自由には二種類あるのです。

したいことをする自由と、

されたくないことをされない自由です。

 

 

まるで説得力のない言葉だなぁと思ったけど

あながちそうでもないのかも

 

 

赤薔薇ピンク薔薇

 

 

『侍女の物語』を読んだ。この一冊の中に、一つの独裁国家ができていた!

この国は、厳格な管理監視、徹底的な身分制度、超過激な「全体主義」である。

 

悪夢のような国……とは思うけれど、、、実は過去の歴史のどこかで起こった場面を切り抜いて張り合わせたものであるような…、だから生々しくも事実が見え隠れしていると感じる部分も。

さらに言えば、現代、まさに今この世界で起きている人々の不満や生きづらさを、かなり大げさに極端に助長した体制がこの国家にはあるように見えた。また、未来への警鐘のようなものが入っていて、近未来に同じような問題が起こるのではないかと予感させる。

あるいは既に起き(始め)ているとも言われている。

 

例えば、オルダス・ハクスリー『素晴らしい新世界』のようなディストピア小説はおもしろく読めたけれど、この『侍女の物語』を、笑止千万!と笑いたいけれど笑えないのは、同じディストピアとはいえ、リアル感が身に迫って感じられるからかもしれない。

 

 

侍女の物語

 


※決定的なネタバレはしていませんが、内容に触れながら感じたことを書いています。



 

この物語の舞台はアメリカだけれど、すでに今は昔、アメリカとなっており、ギレアデという独裁国家ができている。「個人主義」は徹底的に排除されている感じ。

キリスト教の超過激な勢力(原理主義)がクーデターを起こしたことによって、彼らが支配管理するギレアデ共和国ができたということだ。

 

由々しき問題は、女性の出生率の極端な低下。環境汚染の影響なのか、とにかく妊娠可能な女性が極端に減少している。ということで、これを解消するために、国が生殖に介入する。

さらに、ギレアデ共和国は、男尊女卑の世界でもあるので、女性の読み書きが一部を除き禁止されている。

国が言語や知識や文化を徹底的に抑制している。違反したものは腕が切られるとかなんとか…、罪によっては殺されて壁に吊るされ見せしめに…(;'∀')

 

 

アメリカもそうだし、日本もそうだけれど、現在国民は個人として尊重されるから、そのような風潮が悪の結果を招いたとでも言っているかのよう…。

個人が尊重され、自由に主張できたり選択できたりする環境が、出生率低下、環境汚染、風紀の乱れ等の結果を招いてしまった。だからここは全体主義により、国家が厳しく粛清して悪を正そう的な……クーデターだったのだろうか。

個人主義によって生まれた悪を全体主義にして正そうぜ、みたいな…。極端すぎてこわい。

確かにそうしなければ正せない部分もあるのかもしれないけど、かといって実際そういう国を外から見ちゃうとやっぱり不自由で何も幸せ感じない。

 

 

赤薔薇ピンク薔薇

 

 

ヘンなのと思ってしまったのは、キリスト教の過激な思想が感じられる部分。

例えば、性的快楽を求めてはいけないという思想を厳守するための子作りの様子など。

 

国が生殖に介入していることによって、「侍女」という身分の「生殖労働者」が存在するんだけれど、「侍女」になるのは妊娠可能な女性とされていて、身分の高い男「司令官」と子供を作る必要がある

しかし「司令官」には「妻」が存在する。「妻」は女性の中では身分が上とされている存在ではあるが出産できない。夫と妻は性行為できない。(…ん?快楽なしならオーケーなの?)

そこで、「司令官」の相手は「侍女」がすることになっていて、「司令官」と「侍女」の生殖行為を「儀式」と呼んでいる。笑…いたいけれど笑えない~。

 

徹底的に快楽を取り除いた「儀式」(いわゆる性行為)が一見滑稽すぎるんだけれど、「司令官」「妻」「侍女」と三人で行う「儀式」、なんだか妙な体位だし……、でもこれこそ厳格な教え、まさに三位一体!?と変に感心しちゃった。。

 

はたしてその場に「妻」がいる必要あるのか?とも思ったけれど、「妻」も「儀式」に参加しないと、「侍女」と「司令官」の姦淫行為となり、宗教上ご法度だとみなされるってことかな。

それにしても…、ムードのないプレッシャーの場面で、男は機能するのかな?でなくても「司令官」ってすでに結構なオッサンだし…。

さらには、出産の場面もなんか妙だった……。

 

とはいえ、やっぱり人間から完全に快楽を排除するのは無理らしく、金と身分のある男にはコッソリ抜け道が存在するようで。。。こーゆーのは、いつの時代も変わらないのかね~。

いわゆる裏で快楽の性行為(男性の一方的な)が存在しているんだよね~。ゆえに「娼婦」が存在する。やれやれ。

 

 

赤薔薇ピンク薔薇

 

 

まとめると、女性の身分は上から「小母(唯一読み書きOK)」「(司令官の妻)」「便利妻(金のない夫の妻)」「女中」「侍女」「不完全女性(ほとんど廃棄物…)」、そして裏の世界の「娼婦」。

さらに、「」という監視がどこにでも秘密裏に存在しているらしい。

 

なんだか、女性にとっては不自由で過酷な国になっているが、この制度は男性だけが作った…わけではなく女性も介入してたっていうことだ。

うーん、私だったらこんな縛られた世界にいたら生きていたくなくなっちゃう気もするけど、自殺対策も色々されているようだし、、、何がいいかな~。やっぱ「司令官の妻」かな~。でも本も読めないし、妻同士の付き合いうざそうだし、暇そうだな~。ある意味では女性の特権でもある「侍女」かな~。う~ん……自由を求めてexile!かな~。吊るされちゃうかな~。

 

 

ちなみに「侍女」に名前は無く、司令官の所有物と分かる名前がつけられるけれど(例えば "Fled" という名の司令官の侍女は "of Fled" と呼ばれる)、今の日本も結婚したら妻の姓は変わるよねぇ(逆もあるが)。夫の家の人と所有される感じにもなるなぁ…なんてふと思った。

といっても私は夫婦別姓にそんな関心ないんだけど。

 

 

この物語の主人公である「侍女」は、この世界には「愛」がないと言っていた。「恋に落ちること」がない、と。

恋に落ちることに、それだけの価値がありましたか?統計をごらんなさい。昔から、あらかじめ決められた縁組も同じくらい良い結果を残してきたんですよ、それ以上ではなかったにせよね。

ふーん、なるほどね~、なんてあやうく納得しそうになった私でした(;'∀')


「恋に落ちること」も然り、生きる喜びを知っている彼女たちがこの世界を生き延びるには、自分の内部に入り込んで感情を閉じ、ただただのんびり座って毎日を過ごし、「儀式」を律儀にやり通すことがいいのだろうか。

 

大部分の人はこのギレアデ共和国を悪夢のように思うんだろうけれど、生殖労働者である「侍女」の方が現実よりマシだと思う人も実はいるのかな…。ギレアデは個人が無いも同然、国に管理されているから、人と比較されない(容姿とか学力とか)、異性から卑猥な目で見られない、コンプレックスや金銭面の解消とか。うーん。

 

冒頭に書いた「されたくないことをされない自由」って、こういうことかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いま、わたしは悲しい。

わたしたちの話し方はたまらなく悲しかった。

消えてしまった音楽

色あせたことば

擦り切れたページ

こだまのこだまのようなものだ。

すべては消え去り

今は存在しない。