当時、商談APOがない状態であれば、朝から晩まで会社でひたすら電話営業をする日々だった。

 

10時から朝礼がスタートし、50分ごとに休憩。

 

夜は18時30分から定時の20時まで電話タイム。

 

一般的な会社では定時以降の時間となり比較的電話がつながりやすい時間帯だからか、1時間半ぶっ続けで電話をするという時間割があった。

 

休憩時間は、よほど切羽詰まっている社員以外は、たばこ休憩等ができる。

 

トイレも基本的に、この休憩時間以外はいけない雰囲気。

 

 

ただ、APOをとれたら、その準備で見込み表の作成や交渉のための資料作成などができる。

 

ライン長以下は、基本的に電話にかぶりついている状況だった。

 

 

 

 

午前中の2クールが終了すると、新人がフロアの端っこの大きな席にいる部長のところに行き、お昼ご飯を聞くという慣習があった。

 

「部長、お疲れ様です。

 

今日のお昼はいかがされますか?」

 

こんな感じで、お昼ご飯をどうするか聞きに行くという慣習だ。

 

 

部長は10年以上勤務しており、会社周辺のお店は一通り知っている。

 

「うーん、そうだな。

 

〇〇の△△にするか。」

 

と言って、ブランド物の財布からお金をだし、

 

「はい、これおまえの分も」

 

そういって、聞きに来た新人にもおごってくれていた。

 

当時、研修中で給料が安かった時分には、とてもありがたい環境だった。

 

が、自分で食べたい好きなものは選べないというのはデメリットだ。

 

 

 

配属されて3か月ほどが経過したある日。

 

同期のIが、部長の元にランチを聞きに行く日だった。

 

 

「部長、今日のランチはいかがされますか?」

 

 

Iの元気のよい声が聞こえてくる。

 

 

「そうだなぁ。

 

おまえら、カレーはどうだ?」

 

ん?おまえら?複数形?

 

僕らの方にも声をかけてこられている?

 

と感じ、すぐに立って確認する。

 

僕らの方を向いているようなので、

 

「はい、カレー、いいですね!」

 

僕もカラ元気で答える。

 

 

 

僕の課は当時新人の中で、体育会系の男が僕も含めて3人いた。

 

「そうかぁ、じゃあココ○チだな。

 

俺が決めてやるし、おごってやるから、買ってこい。」


そういって、部長が直接ココ○チに電話をし始めた。

 

 

あぁ部長、僕らの分もおごってくれるんだ、ありがたいなぁ。

 

そう思っていた。

 

 

 

 

Iが大きな体を揺さぶりながら、カレーをもって帰ってくる。

 

部長も含めて、全員カツカレーの大盛。

 

 

ふたに書いてあるシールを見ると、

 

僕ともう一人の同期Tは5辛

Iは10辛だ。

 

 

 

「Iは商談APOが入っていたから、期待を込めて10辛にしてやったぞ!

 

ありがたいと思え。」

 

 

部長はそう言って、自席に戻り、カレーを食べ始めた。

 

 

「はい、ありがとうございます!」

 

僕ら3人、大声でお礼をし、席に戻ってカレーを頂いた。

 

 

最初の2口くらいは大丈夫だったが、3口目くらいから、口の中はマヒし、汗がとならなくなった。

 

Iの方を見てみると、汗だくで、真っ赤な顔をしながら、それでもスプーンを口に運んでいた。

 

 

5辛でもやばいのに、こいつ、やるなぁ~。

 

人の心配をしている場合ではなかったが、心の底からそう思った。

 

 

「どうだぁ?うまいかぁ?」

 

普通のカツカレーを間食した部長が僕らの席までやってきた。

 

「はい、うまいです!ありがとうございます!」

 

汗を拭きながらIが反応した。

 

 

「そうかぁ、よかったなぁ!味わってくえよ!」

 

そういいながら、部長は食後の煙を味わいに、喫煙所へと消えていった。

 

 

 

今考えるとなかなかなパワハラ感満載な出来事だが、当時はおごってもらえたという事、気にかけてもらえているという証拠だという事から、ありがたさも感じていた。

 

 

その日~その次の日の排泄時は、地獄だった。

※お食事中の方はすいません。