注意:字ばかりです。想像力を駆使しながらお読み下さい。

部屋の中には30代後半と思われる男性と女性。
二人とも眼鏡をかけ、理知的で真面目そうな印象をうける。
男性は様々な装置に囲まれた、機能重視といったデスクに腰掛け、側に立っている女性からなにか報告を聞いているようだ。

??「・・・ということで『計画』の遅延は誤差範囲だと思われます」
??「報告ご苦労さまです、モカ」
モカ「それから、グレイ所長、『先輩』の消息の情報は何かありましたか?」

かつての「同僚」の顔を思い浮かべ、グレイは思わず苦笑を浮かべる。

グレイ「『あちらのサイド』に走ったあいつのことを、まだ先輩と呼ぶんだね」
モカ「私にとって、いつまでも、先輩は、先輩なんです!」

ちょうどその時、大きめのノックの音が部屋に響く。モカは驚いて抱えていたフォルダを落とし、書類を床にばら撒いてしまう。グレイはその様子を苦笑したまま眺めつつ、ドアに顔を向ける。

グレイ「どうぞ、入ってください」
??「訓練生番号E0205、メフィ、入ります」

ドアを開けて部屋に入ってきたのはまだやや幼さを残す若い娘。よく日焼けした顔の中に、意思の強そうな光を湛えた瞳。メフィと名乗ったその娘は、中の様子を悟るやすぐに屈み、モカが床にばら撒いた書類を拾うのを手伝い始める。

モカ「あ・・・ありがとう(すごく昔に、同じようなことをしてもらったような気がするわ・・・)」
グレイ「君がメフィですね。その歳で『アンティーク』の取り扱い技能を高いレベルで修得したと聞いています」
メフィ「はい、それで、『時空転移申請』の許可は頂けるのでしょうか?」
グレイ「君は優秀な訓練生で、私としてはこのままこの研究所のスタッフとして活躍してくれることを期待していたんですがね」
メフィ「・・・ありがとうございます。でも、私には・・・」
グレイ「転移予定先が20年前、ちょうどEVPが始まった頃ですか」
メフィ「はい、私は、あの時代に何が起こったのか、この目で確かめたいんです!」
グレイ「やはり、君はあの『永遠の留年生』の・・・」
メフィ「父のことを、ご存知だったんですか?」
グレイ「彼には、新入生の時からいろいろ手伝ってもらったりしましたよ。そして、彼はまだ未だにどこかで戦っている・・・たぶんね」
メフィ「私は、父がどんな人であったか、何のために戦ったのか、それが知りたいんです」
グレイ「この時代は、まだアンティークの機能は解析されておらず、正直言って自力で戻ってこられる見込みはないんですよ」

(今だって完全に解析・制御できているわけではありませんけどね)と、内心で続けるグレイ。目の前に立っている娘の意思は相当に固そうだ。
(転移装置の使用を禁じたところで、自前のアンティークを使って我流で始めてしまいそうですね・・・危険も顧みずに。ならばできる限りのバックアップをしてあげるのが私の務めかもしれませんね)

グレイ「良いでしょう。申請を受理します」
(つづく)