はじめに

私は保険の募集人つまり保険の販売を行う人達と対話をしたことが何度もありますが、彼ら彼女らの限りなく10割に近い人が、本当にそれがお客さまにとって良い提案かどうかが分かっていないと感じています。

 

これは、保険の募集人を悪いと言っている訳ではなく、保険が本当に難しい商品だからです。

 

また、私は保険会社の人間ではありませんが、趣味や仕事等が高じて保険の知見が多少なり身に付きました。

 

  保険の本質を掴むために必要なこと

保険の本質を理解するためには「期待値計算」が重要です。期待値計算は、保険の価値を数値で評価する時に有効な計算方法です。

基本的な計算式は次の通りです
「期待保険金=保険金*リスク発生確率」

 

この計算式は、保険以外でも意外と使えるので覚えておいて損はありません。

 

  保険の用語について

 

本題に入る前に保険の用語を軽く説明しておきます。一部は私が好きで述べています。

募集人:保険を売る人達です。一般的には、販売員や営業の方が言葉として妥当ですが、募集人という名前を変えて「家計相談のプロ」「保険のプロ」「家計コンサルタント」「家計のプロ」といった肩書を使って人々の生活に関わっています。

保険料:保険会社に払うお金です。支払い方法には月払い、一時払い、全期前納などがあります。資産運用をする保険会社からしたら、一気にお金をもらえた方が将来のリターンを大きくできるため、一気に払ってくれる支払い方法は保険料を少し値下げしてくれます。値下げと聞くと聞こえは良いですが、それは自分自身の資産運用の将来のリターンを引き換えにしているという認識も欠いてはなりません。

保険金:リスクが発生した時に保険会社から貰えるお金です。

主契約:保険の軸となる契約です。

特約:保険のオプション契約です。基本的には任意で付けられます。特約という言葉を知っておくと、保険に限らず不動産で賃貸契約を交わす時に意図しない契約に気付きやすくなります。なお、不動産で賃貸契約を交わす時は、そもそも無効になる特約が入っていることが往々にしてあります。

ペットネーム:保険の相性やブランド名を意味します。保険商品の本当の名前は、「低解約返戻金型終身保険」のように、小難しい言葉が並べられていますが、こういった言葉を「低解約返戻金型」「終身保険」のように、言葉を分割して考えると保険商品の本質を掴みやすくなります。どの保険会社もオシャレな商品名を付けていますが、特定の人はオシャレな商品名の下とかに小さい字で書かれた小難しい本当の名前に着目します。

解約返戻金:保険を解約した時に貰えるお金です。外貨建ての保険に加入する時、解約返戻金についてもよく知っておいた方が良いです。

 

  保険料の計算方法

 

では、保険料の計算…というより期待値の計算に戻ります。

 

期待値を計算するために必要な人間の情報ですが、年齢や性別、多様な事故や病気、死亡の確率といった情報があります。

健康状態によっても、病気発症確率や死亡の確率が変化します。

 

統計データ等を調べることが面倒なため、以下は適当な数字で説明をします。

 

たとえば、健常者が40歳の時に三大疾病になる確率が0.01%、三大疾病にかかった時の保険金が100万円だとします。

すると、"100万円*0.0001=100円"が、保険の契約者から見た期待できる保険金の額です。ということは、掛け捨ての保険で三大疾病のオプションを付ける時、101円以上の保険料を設定すると、数学的に保険会社の方が儲かる事になります。

 

ですが、実際はもっと複雑です。基本的に三大疾病に罹る確率は年齢と共に上昇します。なので、41歳、42歳、43歳…と計算をしていき、おおよそどのくらいで解約をしそうかといったことも見極めて保険料を設定しなければいけません。例えば、40歳から60歳までの間に三大疾病に罹る確率が算出できたら、"期待保険金>20年間の保険料"となるように計算をしたあとに、20年分に保険料を分割して考えて保険料を算出します。


これは、健常者の場合の考え方なので、喫煙、飲酒、肥満などの要因が重なった場合のパターンなども計算が必要です。健康状態で保険料が変わる商品がよくありますが、これは期待値計算をして保険会社の利益を出すために大切な考え方です。

 

ですが、保険料の算出はここでも終わりません。

 

そもそもの保険会社のビジネスコスト、保険会社が資産運用をした時の将来的な期待利益なども計算が必要です。

 

私はアクチュアリーの勉強をしたことがありませんが、アクチュアリーとして必要な考え方はこういったことだと思っています。

 

更に、保険商品を作る人達は期待値計算をよく理解しているため、「病気に罹りやすくなる60歳頃から、特約が外れる」といった契約を盛り込んだりします。これは、保障内容を縦軸、年齢を横軸に棒グラフを作った時に、60歳頃から保障内容がごっそりと無くなって、主契約くらいしか残らなくなるため、「L字型」と呼ばれます。

歳を重ねてから期待値計算を感覚的にでも理解をすると、この「L字型」についてモヤモヤしてくると思いますが、「60歳までの安心感の対価」とも言えます。

 

  本当に賢い保険の入り方

これは、保険会社からするとたまったものではない内容ですが、"保険金*リスク発生確率/払込保険料>期待利回り"という条件を満たせる保険を見付けて、期待したリターンが得られた時、それは本当に賢い保険の入り方と言えます。FXで言えば、人体or物質/保険金のショート取引です。

基本的に、期待利回りに1以上の数字が入っていなければ、お金が消えていくだけになります。

 

お金に関する歴史でちょっと有名?な保険は、CDS(Credit Default Swap、クレジット・デフォルト・スワップ)です。

 

クレジット・デフォルト・スワップと言われるとよく分からないと思いますが、「なにかの破綻保険」くらいに簡単な言葉に置き換えると、言葉の本質が掴みやすくなります。ここで言う"なにか"は、クレジットに相当すれば良いので、会社や自治体、その他個人の借金とかでも良いです。実在しない商品があったとしても、開発されていないだけです。

 

リーマンショックによって企業や住宅ローン等の破綻が期待出来る時に、この保険を使うことでむしろお金を稼いだ人を描いた映画として、「マネー・ショート華麗なる大逆転」というものがあるので、是非観てみてください。↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  さいごに

保険は気軽に加入が出来るかもしれませんが、本質を見据えると非常に高度な商品だと分かってもらえたら幸いです。