氷艶-2017-破沙羅をテーマに着物をコーディネートしてみました。
義経と阿国をイメージした2枚は、公演のあった5月の季節に合わせてどちらも袷の着物です。




<義経の着物>



歌舞伎の演目で義経といえば「義経千本桜」をまず思い浮かべます。
中でも有名な場面は桜満開の「吉野山」
破沙羅の「吉野山中の場」はまさに桜舞い散る中の義経の登場でした。


こちらの着物は散り桜。地色は「源氏鼠」という色です。

帯に桜と共に織り出されているのは「源氏車」
御所車の車輪を意匠化したものです。



義経の帯は「片輪車」
源氏車をアレンジしたデザイン。
御所車の車輪の乾燥やひびを防ぐため、水辺に浸し置かれた様子を表した文様です。


車の廻るがごとく、人の世は巡り巡るもの。
義経の辞世「のちの世もまたのちの世も巡り合い」の意を込めて。

帯揚は桜色に絞り染めの桜。


帯締は着物の地色と紋様の色を採って桜×鼠色の二色使い。


「阿国舞」の冒頭では長唄「京鹿子娘道成寺」の曲の一節が流れます。


『花のほかには松ばかり』の歌詞にある花とは桜を指し、「京鹿子娘道成寺」の歌舞伎舞踊の舞台上は一面の桜の光景。


また、「岩長姫寝所の場」では静が桜吹雪を出現させて義経を守ります。


破沙羅の中で桜は義経を象徴する特別な花となりました。

着物は季節を先取りして着用するのが粋とされています。
花であれば咲き始める前に。
この着物は散りいく桜ですので、桜満開の時期に愛用しています。


<阿国の着物>



地色の藍紫は竜胆の花の色。
竜胆といえば義経の衣装にも配される「笹竜胆」は源氏の家紋です。
*「笹竜胆」とは竜胆の別名。葉が笹に似ていることからそう呼ばれる


描かれる文様は①葵②橘③流水。いずれも破沙羅の阿国にゆかりのあるものです。

①葵
葵は破沙羅の阿国の衣装の中で最も目をひくモチーフです。この着物と共通するハート型の葉を持つ種類は双葉葵。
なぜ葵であるのか?は以前のブログに書いています↓ 


②橘
阿国が登場する場面の江戸兵衛の台詞
「漂い来たるは橘のしずくの色香」
平安時代の和歌の世界では橘の花の香りは昔を思い出させるものとされていました。
橘の花と「昔」や「昔の人」を結びつけた歌は多くあります。
江戸兵衛の台詞から、その姿に歌舞伎の創始者の出雲の阿国を思い出す、との設定のように思えます。

橘も双葉葵も花をつけるのは初夏。
破沙羅の世界が現世に現れた5月から開花時期を迎えます。

③流水
破沙羅の義経の衣装は海がテーマです。
スポットライトを浴びて海面がきらめくような長衣。帯に波、襦袢は荒波、冠板と膝あてには青海波、と所々に海のモチーフが使われています。



阿国の衣装にも雲間からのぞく海の色が描かれています。
したがって流水文様は海に繋がるテーマです。



劇中では阿国が正体を見破られたときに竜胆文様の赤い襦袢があらわになることから、襦袢は同色の赤にしました。


襦袢の袖は義経の衣装の袖と同じ荒波文様です。



帯は歌舞伎舞踊の「鏡獅子」


「鏡獅子」は阿国舞で演奏された曲です。



お太鼓面は鏡獅子の後シテである獅子の精。



帯の前面には牡丹。


百獣の王である獅子に対して、百花の王の牡丹は歌舞伎の「獅子もの」ではセットです。

この帯はリバーシブルになっていて、牡丹の裏側には鏡獅子の前シテの小姓弥生も描かれています。




義経の衣装の差し色は赤であるので、帯締・帯揚は赤色にしました。
帯揚は流水に桜文様。


前述しましたように桜は破沙羅においては義経のシンボルとも言える花。阿国の衣装にも桜が描かれています。

半襟は阿国の衣装の半襟と同じ銀吹雪。



帯留には狐面をあしらうのも良いかもしれませんね。




着物がとても好きです。
高橋大輔さんのプログラムをテーマにした着物は今後また別の機会にシリーズとして掲載していきたいと思います。


 ※氷艶2017破沙羅3周年記念として3日間で公演数と同じ6つのブログを掲載します。
こちらは1つめとなります。

「白龍の笛」のお話は本日夜のブログに掲載します。



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