ライフシフト塾の服部です。

個人のFBで少し紹介しましたがこの「ドリームハラスメント」、以前から気になっていましてようやく読んでみました。

 

 



読んでみた感想ですが、これはですねー、子育てしている人はもちろん、若者のキャリア教育に関わる全ての人に読んでもらいたい本ですね。


特に無批判に「夢を持て」と善意で言っちゃっている人は、その言葉がむしろ相手を苦しめていないか、そしてその言葉がこれからの時代にいかにマッチしていないか、この本を読んで内省することをオススメしたいです。


ということで簡単な内容のご紹介と私の感想をシェアしたいと思います。


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▼ドリームハラスメントとは
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ドリームハラスメントというのは今の若者に対する「夢を持て教育」のことですね。
大人は「善意」でそれをやっているんですけど、その受け手である若者はむしろそれによって苦しんでいる。「夢を持て」という大人の言葉が、若者に対するハラスメントになっているということです。


この「夢を持て教育」は2000年くらいから始まったそうですが、中学くらいから「夢を持て」と言われ始め、高校になると「夢を持ってないやつはダメだ」みたいな空気になり、夢を持てない若者は「夢を持てない自分はダメなやつだ」と自己否定に陥ってしまうという非常に悩ましい世界が繰り広げられているとのことです。


もう少し詳しく言いますと大人が若者にけしかけている「夢」には隠れた前提がありまして、「ただし俺が認める夢に限る」なんですね。その「俺」というのは親だったり先生だったりするんですけど。なので、仮に本当にやりたい夢を描いたとしてもそれが大人側の守備範囲に収まっていなければ「却下」されてしまうのも若者を苦しめている要因の1つです。


そしてもう1つの前提がその夢というのは「職業である」ということですね。「世界1周旅行がしたい」といった夢は大人側は求めていなくて、求めているのは「どういった仕事に就くか」ということです。「私は将来、こういう仕事をしたい」という趣旨で大人側は若者に「夢」を語らせようとするわけですね。そしてイチロー選手や、最近だと「夢実現ノート」でも有名な大谷翔平選手の事例を持ち出して若者に迫るわけです。


そういう大人からの「圧」を受けた若者の反応はいくつかのタイプに分かれます。まじめな若者はそれを真に受けて「夢が持てない自分はダメだ」と自己否定に陥ったり、一方で大人がけしかける「茶番」を見抜いている賢い若者は「こういうことを言っておけば大人は喜ぶでしょ?」と考えて、「大人が求める夢」の範囲内にある夢をテキトーに語ってあしらったりします。そんな「壮大なコント」とも言えるような世界がこのドリームハラスメント(以下、ドリハラと言います)の界隈では繰り広げられているとのことです。


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▼ドリハラが生まれた背景
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このドリハラが生まれた背景というのは、2000年前後あたりだそうです。ちょうど私が新卒で入社した頃なんですけど、その頃の時代背景としては終身雇用・年功序列が揺らぎ始めた頃ですね。97年に山一証券、拓銀、98年に長銀が破綻し、「1つの会社で我慢して働いていけば将来それなりに報われる」という神話が崩壊したタイミングとも言えます。


そんな時代になって何が起こったかというと、入社してすぐに辞める若者が増えてきたんですね。城繁幸さんの「若者はなぜ3年で会社を辞めるのか」が出たのが2006年ですのでちょうどタイミングも一致します。


そして大人たち(年輩者)としては「これはいかん」となったわけです。そして若者が3年で会社を辞めないためにはどうするべきかと考えたワケなんですね。そこで本当は大人たちが自分たちにベクトルを向けて「若者が継続して働きたいという気持ちになるために、会社や社会の在り方を変革していこう」というふうになればよかったんですが、そのベクトルを若者に向けてしまったんですね。

悪いのは我々ではなく、若者だと。
若者が仕事に対する「夢」を持っていないからすぐに会社を辞めてしまうんだと。


このボタンのかけ違いが悲劇のはじまりで、この取り組みは国家レベルで策定され、教育制度に落とし込まれてしまい、学校でドリハラが横行するようになりました。


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▼タチが悪いドリハラ
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このドリハラがパワハラやセクハラと比較してタチが悪いのが、ドリハラを行っている大人たちが「自分は良いコトをしているのだ」と心から信じ切っていることです。


セクハラは論外として、パワハラのケースも心から「良かれと思って」という善意でやっちゃっている人も一部にはいるかと思いますが、その「良かれと思って」度合いがドリハラの場合は比じゃありません。


なんせテーマが「夢」ですからね。「夢を持つことは良いことですか?」と聞かれたらほぼ100%の人が「良いこと」と答えると思います。それくらい夢を持つことは感覚的に絶対善なんですよね。


だからドリハラを行っている大人は「自分は絶対的に正しいことを行っている」という感覚を持っていますのでブレーキを踏むことがありません。まさか自分が行っていることがハラスメントになっているなんて、それこそ夢にも思っていません。


そしてそれを受けている若者側も「夢を持つことは絶対善」と思っているので、それが持てない自分を強く否定してしまいます。


このように同じハラスメントでもこのドリハラは強度な善意に基づくものであるが故に、結果としてブレーキが踏まれることのない、すごくタチの悪いハラスメントとして横行してしまっているとのことです。


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▼「夢を持て」の代わりになるもの
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ここまでざっくりと若者を苦しめているドリハラの背景と実態をみてきたわけですけれども、次に考えたいのは「じゃあ今の若者に対して『夢を持て』の代わりに自分だったらどんなメッセージを伝えたいか」ですよね。


まず前提から整理しようと思いますが、「夢=具体的な職業・仕事」という前提は壊すべきですね。それはシンプルな話で有名なところではオックスフォード大学の論文にもあるとおり、テクノロジーの進化によって今ある多くの仕事が将来なくなってしまう可能性があるからです。


今ドリハラの現場で大人が想定している「職業」というのは「今知っている職業」です。その職業が将来なくなってしまう可能性もありますし、また将来新たに生まれる職業もまだ見えていません。そんな状況で「ただし俺が認める夢=俺が今知っていてかつ認める職業に限る」と言っても全く無意味です。


なので「夢を持て」という文脈で具体的な「職業」を求めるのは適切ではありません。


そういう前提を置いたうえで今度は自分事として考えてみたのですが、自分ならどういうメッセージを伝えたいか。


そう考えると、私が伝えたいと思うのは私がこれまで常々お伝えしているメッセージになってきます。


それは「自分の大切にする価値観に即した活動を通じて、世の中に貢献していこう」ということですね。


「自分の大切にする価値観」は多くの人が生まれながらにしてビルトインされた(としか思えない)ものですので、将来もずっと続いていく不変の「心のエネルギー源」です。


そんな「心にエネルギーをもたらす価値観」に即した「具体的な活動」や「具体的な仕事」をその時代環境に適応しながら都度都度選んでいく。その結果、死ぬまで活き活きと躍動しながら世に貢献していく人生になる。そんな「生き方」や「在り方」を「夢」の文脈で伝えたいです。


それは言い換えると「具体的なこの仕事」という「Doingにもとづく具体性のある夢」ではなく、「自分の価値観に沿って活き活きを活動し続ける」という「Beingにもとづく抽象度の高い夢」とも言えます。それなら今後どんな社会変化が起きようとも、考えをぶらさずに生きていくことができますので。


ということで、今後もし若者にキャリア教育をする場を与えられたならばそういう文脈で「夢」を伝えていきたいなと思いますし、ドリハラを受けて悩んでいる若者には今すぐにでも伝えたいなと思っています。


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▼我々が若者にできることは?
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そして最後に根本問題に立ち返り郎と思うのですが、ドリハラが生まれた背景はさきほど書いたとおり「若者はなぜ3年で辞めてしまうのか」という状況を解決するためです。


その解決策として「夢を持て教育」を選択してしまったそもそもの間違いは「若者はなぜ3年で辞めてしまうのか」を「大人のせい」ではなく「若者のせい」にしてしまったことですね。若者が夢を持っていないからダメなんだと。


その結果どうなったかというとこれまでお話したとおりです。「夢を持て教育」をやってみたところドリハラが横行してしまい、問題解決どころか新たな問題を生み出し、誰も幸せになっていないという残念な結果になってしまいました。


そんな状況を踏まえ、これから大人側である我々が行うべきことは何でしょうか。


私は変革のベクトルを我々大人側に向けることだと思っています。


つまり必要なことは「若者が3年で辞めたくなくなるような社会を実現していく」という我々大人側の変革だと思っています。


もっと本質的なことを言うと、別に3年で辞めようが30年働こうが働き方は多様でいいので、働くことについて「未来に希望が持てるような姿」を我々大人側が若者に対して「背中で語っていく」ということです。


これがこの本の著者が語っていることであり、私も全く持って同感でございます。


そして私の個人的な考えとしてもう少し具体的にいうと、先ほど述べた「価値観に沿って活き活きを躍動する生き様」を見せていくことが大事だと思っています。


「価値観」というのは1人1人異なりますので、大人1人1人がそのような生き様を見せることができれば自ずと「こんな生き方もあるのか」と、「いろんな生き方の選択肢」を若者に見せることができます。


そんな多様な「活き活きとした生き様」を大人が背中で見せることができれば、若者はその中から自分にフィットしそうな生き方を見つけて、「自分もあのような生き方をしてみたい」という「夢」を自然と育んでくれるんじゃないかと思います。


ということを考えるとですね、このドリハラの裏に隠された本質的なテーマとして、我々「大人側の生き方」が問われているんじゃないかと私は思うんですよね。


ライフシフト塾ではまさにそういう「背中で生き様を見せる大人」を増やす活動を行っているわけですが、塾に参加されている人も参加されていない人もやるべきことは同じだと思っていますので、「背中で語れる大人」になるべく、ともに頑張ってまいりましょう!



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今日も読んでいただきありがとうございます。​



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