3年間の空白を埋めたのは、理屈ではなく「指先の記憶」だった。
「最後の一振りまで、身体が覚えていた」そんな不思議な体験を、今日、3年ぶりに握った蕎麦粉が教えてくれていた。
蕎麦打ちは、繊細な格闘だ。
まずは、粉と水が手の中で出会い、小さな粒から一つの塊へと育っていく「水回し」。
3年というブランクに不安がなかったと言えば嘘になる。
しかし、粉に触れた瞬間、指先が勝手にリズムを刻み始めた。
しっとりと吸い付くような生地の感触。
力を込め、命を吹き込むように練り上げるほどに、蕎麦は艶やかな表情を見せてくれる。
のし棒で薄く、均一に広げていく作業。
そして、一番の醍醐味である「切り」の工程。
まな板を叩く「トントン」という規則正しい音が響くたび、3年前の感覚が鮮やかに蘇り、視界が拓けていくような高揚感に包まれた。
切り揃えられた蕎麦を持ち上げたとき、その一本一本に宿る「角(かど)」の立ち具合を見て、確信した。
「ああ、身体は忘れていなかったんだ」と。
茹でたての蕎麦を冷たい水でキュッと締め、まずはそのまま一口。
鼻を抜ける圧倒的な香りと、手打ちならではの力強いコシ。
それは、どんな名店でも味わえない、自分の「今」が詰まった最高のご馳走だ。
効率やスピードが求められる毎日の中で、ただ無心に粉と向き合い、一本の麺を仕上げていく。
この「没頭」こそが、大人の最高の遊びであり、癒やしなのかもしれない。
もし、何か新しいことに挑戦したい、あるいは昔やっていたことを再開したいと迷っている方がいたら、ぜひ伝えたい。
「一度身体が覚えた喜びは、一生消えない」ということを。
今夜は、自分で打ったこの蕎麦を肴に、ゆっくりと冷酒を楽しみたい。
皆さんも、自分だけの「至福のひととき」、見つけてみませんか?
■アクセス情報■
●営業時間 9:00~21:00(要予約)
●休日 不定休
●場所:〒400-0311
山梨県南アルプス市曲輪田2700
●電話 090-3001-0348
●駐車場 5台
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