今回は製品紹介ではなく、製品評価時に僕があまり触れない

 

「ピンアクション」

 

についてのお話。

 

 

 

よくカタログのコメントやあらゆるレビューで「ピンアクションが~」って目にすると思います。

 

ピンアクション、製品紹介をする上での製品のウリとして紹介したり、我々テスターがテストする際の性能評価項目だったりします。

これについての考えは誰が正解でも不正解でもありませんが、僕の考えを書いておこうと思います。

 

なぜこんな事を書こうかと思ったのかというと、「ピンアクションが良いボール」って僕の中では「最高」「最強」と同じくらいに具体性に欠けた評価だから。

にもかかわらず、「ピンアクションが良い」って言葉は非常にボウラーから信用されている。なぜか。

なぜかは分からんのですが、ここで僕なりの考えを書く事で、添田のボールテスト時の評価基準の一つを知って頂けるのではないかと思いました。

 

この話の前提として、球質は問いません。

速い球速でRPM600あれば遅い球速のRPM200より良いピンアクションにはなります。

でもそれ言ったら話が進みませんので、「球質」が関係するとは書きますが、なるべく球質の強弱については避けて書きます。

 

 

 

以下、

・添田の考え

・ピンアクションそのものの捉え方

・ピンアクションが良いとは?

・10ピンタップ

・まとめ

の順で話していきます。

 

ボールテストは僕の土俵ですので今まで自信を持ってやってきましたが、今回は皆がそれぞれの意見を持っている要素についての話。

なので賛否があるのは当たり前。

あくまでこの記事で僕が書く事は「添田はこう考えてます」っていうただの落書き。誰かの意見と食い違っていても僕は否定や批判をしたいわけではない事を覚えておいて頂きたいです。

 

 

 

【添田の考え】

 

なぜ僕が製品紹介時に積極的にピンアクションについて触れないかというと、

「一定の条件下での客観的な評価がしにくい」

「ピンアクションはそもそも評価項目ではなく投球結果」

「ボウラー人生において全く同一のショットは二度無い」

「物理法則は超えない」

って感じの理由。

 

魔法のようなピンアクションはありません。

物理法則を無視したピンアクションなら確かにウリになりますが、それはあり得ない。

一見魔法のようなピンアクションに見えても「最高」で片付けて、正しいかどうかは置いといて「思考」を止める事はボールの理解を遅らせる事になります。

 

「ピンアクション」という言葉や感想に惑わされ、性能の本質を理解せずにボールを購入するという事は避けて欲しい。

 

 

 

【ピンアクションは性能ではなく結果】

 

ピンアクションという言葉の意味の考え方についてです。

ストライクってポケットヒット時の入射角、ボールの状態、ボールの回転、球速、それらによってピンがどう飛ぶか・・・あらゆる要素が複雑に作用して10本のピンを倒します。

上記の要素の中には「ボールがピンに当たった時にピンが低く飛ぶのか強く飛ぶのか性能」も関係してます。ボールの反発係数のようなものですね。

 

ピンアクションはヒット時に上記のような多くの要素それぞれが結びついたその後の事象であり、またその要素の多くはボールの動きや曲がりに関係する性能や球質に起因します。

 

 

 

なので「ピンアクションが良い」は結果。

 

 

 

ピンアクションが良いです!

じゃなくて、「~が良く、その結果ピンアクションが良い」

という評価が正しいと考えます。

この「~が良く、」の良い理由になる部分はスキッド、ブレーキ、レスポンス、バックエンド、曲がり形状や曲がり角度、持続性、その他ボールの動きからくるものなのです。

 

ボールの動きの質等に理由があるという事は、レーンコンディションによってピンアクションの質も変わるという事でもあります。

 

結局のところ、そのボールに適合したレーンコンディションやボウラータイプの投球ではピンアクションが良くなるという事です。

 

 

 

以下、次の項目まで脱線。

 

ブラックウィドーのピンアクションが頭一つ抜けているという認識は僕にもあります。

それはガスマスクコアが多くのボウラータイプが性能を引き出しやすい対応力を持っているからであり、このコアがボールの曲がりのあらゆる質が高く、適切な入射角やボールの強さ等を確保しやすいからだと考えています。

 

ブラックウィドーの美点を上記のように紹介すれば魅力的に捉えて頂きやすいですが、これを一言で「ピンアクション最高!」と説明されても僕には何のことか分かりませんし、とても勿体ない説明ですね。

 

かといってそんな万能っぽいコアが一番良いのかと言われると全然違ってて、もっと高慣性なコアやもっとフレアしないコア、特定のボウラータイプや用途に特に適合するコア、その他にも様々な特性を持つコアがスポーツボウリングには必要です。

そして様々な特性を持ったコアもまた、適合するボウラータイプやレーンコンディションではガスマスクコア以上のピンアクションやその他パフォーマンスを発揮するでしょう。

 

あと、ピンが飛ぶ音が違うとか、低く飛ぶとか強く飛ぶとか、正直それはありますよ。これはボールの構造や素材的な部分によるものでしょう。

そういうのはキックバック等に当たって跳ね返りやすくなったりピン同士が絡みやすかったりって結果に繋がる。

あとはピンに当たり負けしにくくなったりもするのかな。

でも物理法則は無視しない範囲の効果なんですよ。跳ね返りやすくなったり絡みやすくなったりの「~しやすくなる」って、「~しない時もある」んだろうから信憑性や重要性は低い。おまけに物理法則に従ってピンが飛ぶ事実は絶対変わらない。

 

キックバックで跳ね返るって部分で言えば、6番ピンが10番ピンの右に飛んで本来ならタップするって時、6番ピンが跳ね返って10番ピン倒せたら超デカい。

じゃあ6番ピンが跳ね返って10番ピンを倒したストライクが出たとして、それはボールのおかげなのか、そのボールじゃなくてもそんなピンアクションになっていたのか。

 

もっと言えばボールだけでなく、キャリーやブレイクダウンの加減、オイル量、長さ、RPM、球速、AR、AT、ボールが通った板目、板の傷み具合や凹凸の有無、メンテしてからその投球までの経過時間、そのメンテ直前のレーン状況やオイル量、クリーナーの種類や濃度、オイルの粘度や表面張力、ボール表面のRA、その他にも無数に投球結果を左右する要素はある。

 

「ボウリング人生において全く同一のショットは二度無い」

 

無数の要素を完全に再現すればボールそのものが及ぼすピンアクションへの影響も検証出来るけど、それは少なくとも我々ボウラーには出来ない。

よって、我々ボウラーには上記の「それはボールのおかげなのか、そのボールじゃなくてもそんなピンアクションになっていたのか」は証明出来ないし分からない。

 

スーパー頭良い人がスーパーな分析をして「これはボールのおかげ」と言うなら興味あるし、もっと話聞きたいね。

今後AIとかなんかよく分らん超すげーコンピューターとかでこういう部分の解析から数値化して性能を分かりやすく見られるようになったらいいね。

もしかしたら工場とかでは既にそういうデータ持ってるのかな?いや持ってるだろうな。

だってCFIはピンアクションや耐久性の向上を謳っていたはず。それがバックエンドリアクションが強くなった結果ピンが飛ぶのか、素材そのものの効果なのかで話は変わるけど。

 

 

 

【ピンアクションが良いとは?】

 

何をもって「ピンアクションが良い」とするのか。

だって、「パーフェクトストライク理論」というものが広く知られていて、実際にそれを満たせば現代のリアクティブボールならハイパフォーマンスボールじゃなくてもストライクになる。

 

という事は「パーフェクトストライク理論」なポケットヒットじゃない場合にストライクの確率が高いボールがピンアクションが良いボールと考えられる場合もありそうだ。

じゃそれってどんな時?

パッと出てくるのは「薄目」「厚目」なポケットヒット時。

 

「厚目」はね、多分ボールがいくら進化しても4番残ります。「厚目のピンアクションが良い」ってあまり聞かないでしょ?

4番タップは近いうちにスプリットが待ってるので早めにアジャストしましょう。

 

「薄目」のピンアクションについては良く聞きますよね。

個人的には薄目のポケットヒット時にストライクになるかどうかって2番ピンが倒れるかどうかだと思ってます。

これに関しては1番ピンが飛ぶ方向しか2番ピンが倒れるかどうかに関係していません。

これはボールの性能云々ではなく、ピンに当たったボールの位置の問題ですね。

 

その他に薄目ストライクで重要な点・・・ラッキーや球質を除いた場合、思い当たりません。あくまで僕は、ですよ。

薄目のストライクに関して「パーフェクトストライク理論」に類するセオリーや考えはあまり聞きませんし、薄目のピンアクションの良し悪しについては、ぶっちゃけどのボールも差は無いように思います。

どのボールも本当に良く飛ぶ。本当に。充分。

 

 

 

【10番ピンタップについて】

 

10番ピンが残るか残らないかもピンアクションが良いか悪いかの判断を大きく左右しますね。むしろこれが本題な可能性。

「パーフェクトストライク理論」を軸に考えると、3番ピンがどこに飛ぶのかによって10番ピンが飛ぶのか残るのか決まります。

 

1番ピンにボールが当たった時に右にボールがズレるのか、どのくらいズレるのかが全て。

ボールが一定以上右にズレると3番ピンは6番ピンの左側面に当たり、6番ピンは10番ピンの右に飛ぶ。10番残る。って感じ。

 

ボールがズレないようにするためには入射角や1番ピンに負けない球威が必要ってわけ。

 

そうなのよ。

必要なのは「曲がりの質」。

僕が考えるピンアクションについての答えはこれ。

 

だからピンアクションじゃなくて曲がりの質を説明する。

その後にピンアクションが特筆すべきものなら「~なので、ピンアクションも非常に良い」とする。

 

 

 

ではポケットヒットしたが「パーフェクトストライク理論」から外れたピンアクションでのタップ率については?

 

上で書いたものと全く同じ話ですが、

「このボール以外完全に同一の二つの投球、AのボールはストライクになったがBのボールは10番ピンが残った。よってAのボールの方がピンアクション性能が高い」

が誰の目にも明らかな形で証明されないと分かりません。

 

つまり「パーフェクトストライク理論」から外れたピンアクションのタップ率検証と性能評価は現状あまり大きな意味を持たないと僕は思います。

 

メッセンジャーについても同様に性能評価はあまり必要性は無いと思います。

メッセンジャーは強い球質のプレイヤーなら日常的に見る光景ですが、これはピンを横に強く飛ばせる球質故なので、球質の強さが関係する部分にはこの記事では言及しません。

 

 

それでも肌感覚で「なんかコイツは良く倒すな」ってボールはあります。沢山あります。

それを「ピンアクションが良いボール」と判断するんじゃなくて、「自分に合っている」「今のコンディションに合っている」「なるほど、こういう時に使えばよく飛ぶんだな」って思えば有用な感想になると思いません?

統計学でこの「肌感覚」は数値化できると思います。

でも僕一人では統計学で言う母集団という調査対象者やデータの収集で詰むわけです。

じゃあ僕一人が持つデータを用いて説明する?それって普段から僕がやっている事ですね。

 

あと、「ラッキー」って言葉を何回か使いましたが、「少ない頻度で起こり、投げ手にとって都合が良い事象」の便宜上の言葉です。「運」の事ではないです。

物理学的な観点では全てのピンアクションが必然である事は理解してます。

 

 

 

【まとめ】

 

結局、「用途と適正」です。

投げ手に合ったボール、コンディションに合ったボールのピンアクションは良いんです。

現代のハイパフォーマンスボール、投げ手とコンディションに合っていれば多少の投げミスをカバーするくらい優れたピンアクションを持っているのは当たり前なんです。

 

そしてタップは起こるべくして起こります。

どれだけ強い球質を持ったプレイヤーでも、どれだけコンディションに合ったボールでも、投げミスをカバーするような優れた性能のボールでも、絶対に「タップの理由」を無視する事は出来ません。物理法則を超える事は出来ません。

 

その投球でのピンヒット時、ボールの曲がりに関するあらゆる要素やボールの状態や球質等によって「ピンアクション」となり、タップしたりしなかったりします。

 

 

 

僕みたいにピンアクションそのものじゃなくてそこまでの過程が大事と考える人。

ボールの反発係数やら素材やら製法やら、製品そのものが持っている性能と考える人。

その他にも色んな考えの人がいると思います。

 

あ、でも僕は決して「反発係数やら素材やら製法やら、製品そのものが持っている性能」を軽視してるわけではありませんよ。

完全に僕が証明出来ない性能は推せないってだけです。

 

ボールの曲がりや走りや強さでさえ感じ方が人それぞれ違うんですから、ピンアクションの感じ方も違って当たり前。

 

なので、「ピンアクションが~」で終わらずに、「なぜなのか」「オイルが多かったから?」「オイルが少なかったから?」「タイトに投げたら?」「ワイドに投げたら?」「フォワードロールは?」「サイドロールは?」って、それぞれの考えや感じ方に沿って掘り下げていけばもっとボールの理解が深まると思います。

 

競技シーンではボール選択が非常に重要な要素となっている現代ボウリング。

ボールに対する知識や理解を深めていく事はスコアアップに必ず繋がります。

 

最初に書いたように、正しいとか間違いとかじゃないです。添田はこう考えてるよ。って感じの落書きです。

文章の中でもっと掘り下げて考えるべき事もあったと思いますが、僕の文章は長いし読みづらい。

なので今回はこの辺で。

 

おわり。