最後の砦はトイレの掃除です。

風呂場と違って、全体を水で洗い流すといった真似はできませんから、作業という点では風呂場より面倒なのと、また汚れの主な原因は「糞尿」なので、汚れを落とすのは風呂場よりはるかに大変でした。

作業する前から人力では無理っぽいと踏んでいたので、新たに追加して

 

・六角軸ワイヤーブラシ(真鍮製)を2種類

・トイレ用クレンザー

 

を購入しておきました。

 

作業はまず…あーもう、思い出すだけで気持ち悪くなりますが、最初に中に溜まったガッチガチの塊を取っていきました。

これはもう、手はもちろんプラスティックのヘラでもまったく太刀打ちできない状態だったので、便器に傷をつけないようにマイナスドライバーを力任せに突き刺していき、こねるように穴を広げ、また別のところを突き刺して広げてを繰り返しながら、ある程度の隙間ができたら、テコの原理を使ってドライバーを慎重に持ち上げて塊を引き剥がしていきました。剥がしてみると、その正体は糞尿が染み込んだトイレットペーパーが何層にも重なって固まったもので、女性では厳しいくらいけっこうな力が必要でした。

 

水も水道が止められているし完全に乾いて無くなっている…と思っていましたが、一番底の塊を引き剥がし、手を突っ込んで取り除いてみるとべっとりと液状糞が。その途端に凄まじい悪臭がマスク越しに漂ってきました。おぇぇぇぇえええええ。

ガチガチに固く乾燥した塊の下には、みずみずしい奴らが元気よく控えていたのです。

臭いが凄まじいのでキッチンペーパーで拭き取りながら、ひと通り塊を取り除けた状態で試しに水を流してみたところ、問題なく流れたので一安心でした。

 

次にトイレ用クレンザーとスポンジ(一部ではヘラ)を使ってこすり洗いしました。便器の淵や外側はヘラを使って削るようにしていくと、風呂場のように思った以上に簡単に綺麗になってくれましたが、便器の内側だけは全体が黒茶色の濃い絵の具を塗りたくったような状態で、クレンザーとスポンジでどんなに力を入れてこすってもほとんど綺麗になってくれません。ドライバーでガリガリこすれば割れるように落ちていきますが、それでは便器にも傷をつけてしまいます。また淵などのサンドペーパーのようにガッサガサ状態になった尿石などは、スポンジでこするとスポンジの方が削れてしまう状態で、とても手作業で落とすのは無理だと感じました。

 

そこで新しく買った真鍮製ワイヤーブラシの出番です。トイレの便器は陶器なので非常に硬く、ステンレスでもいいかなと思いましたが、念のため柔らかい金属の方がいいだろうと真鍮にしました。実際まったく問題なかったです。もしかしたらステンレスワイヤーでも大丈夫なのかも。

このワイヤーブラシを電動ドリル(昔買った4,500円の振動ドリル)につけて、全体にクレンザーを垂らしてから一気に削り落としていきました。場所によって形状の違う2種類のブラシを使い分けて削りました。

平坦な部分はわりと早く綺麗になりましたが、奥の部分は電動工具をもってしてもなかなか綺麗にならず、かなりの時間が掛かりました。振動ドリルをフルパワーで使い続けると騒音もかなりのものだったので、耳栓もした方がよかったです。

 

下の水たまりになっている部分は、そのままブラシを入れて回転させたら汚水が飛び散って酷い事になるのでは?と思っていましたが、やってみると回転と共に凄まじい渦を巻くのですが、これが大して飛び散りませんでした。大して、というのは完全防備で問題がないレベルの話なので、顔面シールドやマスクをつけてなかったら、目や鼻、口に飛び散った汚水が入りまくりますので注意してください。

また水たまりに水がある状態だとクレンザーが薄められて汚れの落ちが悪いので、手で水を奥に追い出すようにして水を減らしてから作業しました。電気を使いますから、一応ドリルに水が掛からないように、本体部分には軽くゴミ袋でカバーをして作業しました。感電、巻き込みにも注意が必要です。

 

結局、工具を使ってひたすら1時間くらい掛って、ようやく汚いものをすべて削り落としました。毎分2600回転の振動ドリルを使って1時間なので、とても人力では不可能だったと思います。

また金属ブラシを使ってこすりすぎると、いわゆるメタルマーク(銀色の傷のようなもの)が便器についてしまい、手でこすった程度では落ちないので、傷がついた!大変だ!と思ってしまいますが、これはクレンザーとスポンジでこすれば簡単に綺麗になりました。

 

あとは便器周りをクレンザーとスポンジで、床と壁は洗剤とスポンジ、もしくは水拭き。拭き取りはすべてキッチンペーパーを使って綺麗にし、すべて終わるのに4時間くらい掛かりました。

今回のトイレは、私もこんな状態のものを掃除した経験がなかったので、さすがに風呂場より綺麗にすることはできないだろうなぁ、場合によったら、ほとんど綺麗にならないか、無理をして傷だらけにしてしまうかもしれないとすら思っていましたので、いざとなったら便器の交換も覚悟していました。

でも実際にやってみると、薄いシミが残ってしまった風呂場よりもはるかに綺麗になりました。何も言わなければ、このトイレがまさかあのような状態だったとは、誰にも分からないと思います。

素人でもやればできるものです。

 

そしてふと思ったのは、マンションやアパート、一軒家でも同じですけど、仮に過去に何かあっても、この程度なら簡単に

“綺麗な物件のように見せられる”

って事です。

そりゃ掃除をしているから当たり前ですし、ましてや業者がやったりしたら、それこそ事実、綺麗になっているわけですから、ちょっとやそっと内見で確認したくらいじゃ、絶対にその部屋がどういう部屋だったか、何があったのかなんて分かるわけもないですね。

 

例えば孤独死の事故物件なんかで、発見まで数か月掛かって完全に腐敗し、体液が床下に染み出てしまったような最悪の状態では、本来ならフローリングと床板を外して床下の清掃・消臭をして、新しい床板とフローリングに交換するという、場所によっては大掛かりな作業が必要になりますが、極端な話、大家がケチれば床下の掃除はもちろん、フローリングや床材なども交換せずに、上っ面だけ掃除してフローリングの上からクッションフロアを貼ってしまえば、見た目は新品同様でまったく分かりません。

そりゃ大島のてるおが人気出るはずです。

私は兄弟には悪いけども、どんなに綺麗になっても以前の状態を知っている以上、絶対にこの部屋には住みたくないです。

 

さて、悪魔の風呂・トイレが終わったので、壁紙の張替え、フローリングのクッションフロア貼り、畳の交換は知り合いの業者に依頼し、それが始まるまでの1週間ほどで、残りの玄関、窓、ベランダ、キッチンその他の掃除を終わらせることにしました。