Vol .2
そして陽が沈み、涼しい風が流れてきた。
ようやく夜のとばりが落ちる頃、僕たちの出番がやってきた。
そしてコンサートが最高潮に達した時に、ステージに上がった。
全ての人たちが、僕らを暖かく迎えてくれて、拍手喝采があった。
僕は「Please enjoy our performance」と言って、始めた。
ステージ用のキ−ボードは、やや粗末な家庭用のような
卓上電子ピアノが、1台置いてあるだけだった…。
しかし、"天才"堺敦生はみんなが目を見張るぐらいそれを弾きこなした。
音響機材も、日本に比べれば決して良いモノではなかったように思う。
しかし、高屋順は集中していた。
僕も、本当に自然に、ステージに集中出来た。
途中で現地の方...後から知ったけど市役所の方で、
このイベントをバックアップしてくれた責任者の方だったらしい...
が僕の英語のMCの通訳に入ってくれた。
セネガルの共通語はフランス語で、もともとの国の(民族の)言語はウォロフ語です。
だから、フランス語で僕たちのことを解りやすく、もっと伝えようとしてくれていた。
椅子席にいた紳士淑女、それを取り巻く若者と子供たち
そして、先程まで素晴らしいパフォーマンスをしていた地元の
ダンサーとパーカッショニスト達も
僕と堺敦生のプレイとPAオペレーターの高屋の仕事ぶりに
目を輝かせていたのがステージ上でも分った。
そんなステージの音とオーディエンスの熱気が一体になった会場は
最高に気持ちが良かった。
そして、佳境に入り僕のオリジナル曲「Take me with you」(私も連れていって)
-作詞Suzie Kim/作曲 上田正樹-を始めた時に
椅子席に座られていた1人のご婦人が
「もう我慢が出来ない!」というような感じで、立ち上がり踊り始めた。
あの瞬間は、今でもはっきり覚えている。
それをきっかけに、歓声があがりみんなが踊り始めた!
みんなが楽しんでいる!みんなが嬉しそうだった。
そこから、堺も僕も高屋もスィッチが入った。
R&Bをずっとずっと歌い続けてきた自分が、自分に少し誇らしかった。
ステージから降りると たくさんの人が
僕と堺と高屋に握手を求めてきた。
みんなの目がキラキラと輝いていた。
思えば、日本から14000キロ離れた場所でのコンサート。
音楽は、国や民族や人と人を遠ざける、すべてのものを超えると確信した夜だった。
リアルダンスバトル
ステージ
ダカール市のダウンタウンその2