三章2話 引越しの日
二学期が始まる少し前、未だ夏休みの内に私達は、大井町へ引越しました。
その日、姉と私と弟は一番あとから三人で、品川から電車に乗って大井町の駅で降りました。
海岸とは反対で、駅から十二、三分程行って右へ曲がった所に、庭の広い平屋を、祖母は探していました。
四部屋ほどの家で、着いてみると伯父が野原欣子さんと荷物を片付けていました。
二人は許されて帰って来たのだと、姉が云っていました。
私が庭に立っていると、姉が「さあ、正ちゃん、私達に家に行きましょう」と云いました。
私は驚いて姉を見ました。
「ここは、私達の家じゃないの?」