たかが小娘一人に、なぜこんなにも心を乱されなければならぬのだ。私は神であるぞ。埼玉県井上町井上王国の 唯一無二の絶対的王位に君臨する、井上界の神であるぞ。なのになぜ、たかがラインの返事一つに一喜一憂し少し返事がないぐらいで狼狽えているのだ。この圧倒的支配階級を約束された産まれながらにして世を任された、この私が…まさか奪われたとでもいうのだろうか、私の心が。くだらぬ。実にくだらぬ。色気のある黒髪を綺麗に整え…懸命に働く後ろ姿が勇ましく、果敢に社会と戦っているあの桃尻。普段の正義感の塊の様な芯の強い口調とは裏腹に酒の席でのあの甘い語り口。牛をも殺す鋭い眼光の中に微かに浮かぶ悲しい光。ぐぬぬぬ。とても耐えられん。あの小娘の事を考えるだけで、胸が不愉快である。
くだらぬ。この私もヘタれたものだな。たかが小娘一人に情を抱くとは。くだらぬ。くだらぬぞ。