梅雨が明けた暑い日。
コンクリートジャングルと言われる都会の暑さは、田舎と違ってジメジメ感が体を締め付ける。
汗が止まらないのは暑いだけではなく、憂鬱な気持ちもあったのかもしれない。
Y係長に言われた「愛宕〇〇ビル」へ向かう。
付け加え、室内に入ったら大声で自己紹介してみろ。そしたら印象がいいぞ。
とも言われた。
とにかく言われたことをやってみようと思い、ビルへ入りエレベーターで上階へ。
そして執務室のようなところへ入り、元気よくあいさつした。
僕「株式会社〇〇のMと申します!」
そういうと、フロアにいた20人くらいが一斉に僕の方をみて、警察官のような恰好をした警備員が僕のところへ寄ってきた。
警備員「きみ、どこからはいってきたの?ちょっとこっちへついてきて」
そういわれ、僕は階段で地下へ案内された。
警備員「警備員もいるしセキュリティもあるのに、どうやってはいってきたの?」
そんなことはしらず、
僕「社員さんの後ろで、普通に入ってきました」
と返答する。
警備員「いちおう、会社の関係者以外は入れないようになっているから、困るんだよね。名刺はある?」
僕「はい。」
自分の名刺を差し出す。
警備員「上司に電話してもらえるかな?」
ドキッとしたが、この場は従うしかない。
僕はガラケーを取り出し、会社に電話をした。
警備員「ちょっとかして」
警備員はそう言って僕の携帯をとり、
「Mさんの上司の方おられるかな。」
と。
そこからしばらく、警備員は管理をしっかりするように電話で話をしていた。
終わったと思ったら、電話を替わるように言われ、変わった。
電話の向こうはN次長だった。
N次長「はっはっは。おまえ、やらかしたなぁ。まあ、いいよいいよ。Yの指示なんだってな。」
明るく笑っていたのがとても印象深い。
N次長「警備員のいるところめがけていくと気が滅入るだろうから、とりあえず雑居ビルとか、入りやすいところからいってみろよ。頑張ってな。」ガチャ
そういわれ、電話が切れた。
僕は警備員にあやまり、ビルを後にした。