私は小学校3年生を教えてはいない。0.30をサンジュウと読んだ生徒に、「16分5秒は何秒か」と当てると、425秒と答えてきた。どうやって425秒と出てくるのか全くわけがわからなかった。しばらくたってからようやくわかった。16×60を筆算する際に、6×6=36の3の下に1×6を書かず、6の下に1×6を書いたのだ。小数が読めないこと、2桁×1桁が計算できないところ、まさしく小学校3年生なみの学力の高校2年生だ。

 

 ただ、有効数字についてはどの生徒も全然わかっていない。私は、0.30と0.300の違いについて生徒に聞いたが、成績優秀な生徒でも誰1人答えられなかった。そもそも実験には誤差が生じるということもあまりピンと来ていなかった。誤差は実験器具自身の誤差、及び測定者の測定誤差により生じる。実験器具の性能にも限度がある。0.30という値であれば0.295以上0.305未満、0.300という値であれば0.2995以上0.3005未満を示すのだ。桁数が増えたほうがより正確な値を示すことはわかっていたが、『未満』を使わず、「0.304以下」とする人ばかりだった。『~番目』のような序数は小数点以下は存在しないが、実際の長さ・重さなどは無限にケタがあるはずである。しかし、測定器具には限界があるので、それの〇桁目までしか読んでいないのだ。よって、0.304という特定の桁で区切ることができるわけがなく、0.30499999・・・・までは0.30に認定されるので、0.304以下ではなく0.305未満としなくてはならない。ちなみに私は、この値の違いについては、都立中高一貫の講座では初めのころに説明する。その入試では、「〇〇桁まで求めよ」という問題が多いからである。

 

 生徒にはこのように説明した。「例えば、体重測定でmgの単位まで正確に測ったりしませんよね?それは体重計にmgまで正確に測る機能がないからです。それを我々は〇〇kgとある桁で区切った測定値で読み取っているのです」。この説明は数学の先生は苦手で、理科の教員でないと実感がつかめない。私の中学校(私立)では、物理の一番初めの授業は誤差論だった。ノギスで真鍮や銅のおもりの寸法をはかり体積を出したり、重さを天秤ではかったりして、最終的に密度を求めるわけだが、それぞれについて誤差を考えてレポートにして提出させられたものである。誤差についてはほとんどの学校について触れないと言っていい。いや、触れるといっても「この場合は何桁目まで残しましょう」程度の説明だけで、誤差の仕組みまではなかなか教えない。ただ、「理系の研究者を増やしましょう」と言っているのに、誤差についてわからないというのは、測定値に対する評価ができないことを意味するわけであり、研究者失格ってことではないでしょうか。

 

追伸:今の生徒はノギスはデジタルノギスを使うのですかね?デジタルノギスじゃ全然面白くないのです。アナログなノギスで測定することに意義があるのです。