三章 3話 私達の家
祖父の家から少し出て、奥に入ったちょっとした商店の並んだ通りに、私達の家がありました。
ガラス戸が四枚入った二間間口の家で、土間が八畳、奥に六畳が二つあって、突き当りはせまい台所と便所でした。
私は驚きました。そしてがっかりしました。
私達は、この家に住むかと思ったら、情けなくなりました。
「この家?」と姉に聞くと「この家よ、お母さんが美容院をはじめるから」と云いました。
兄と、母と兄の友達二人が奥で荷物を片付けていました。
みんな、こんな家に住むのが恥ずかしくないのかしら?と、私は思いました。
母と兄は、今まで見たこともないような明るい顔をして。片付けをしています。
姉も元気よく働きはじめました。
「さあ、正ちゃんも早く入って手伝いなさい」と母が云いました。
私はようやく家の中に入りました。