今すべてが終わって振り返ってみると、よくあれだけの作業を自分でやったなと思います。
もちろん1人では運び出せない粗大ゴミの回収や、壁紙、フロア材、畳に関しては業者に依頼したので、何もかも自力で行ったというわけではありませんが、それでも600袋を超える可燃ゴミと70袋以上の空き缶の処分、瓶や不燃ゴミの分別、そして掃除のすべてを約2か月かけて自分1人で終わらせました。仕事をしながら離れた場所まで通い作業を続けるのは、本当に大変でした。
やり通せたのは多分、これが自分の部屋ではなく、兄弟の残した部屋だったからだと思います。
初めて入り口を開けたときの光景…ゴキブリの糞と卵と人糞だらけのゴミの山を前にして、こんなもん一体どうすりゃいいんだよ!と頭を抱えたのを昨日のことのように覚えています。それがあそこまで綺麗になって、無事にマンションの賃貸契約も解約。兄弟が長年暮らした部屋は私の手を離れて、ようやく大家の元に戻りました。
ブログの最初の方にも書きましたが、私の兄弟は癌と診断されてから、あっという間に亡くなってしまいました。
本人も私たち家族も、確かに残りの時間が短いのは間違いないだろうけど、1年くらいは、いや、運が良ければ数年は生き延びられる、と虚しい希望を抱いていました。実際、主治医の見立ても最初はそうだったからです。
抗癌剤治療のために入院するときも、仮に効きが悪かったとしても一通り投与が終了すれば、とりあえずは退院して一時的でも仕事に復帰して、今後の方針を考える時間もある。私も主治医の説明を聞いてそう思っていましたし、誰よりも本人がそう考えていました。
私は、本人に何としてでも早い段階で死について考えさせたいと思っていました。それは残りの時間をどう過ごすかを考えるには、死というものと真正面から向き合う必要があると思っていたのです。兄弟自身が完治の可能性が低いことを知ってからは、無理やり自分の死後について、どうするのか考えておいた方がいい、などと言い聞かせたりもしました。
これは今思えば、とても残酷なことだったと思います。兄弟も、自分は何とか生き延びようと頑張るつもりなのに、まるで死を願っているかのようで気分が悪くなったに違いありません。いくら私が死について話をしても、まともに聞いていない、完全に聞き流していることは明らかでした。
そしていざ入院してみると、抗癌剤など始める余裕すらもなく、結局一度も退院せずに逝ってしまいました。兄弟はろくに準備もせずに旅立ったのです。準備をしていないどころか、あんな状態の部屋まで残してしまって、一体どんな気持ちで最期を迎えたのだろうかと今も考えます。
私自身は兄弟とは疎遠だったので、せめて残りの時間は何かしてやれないかと、できることを探して、入院中も、あるいは退院したあとの予定などもいろいろ考えていましたが、それらのほとんどは実行できずに終わってしまいました。
私は子供の頃、自分勝手でワガママ放題だったので、兄弟にはよく迷惑をかけました。昔を思い出すと、私には兄弟が泣いている姿ばかりが目に浮かびます。そういった過去や、恩返しを何ひとつできなかったという思いから、今回の片付けは恩返しのつもりでもあったので、最後までやり通せたのだと思います。
途中、あまりの酷さに怒りが頂点に達したり、心が折れてやる気がなくなったことは何度もありましたが、それでも片付けそのものをやめてしまおうと思ったことは、ただの一度もありませんでした。
もし私と同じように、ゴミ屋敷の片付けを自分でやってみようと考えている方がいらっしゃったら、その辺のモチベーションをいかに保つかが大きなカギになると思います。
でも正直言えば、こんなもの無理をして自分でやる必要などないのです。私は上記のように恩返しのつもりもあったので、半ば意地になって自分でやり続けましたが、業者に頼めば大抵のゴミ屋敷ならたった1〜2日で作業終了です。人に頼むのは恥ずかしい!と思っても、業者の作業はあっという間に終わります。自分でやったら時間ばかり掛かって人に見られる回数はもっと増えるのです。
料金を安く抑えたいから自分でと思っても、あれはどうしようこれはどうしようと頭を悩ませ、毎日毎日、人に見られるストレスを感じながら大量のゴミを部屋の外へ搬出し、処理施設では職員からケチをつけられ、いつ終わるとも知れない長時間の作業にかかる労力を考えれば、ちょっとやそっと高くたって依頼してしまった方が絶対にいいです。
人生には限りがありますから、こうやっている間にも残り時間はどんどん少なくなっていきます。あれやこれや考えて悶々とするより、さっさと業者に頼んで部屋を綺麗にし、新しい気持ちで毎日の生活を送る方が、はるかに有意義なことです。
もし今ゴミ屋敷で暮らしている方がこれを見ていたら、すぐに業者を探してください。
業者に頼むのは恥ずかしい、あれも必要これも必要、いや今はいろいろタイミングが悪い、もう少ししたらやるつもり…そんなことを考えていたら、時間ばかりが過ぎて何も変わりません。もう「無の境地」になって、一切の余計な思考は捨てて、
『綺麗な部屋で生活する自分』
だけを一番に考えて、とにかく行動するべきだと思います。
数日先の未来ですら誰にも分かりません。まだ時間がある、まだやるのは先でいい、そんなことを思っているうちに、私の兄弟のようにすべてが終わってしまうかもしれません。今からでも遅くありませんから、少しでも悔いのないように自分を変えてもらえたらと思います。
自分で変わらなければ人は変えてくれませんから、どうぞよろしくお願いします。
それでは、このブログもこれで終わりにしたいと思います。
私のつまらないブログをお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまお元気で、さようなら。