度の収支は、次のようになります。
収入 54,211,200,000円
N+1年度分 30,000,000,000円
N年度繰越金 24,211,200,000円
支出 6,756,000,000円
差引 47,455,200,000円
支出の内訳
N+1年度分 5,788,800,000円
N年度分
補償金 1,200,000円×800人
= 960,000,000円
事務費 960,000,000円×0.0075
=7,200,000円
4 日本医療機能評価機構には、いくらの金額が残るのか
単純に考えると
収入が 300億円
支出が 241億6,560万円
補償金240億円+事務費1億6,560万円
差引 58億3,440万円が残るように思われます。
しかし、3で述べたように内部留保資金は毎年増加し、
初年度が 242億1,120万円
20年後に 3,004億5,600万円
になります。
これを年利0.1%で運用すると
初年度が 2,416万5,600円
20年間累計で 37億9,797万6,000円
になります。
事務費は、初年度が 2,880万円
20年間累計で 33億1,200万円
になります。
運用益で事務費がまかなえることとなるので、20年間での純利益は
58億3,440万円×20年=1,166億8,800万円になります。
これは、厚労省の天下り先の埋蔵金となるわけです。
引用 厚労省元局長の天下り先無給ポストを有給に
2004年7月27日「しんぶん赤旗」
厚生労働省の元局長が関連法人を渡り歩き、四月から医療関係の財団法人の役員に就任、それまで無給のポストを有給にして、多額の給与を受けとっている。
この元幹部は高原亮治氏(57)。去年八月二十八日、健康局長を最後に退職。十月から今年三月まで「社会保険診療報酬支払基金」の常任顧問(有給)をつとめ、四月に「日本医療機能評価機構」(坪井栄孝理事長=元日本医師会会長)の副理事長・専務理事に就任しました。
同機構の規定では「役員は無給とする。ただし、常勤の役員は有給とすることができる」としています。高原氏が専務理事になるまで有給の役員はいませんでした。同機構は四月二十日に臨時理事会を開き、高原氏の専務理事就任を承認し、有給としました。給与の月額は百三十七万五千円です。
事務次官より上のランクで
この額は、中央官庁幹部職員などの給与を定めた「指定職俸給表」の二〇〇二年十一月以前の最高ランク「十二号俸」とまったく同額です。
「十二号俸」は官僚の最高位である事務次官より上。対象は東大と京大の学長でしたが、今年四月から国立大学の法人化により該当者はいません。同表の金額は〇二年十二月以降、二度引き下げられています。高原氏がつとめた局長は「七号俸」=月額百万三千円だったとみられます。
高原氏は「三月の総会で理事に選ばれ、その後坪井さんに専務就任を要請された。臨時理事会で承認をうけ、デュープロセス(正当な手続き)をふんでいる」としています。
同機構は、専務理事を有給にした理由について、「事業の拡大にともない常任の専務理事の仕事がふえたから」などと説明しています。