フロアに約50人ほど営業マンがいる中で、全員の前で称賛されたS係長。
しかも、翌月の給料は230万円以上。
成果を上げる憧れに、より拍車がついた。
全体朝礼の後、課の朝礼。
僕が配属されたのは、2年目以上の先輩社員が5人、新入社員の同期が僕も含めて5人、合計10人の営業課。
みんなの前で称賛されていたあのS係長も、同じ課の所属だった。
ライン長のN次長は、交渉スキルが高いと定評のある9年目のベテラン営業マンだった。
こわばった顔で、かなり威圧感がある。
いや、この次長だけじゃなく、先輩社員全員がピリピリした空気だった。
フロアの窓際をみると、A4の紙をつないで作った大きな垂れ幕が。
物件名・部屋号数・お客様名・担当者の名前がデカデカと表示されている。
「契約をとったら、こんなに称賛されるんだ!
はやく仕事を覚えて、結果を出したい!
そして、お金を稼ぎたい!」
そんな気持ちでいっぱいだった。
課の一番目立つ壁には大きなホワイトボードがかけてあり、横軸にそれぞれ課員の名札がつけられていた。
縦軸は月~日の曜日。
ところどころに〇〇様、17:00~、△△社という感じで、商談相手のお客様、スタート時間、勤務先が書かれていた。
電話営業でお客様との商談APOが入れば、このホワイトボードに記入するルール。
成約までのプロセスとして重要な商談APOをとることが、営業部の中でのステイタスだった。