2021.3.26  一日一季語 茎立(くくたち)  【春―植物―三春】

 

葉牡丹の古代紫茎立ちぬ      瀧春一

 

とう立ちの「とう」は「花茎(花を咲かせる茎)」のことで、花を咲かすための花芽のついた花茎が伸びてきた状態のことを「とう立ち(薹立ち)」または「抽苔(ちゅうだい)」というそうです。

植物には、自分の体を大きくする「栄養成長」と、子孫(種)を残す「生殖成長」の、2つの生育段階があります。とう立ちは、生殖成長が始まったサインなのだそうです。

トウ(薹)とは、「花茎」のことで、トウが立つとは、食べ時=旬を過ぎた状態といわれます。また、人間に対しても使うことがあり、何かの適齢期や盛りを過ぎた状態を指すようです。

お正月に寄植えなどでみられる葉牡丹も春にはトウが立ち、見頃が過ぎてしまうようですね。

 

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【傍題季語】

くくだち くきだち

 

【季語の説明】

「くく」は「茎」の古形。

茎立(くくだち)は、春になって大根や蕪などが茎をのばすことで、この茎が「とうが立つ」と言うときの「とう」であるのだという。蕪や油菜などの野菜やそれらの薹のことも含めて茎立というようです。食料としての茎立(くくだち)以外でも、また芽や茎が伸びて、薹が立つこと、特に葉牡丹などは身近に見ることが出来るようです。

 

 

【例句】

茎立や男泣きせしことのあり        小宮山勇

茎立や畑に窪みのあるところ        竹内悦子

五重塔辞す茎立の風の中            辻のぶ子

茎立ちや頬骨張りし中学生          年森恭子

茎立てるものをも束ね売られあり     出口賀律子

 

【とうが立った野菜】

とう立ち菜は食べることもできます。

食べられるのは、コマツナ、ハクサイ、チンゲンサイ、ミズナ、カブなどのアブラナ科野菜のもの。蕾のうちが食べ頃で、基本は塩茹でして食べます。

旬が短く、鮮度が命なので、ほとんど流通することはなく、野菜本来の風味に独特の苦さと甘みのある味を楽しめるそうです。

 

 

【くきたち(茎立)菜】

古くから栽培されていたカブナの仲間で、春先に花茎が伸び出した菜を【くきたち菜】と呼んでいました。昭和初期頃までは全国各地で盛んに栽培されていたため、それぞれの地域で呼び名は異なり、【くきたち菜】のほかに、「吹立(ふきたち)菜」、「てんば菜」、「唐菜」などと呼ばれているそうです。その名前の由来もユニークで、「吹立菜」⇒春になると一斉に花軸(花をつける茎)が吹き上がるように出てくるから。「てんば菜」⇒塩漬けにしても重石の下からニョキニョキと茎を伸ばしてくる姿が「おてんば娘」みたいに元気だから。など様々。ですが、どの名前も【くきたち菜】の寒さにも負けない力強さを表しているようですね。

 【くきたち菜】のように冬を越す野菜は、寒さに負けないために、葉っぱの部分に糖分を多く蓄えるため、他の季節の野菜に比べて甘みが多いのが特徴です。最近話題の「雪下キャベツ」などもそのような特徴を活かし、あえて雪の下でキャベツを育て、甘みを増やすという農業技術なんです。

 

 

今日は何の日

楽聖忌

1827年のこの日、ドイツの作曲家ベートーベンがウィーンの自宅で亡くなった。多くの交響曲を作曲し、「楽聖」と呼ばれた。

3日前、甥のカールを唯一の相続人にするように遺言書を補足し、「諸君、拍手したまえ。喜劇は終ったのだ」という有名な言葉を呟いた。

29日の葬儀には2万人の市民が参列し、宮廷歌手が棺を担いでフンメルら弟子たちがそれに続いた。しかし、数々の作品を献呈され交際のあった貴族たちは誰も出席しなかった。

 

犀星忌

小説家・詩人の室生犀星の1962(昭和37)年の忌日。

『愛の詩集』『幼年時代』『あにいもうと』『杏つ子』等の作品を残した。

 

鐵幹忌

歌人・詩人で與謝野晶子の夫の與謝野鐵幹の1935(昭和10)年の忌日。

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

富山いづみ <admin@nnh.to>

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

(575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)