【皿屋敷 / お菊井(姫路城)】
青山鉄山という武家に仕えていたお菊。
美人であったために鉄山が惚れたが、夫がいるお菊は受け入れなかった。
それが気に入らない鉄山。
10枚一組の皿を1枚隠してお菊に預けた。
ある日、その皿を数えたが、もちろん9枚しかない。
鉄山はお菊を問い詰めるがお菊は知らないと言い続ける。
怒った鉄山はお菊を斬り、井戸に投げ込んだ。
その後、皿を「1ま~い、2ま~い…」と数えるお菊の幽霊がでるようになり、鉄山は気がふれて自ら命を絶ってしまう。
このお菊の幽霊が出る井戸があるというので町内の仲間で見に行こうということになった。
9枚まで聞くと死ぬとも聞いたので、6枚聞いたところで逃げることにした。
井戸のそばで待っていると、草木も眠る丑三つどき。
火の玉がぽっ、ぽっと一つ現れ、二つ現れ…
すると、井戸から…
出た!
お菊の幽霊。
「1ま~い、2ま~い…」と皿を数え始める。
怖いながらも見ると、「おい、怖がってる場合じゃねぇぜ。い~ぃ女だよ!」。
思わず見惚れてしまったが、6枚で慌てて逃げ帰った。
「もう一度見に行こう」ということで、その翌日も、そして、その翌日も見に行く。
そうこうするうちに話を聞きつけた人たちも加わってどんどん人数が増え、しまいには興行主が現れて小屋を建て、入場料を取るようになった。
場内、押すな押すなの大盛況。
お菊が現れると「よっ、音羽屋!」「お菊ちゃ~ん!」などと声がかるようになる。
お菊のほうも「ありがっと」と愛嬌を振りまくようになり、満員札止めになるほどの大人気。
そして、6枚までくると一斉に逃げ出すのだが、あまりの混雑に身動きが取れなくなった。
「8ま~い、9ま~い」
あ~、もうダメだ!
「10ま~い、11ま~い、12ま~い……18ま~い、おしま~い」
ん?
「お菊さん、なんだって18枚までなんだぃ?」
「明日は休みたいんだよぉ。だから二日分数えたのさ。」
/ 「皿屋敷」や「お菊の皿」などとして知られる怪談話はいくつかあるようですが、最も有名なものは江戸の「番町皿屋敷」と播州(兵庫県)の「播州皿屋敷」でしょう。
それぞれ少しずつ内容が異なっています。
「番町皿屋敷」にも、お菊が自分の思い通りにならないことに腹を立てた鉄山が皿を隠してお菊に言われのない罪を着せるもの、お菊が誤って皿を割ってしまったことを鉄山が厳しく責め立てるものなど、いくつかの種類があります。
また、「播州皿屋敷」はお家騒動が絡み、その謀略をお菊が聞いてしまい、口封じのためにお菊に皿をなくした罪を着せるというものが有名のようです。
ただ、いずれにせよ、「お菊ちゃ~ん!」は落語だけですけどね。(笑