2001年の終わりから2002年の初めにかけて、セネガルを訪れた。

「世界我が心の旅」というNHK-BSの番組の収録だった。
 
その撮影の中で、首都ダカールの港から船に乗り、沖合い数十分の所にあるゴレ島に行く機会があった。
 
ゴレ島は15世紀から19世紀の初めまで続き、1000万人以上と言われるのアフリカの方々が拉致をされた奴隷貿易の拠点のひとつで、奴隷の一時収容所があった。
 
現在は、負の世界遺産に登録され、観光の名所にもなっている。
その収容所には海に面している扉があり、それは「最後の扉」(Last Door)または「帰らざる扉」(Door of No Return)と呼ばれている。
その扉に立って海を見ながら、奴隷船に乗せられた人達のことを思うと涙が溢れ出て、自分自身のブルーズへの想いがより深くなるきっかけとなった。
 
ここ数年、創価大学の文学部で、講義と講演をやらせていただいている。「表現文化論」という科目で、『ブルーズ、その誕生と発展』というテーマで90分の講義受け持ち、そのなかで実際に演奏をしている。
 
この講演に参加してくれているミュージシャンは、ピアノ:堺敦生、 ギター:小松原貴士と石田信明、そしてシンガー Yoshie.Nといった気心の知れたメンバーと、ゲストにセネガル出身の打楽器奏者"Omar Gaindefall(オマールゲンデファル) を一度迎えた。
 
彼が参加してくれた時には、ジャンベ(Djembe)という打楽器を叩きながら、伝統的なセネガルの結婚式で歌われる歌を歌ってくれるなど、BLUESをより広く西アフリカの原風景とも言える音楽を感じさせてくれた。
 
この講義での演奏中、聴講生の中には感激されて涙してくれる人を見かけ、僕も心が熱くなった。出来るだけ次の世代にブルーズを伝えたいという想いが、この講義の要点でもあったので本当に嬉しかった。
 
このような機会を与えてくださった、創価大学文学部教授の寒河江光徳氏と、作家村上政彦氏の編集による『表現文化論入門』(第三文明社)という本が出版され、僕も寄稿させて頂きました。
 
僕が寄稿させて頂いた章は『ブルーズ、その誕生と発展』の講義テーマと同じであり、「表現文化論」ということでBLUESの歴史と生い立ちは勿論ですが、BLUESが僕がシンガーとして音楽を表現していく上で、どの様に影響を受けてどれだけ重要で、どの様に自分なりに身に取り入れてきているかを感じてもらえると嬉しいです。

 

音楽も、どこから来てどこに向かうのかが、最も大切な要素だと思います。出来るだけたくさんの方々に読んでいただきたいと思い、ブログにしてみました。

 

 
『表現文化論入門』第三文明社出版
※全国の書店、AMAZON等で購入可能
※電子出版版もあります