何でも今週、バレンタインという

行事があったらしい。

チョコレートがどうのこうの、

好きな人だの義理だの、

噂で聞いたが、皆さんは知っていましたか。

 

・・・ええ、ゼロです。

 

さて、前回、

諏訪湖に行った話を書いたが、

インスタ、Facebookにも同様に

アップしたのだが、

そこでふと思い出した。

諏訪湖にまつわる悲しくも、

恐ろしい伝説のことである。

 それは、僕の友人から聞いた話である。


友人にはお付き合いしていた

可愛らしい彼女がいた。

お互いに仕事をしているから、

なかなか会えないし、スマホも無い時代、

連絡を頻繁にとることすらできない。

 

当時は、

ポケベルが恋人同士をつなぐツール。

友人の誕生日、彼女はポケベルを

プレゼントしたそうだ。

「これで毎日、連絡がとれるね💛」

その時の彼女のうれしそうな顔を

友人は一生、忘れることはない。

そう言って、ポケベルを見せてくれた

友人のうれしそうな顔を、

僕も一生、忘れることはないだろう。

 

そんな幸せの絶頂から、ひと月がたった。

 週末、デートで諏訪湖へ。

いつもどおりの彼女。

そう見えたけれど、突然、

「別れたい」と。

あまりに突然で、何も言えない友人。

「ごめんね」と彼女。

別れを告げる女性ほど、

平然として強固なのを

友人は知った。

どうやら他に好きな人が

できたらしいが、

彼女ははっきり言わないし、

友人も聞きたくはない。


そうしてふたりは別れた。

友人は、毎晩、泣いた。

「ポケベル、買ってくれたのに」

枕元のポケベルが鳴ることはない。

もう二度と。

「よし!!」

いくつもの夜を越えて、

友人は決意した。

彼女との決別。

ポケベルを捨てることを。


週末、友人は車を走らせて、

彼女から別れを告げられた

諏訪湖に降り立った。

「さようなら。」

友人は、ポケベルを諏訪湖に投げた。

沈むポケベルが、

一瞬、光ったように見えた。

それは、ふたりが過ごした時、

一瞬のきらめきのごとく。

 

そして、そのポケベルは、

今でも湖の底で、

鳴っているというのだ。

それは悲しげに、

でも機械音で・・・。


これが諏訪湖に伝わる

「諏訪湖悲しみのポケベル伝説」

(名前、変わっているな)

僕も諏訪湖にたたずむと、

悲しげなポケベル音が、

聴こえたような聴こえないような

(聴こえない)。