世間は梅雨に入っていたが、その日は珍しく日差しが強く、いい天気で暑い日だった。

 

 

Y係長と商談を終え、会社に戻る。

 

 

Y係長はお客様と別れた後、携帯電話(当時はまだガラケー)で、ライン長であるN次長に商談結果の報告をしていた。

 

 

そのうえで、帰るとすぐに、N次長の元へ行き、詳しく報告していた。

 

 

「私の感覚では行けると思います。」

 

力強い一言だった。

 

 

「そうか、じゃあ任せたね。」

 

普段科目で、にらみを利かせた近寄りがたいN次長が、にこやかにつぶやいた。

 

 

なんか、仕事の信頼関係があるんだなぁ。かっこいいな。

 

 

当時の僕は、そのやり取りを見てそう感じていた。

 

 

自分の抱える案件の中で、契約に近い順番にランクを分けられていた。

 

 

・1回目の商談を終え次回の商談APOが入っているお客様がAランク

 

・これから始めて会う商談APOが入っているお客様がBランク

 

・電話である程度話ができており、次回か次々回の電話で商談APOが入りそうなお客様がCランク

 

 


僕は席について、Y係長が話をしていた内容を見込み帳(A3の紙)に手書きでまとめる。

 

初めてのAランク客だった。

 

 

 

 

I「今日、夜、いくやろ?」

 

電話営業の合間、グラスを飲むジェスチャーをしながら、同期のIがいつものように「仕事終わりの飲み」を誘ってきた。

 

Iも僕の商談の事が気になっているようだ。