僕が務めていた会社は、日曜日が定休日だった。
当時は残業も当たり前の状況だったが、日曜日に相談を入れる人は少なかったようだ。
仕事をしているサラリーマンが投資に手を出すという事。
仕事が休みの日にこそ商談が入るようなイメージもあったが、
家族には内緒でやっている人も多かったようで、商談等は仕事終わりが一般的だったようだ。
土曜日は、その月に成績を上げている社員は休み。
成績が上がっていない社員が出社し、朝礼は無し。
多くの企業が休みのため、飛び込み営業は非効率。
基本、自宅へ電話営業をかけていく。
いつものサツバツとした雰囲気はなく、営業人数が少ないせいか、少しアットホームな社内だった。
毎日ノルマを抱えて飛び込み営業をしている僕にとっては天国のような空間だったが、
売上を上げて休んでいる同期の事を考えると、うらやましくて仕方なかった。
月初に1件でもマンションが売れると、その月の土曜日が全部休みになり、さらに次の月の給料に歩合が付く。
社内での居心地もよくなる。
まさに成果主義だった。
自宅への電話営業は、なかなか過酷。
「なんでうちの電話番号を知っているの?」
というクレームに近い返答が非常に多い。
いち営業社員には名簿の出どころは知らされていないし、
「もし聞かれたら、名簿屋さんで買ったといえ!」
と言われているだけなので、それ以上答えようがない状況だった。
電話に出るのは対外奥さんで、ほぼ要件を効かれる。
ご主人の勤め先を営業で回っているという話をしても、仕事関係の取引先から会社ではなく自宅に電話があるのは不自然だ。
とにかく決められた時間から時間まで、電話をかける件数を増やして、少しの可能性にかけるしか選択肢はなかった。