作文の訓練。気が向いたときに、Webニュースのトップにある記事より言葉を拾い、それをテーマとしてショートを書いてみる。
選んだ言葉は「メモリーカード」。ミャンマーで銃撃を受け亡くなったカメラマン長井さんの遺品より。(本文は記事の内容とは全く関係ありません)
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必要な書類を探して職場の机の引き出しをあさっていると、メモリーカードが出てきた。今となっては使えるデジカメも少ない、「スマートメディア」というタイプ。実際、私がこれを使っていたのは既に手放した2つほど前の機種だった。確か、友人に譲ったときに手持ちのカードも全て一緒につけてあげた筈だった。
不審に思いながらも、そのカードを何気なくスーツのポケットにしまい、仕事に戻った。日中は、そのことはすっかり忘れてしまっていた。
家に帰り、スーツをハンガーにかけているとき、ふとそれを思い出し、ポケットから取り出してみた。薄っぺらい、3センチほどのカード。裏面には金色の端子が並び、表のラベルには「128MB」と書かれている。
自宅のパソコンにはこの手の様々な種類のメモリーカードを読み込める装置がついているので、興味本位でセットしてみた。デスクトップの右下に
「デバイスを認識しました」
というメッセージが表示され、一応壊れてはいないことが分かる。ウィルススキャンソフトが自動的にメモリーカード内を調査し、問題が見つからなかったことを報告してきた。
私はそこでデスクトップのアイコンをダブルクリックし、中身の一覧を呼び出した。
どうやらデジカメで撮影した画像ファイルがいくつか保存されているようだ。表示モードを「詳細」にしてみる。こうすれば、撮影日などまで画面に表示される。
おかしい。一番古い画像、「IMG0001.jpg」の撮影日が。
今日の・・・つい5分前を示している。
あるいは、この画像を撮影したデジカメの日付の設定が狂っているということも考えられるわけだが、それにしても、偶然にしても出来すぎている。
『この画像は、見てはいけない』
そんな気がした。この時点で、メモリーカードを取り出して捨ててしまうべきだったのだろう。しかし、マウスを握る右手は自然にカーソルをそのファイルに合わせ、ダブルクリックした。実際には、それは手の震えに近いものだった。
画像閲覧ソフトが起動し、そこに映ったのは、ネクタイをだらしなく緩めたワイシャツ姿の男を正面から撮影した画像であった。
それは、紛れもなく、私自身の姿であった。
反射的に「×」ボタンを押し、ウィンドウを閉じてしまった。画面には、先ほどのファイルの一覧のウィンドウが表示されている。
画像が増えていた。
一覧をスクロールさせていくと、最後のファイル「IMG0825.jpg」の日付は、20年後先になっている。
私はもちろんそのファイルにカーソルを合わせた。
「カチカチッ」
乾いた音が聞こえた。
(おわり)
選んだ言葉は「メモリーカード」。ミャンマーで銃撃を受け亡くなったカメラマン長井さんの遺品より。(本文は記事の内容とは全く関係ありません)
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必要な書類を探して職場の机の引き出しをあさっていると、メモリーカードが出てきた。今となっては使えるデジカメも少ない、「スマートメディア」というタイプ。実際、私がこれを使っていたのは既に手放した2つほど前の機種だった。確か、友人に譲ったときに手持ちのカードも全て一緒につけてあげた筈だった。
不審に思いながらも、そのカードを何気なくスーツのポケットにしまい、仕事に戻った。日中は、そのことはすっかり忘れてしまっていた。
家に帰り、スーツをハンガーにかけているとき、ふとそれを思い出し、ポケットから取り出してみた。薄っぺらい、3センチほどのカード。裏面には金色の端子が並び、表のラベルには「128MB」と書かれている。
自宅のパソコンにはこの手の様々な種類のメモリーカードを読み込める装置がついているので、興味本位でセットしてみた。デスクトップの右下に
「デバイスを認識しました」
というメッセージが表示され、一応壊れてはいないことが分かる。ウィルススキャンソフトが自動的にメモリーカード内を調査し、問題が見つからなかったことを報告してきた。
私はそこでデスクトップのアイコンをダブルクリックし、中身の一覧を呼び出した。
どうやらデジカメで撮影した画像ファイルがいくつか保存されているようだ。表示モードを「詳細」にしてみる。こうすれば、撮影日などまで画面に表示される。
おかしい。一番古い画像、「IMG0001.jpg」の撮影日が。
今日の・・・つい5分前を示している。
あるいは、この画像を撮影したデジカメの日付の設定が狂っているということも考えられるわけだが、それにしても、偶然にしても出来すぎている。
『この画像は、見てはいけない』
そんな気がした。この時点で、メモリーカードを取り出して捨ててしまうべきだったのだろう。しかし、マウスを握る右手は自然にカーソルをそのファイルに合わせ、ダブルクリックした。実際には、それは手の震えに近いものだった。
画像閲覧ソフトが起動し、そこに映ったのは、ネクタイをだらしなく緩めたワイシャツ姿の男を正面から撮影した画像であった。
それは、紛れもなく、私自身の姿であった。
反射的に「×」ボタンを押し、ウィンドウを閉じてしまった。画面には、先ほどのファイルの一覧のウィンドウが表示されている。
画像が増えていた。
一覧をスクロールさせていくと、最後のファイル「IMG0825.jpg」の日付は、20年後先になっている。
私はもちろんそのファイルにカーソルを合わせた。
「カチカチッ」
乾いた音が聞こえた。
(おわり)