校舎で唯一の都立中高一貫入試女子合格者が得点開示を持ってきた。都立武蔵の合格者である。正直良くなかった。トータルで4割5分くらいといったところである。やはり適性Iはそこそこ取っているのだが、適性IIが40点くらい、IIIが30点くらい。ただ、彼女は決して他の校舎の武蔵の合格者に比べ悪かったわけではなく、酷い生徒ではIIIが16点で合格というのもあったらしい。

 

都立武蔵の特訓については、2015年、2016年に担当した思い出がある。1年目は都立武蔵の特訓クラス参加条件に得点基準があったためレベルの高い生徒が揃っていて、15人中8人が合格した。2年目はそのような得点基準はなかったが、16人中6人の合格。今まで特訓クラスを担当した中で、一番良かった合格率だった。そのころ、都立武蔵は7割に満たないと合格できないくらいだった。300点中200点くらいでは不合格だった。それが今は4割5分ですか。

 

生徒が悪いのではない。明らかに問題が悪い。昔の問題は何が聞かれているか明瞭だった。ところが今年の問題はやはり何を聞かれているかが具体的にあまり見えてこない。或いは書き方がわかりにくく、意地の悪さすら感じる。適性検査IIIであれば、理科の条件設定の問題だけは得点源かなと思った。その配点が18点。16点の生徒は恐らくそれだけ、30点くらいの生徒は他1問どれかができたのだと推測している。

 

問題を作成した場合に問題をきちんと理解できない生徒が多かった場合、理系科目の場合であれば、悪いのは理解できなかった生徒ではなく、理解できないような文章を作成した出題者側だと私は思う。化学の定期試験問題を幾度も作成してきたが、問いが理解しやすいものかどうか、「どのように読み取ってもこの解釈しかありえない」という意見が作成担当者全員から出るまで検討は続く。無論今は対面でなくチャットやメールで情報交換をしているが。

 

こんな書き方のわかりにくい問題で中学入試の結果が決まってしまう。人生を変えるとまでは言わないが、運命を変えてしまう試験。そんな試験でいいのだろうか。それとも、そこまで文章を読み取り忖度できる加藤勝信大センセイのような人材が欲しいのか。「適性IIIが16点なんていう生徒は、入学してから数学の授業についていけないのではないか」と室長もおっしゃっていた。私立の入試問題の理系科目では、何を聞かれているかわからないということはあまりない。正直指導していて、彼らを都立中高一貫に進学させていいのだろうかと思ってしまうのは私だけだろうか。