ラーメン店のように | まさこんの写真雑館

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仕事に遊びに縁の深い新宿の風景、ふらっと出かけた場所の写真、50年前に撮った写真の復元、写真について思うこと、などなど。

 

先日、山田洋次監督が「男はつらいよ」シリーズについて語っている動画を見ました。

その言葉通りではありませんが、こんなことを語っていらっしゃいました。

 

・いつも恋が実らない寅さんについて、結婚させて新たな展開を持たせたらどうかという意見があった。

・しかし、いつも同じ味を求められているラーメン店がそれに応えているようにしたいと思った。

・しかも、味を落としてはならない。

 

これまで29作まで観ましたが、この言葉通りだと感じています。

 

久しぶりに柴又に帰ってくる寅さん。

せっかく帰ってきたのに不愉快な思いをして大暴れ。

綺麗な女性に恋をするが、その恋が実ることはない。

また旅へ出る。

 

大体いつもこんな感じですね。

でも、決して「いつも同じ」とは感じない。

むしろいつも新しい。

 

大暴れしてしまう寅さんですが、そこには寅さんなりの理屈、正当性があります。

決して理不尽なものではなく、せっかくの寅さんの思いが踏み躙られたり、傷つけられたりしていて、納得のいくものです。

 

どんな人に対しても臆することなく、その懐へ入ってゆく寅さん。

悲しんだり、苦しんだりしている人への寅さんの温かい言葉。

どんな人もごく自然に受け入れる「とらや」の人たちの温かさ。

 

などなど。

 

また、山田監督によれば、ある時期から、「消えててゆきそうなもの」を積極的に映像に取り入れるようにしたとも語っていました。

地域ごとのお祭りや風物、風景はもちろん、中学生がみんなで窓の掃除をしていたり、掛け声をかけながら走る部活の生徒たち、さらには、道ゆく人や近所の人への自然な挨拶など、今日では見られない光景がたくさんあるのもこの映画の魅力です。

それらは決して「昭和」を懐かしむというだけのものではないと思います。

 

入院中の楽しみに取っておこうと思って、あまり観ないようにしていましたが、「何杯食べても美味しい」、いや、2杯、3杯食べるごとに新たな発見楽しみがありそうなこのシリーズ。

ひと通り観ておいて、入院中は2回目を楽しむのもいいかな、と思っています。