春となり、また、このお祭の記事を見かけた。

ああ、またか、と思う。

僕も町の職員としても関わったお祭で、

股、否、また、色んな事を想い出す。

またまた、と言う方も言るだろうが、

また、書いてみたいと思う。

 

仁王様に泣き元気百倍! 波田で股くぐり祭 | 地域の話題 | 株式会社市民タイムス (shimintimes.co.jp)

 

↑ 地元紙、市民タイムスの記事。

「仁王様の股くぐり祭」は、

2メートルを超える、仁王様の股を

幼子がくぐると、はしか等、

病気にならない、と言われている伝統行事。

ちなみに、保育園児くらいまでなら、

くぐることが可能であろう。

 

この仁王様自体、

長野県の県宝指定されているので、

過去、6年半、

町の文化財担当者であった

僕にとって、想い出も多い。

その中でも、もっとも印象深いのは

文化財とは関係の無い、

新人職員の頃のことである。

 

まだ若き新人職員の僕は、

祭を盛り上げるため、

着ぐるみを着ることになった。

さて、祭前日の金曜日、

地元の保育園児が先取りで、

仁王様の股をくぐるのが恒例で、

ここでも着ぐるみが登場とのなった。

この年の着ぐるみは、

長野オリンピックのマスコット・キャラ、

スノー・レッツ。

 

これである。

 

 

画像はお借りしました。

どーだい、このデザイン、フォルム。

ファンキーモンキーベイベー、である。

どう見ても、着ぐるみには向いていない。

 

ちなみに、TBSの朝の番組での画像で、

7、8年前に放映されたもの。

着ぐるみを着たことがある、

という僕のアメブロを見た

プロデューサーの方から連絡があり、

取材を受けた。ちょっとではあるが、

インタビュー映像も流れた。

 

さて、この画像の着ぐるみは、

改良されたバージョンである。

僕が入った初期バージョンのスノーレッツは、

1・5倍は大きく、

かなり重たくて、それを頭一点で支えた。

中は空洞で、バランスが悪く、

足元から覗かれると、

誰が入っているか、分かってしまう。

 

実際、祭りの期間中(3日間)、

子どもらが下から覗いては、

「男の人が入っているー」だの

「メガネ、かけてるー」等と、

騒がしかった。

足はタイツを履いているだけで、

丸見えなので、蹴ってくる子もいた。

ある先輩職員の方は、ブチ切れて、

着ぐるみのまま、蹴ってきた子に、

短い手で叩いたり、体当たりしたり、

もうホラーであった。

 

話を戻して。

人生初の着ぐるみに入って待っていると、

まもなくして地元の保育園児らが、

保育士の先生に連れられてやってきた。

よもやこんな仕事をするとは・・・

とほほ、な気持ちでいる僕の目の前で、

はしゃぐ保育園児。

 

「みんなー、スノーレッツさんがいるよー」

若い保育士さんのキレイな声が響く。

・・・あれ、聴いたことあるな。

ふと視線を上げると、

「あ、Iさん!」

Iさんは、高校時代の同級生。

この町の保育士として働いていたのだ。

そして、Iさんは、高校時代、

僕が恋焦がれた女性であった。

 

「こ、こんなところで、

こんな姿で再会するとは・・・」

Iさん、変わらず可愛らしい。

瞬時に、僕は葛藤する。

彼女に気付いてもらえるように、

何かリアクションをしようか、

このまま何事も無かったようにしようか。

 

答えは簡単だった。

今、僕はスノーレッツなのである。

ちょっとしたモンスターだ。

言葉を発することもできないし、

どうすることもできない。

ただただ、何年かぶりに再会した

好きだった人を、

スノーレッツ越しに見ているだけであった。

 

ところで、

股くぐり祭でのスノーレッツは、

この時だけで終わったような記憶している。

評判は良くなかった・・・