直木賞受賞作品、朝井リョウ『何者』を読み切った。
今回は小説レビュー、というか心が揺れ動いた言葉を書き残したいと思い、少しかっこつけてブログにしてみます![]()
・本の紹介とあらすじを超簡単に
就活を控えた大学生の男女5人がひょんなことから「作戦会議」「就活は団体戦」の名目で1人の部屋に集まることになる。
「就活」という個が画一化されるイベントの中で、表向きには互いに切磋琢磨しているが、その裏に隠れてる個々の心情や決断、葛藤、弱さが次々に露呈していき彼らの関係性が次第に、、、
朝井リョウ作、直木賞受賞、純文学的な物語小説だ
・感想
感想としては、非常に面白かった。とにかく面白かった。次の展開が待ち遠しくてしばしば早く家に帰りたくなっていた程だ(笑)
というのもまず登場人物が就活生なので、もうすぐ大学3年になる自分と重ねながら物語に入っていけた。
それに主人公が冷笑系(笑)っぽい感じで、それぞれの登場人物の少しイタい発言や行動、また『意識的にあるいは無意識的に強がって自分を「良い風」に見せようとしている人間の「弱さ」や「臆病さ」』を細かく分析して批評し的確に言語化していて、人間の心理や精神に興味がある自分は、ページをめくってそういう瞬間にふれあうたびに心が揺れ動き、ワクワクを感じながら読み進めていけた。
また最後の大どんでん返しの結末は、読者である自分まで巻き込まれている、あるいは著者が盛大に読者を巻き込もうとしているのではないか、と感じざるを得なかった。
すべてを読み切った時には、伏線が回収され切った「すっきり感」、物語が終わってしまった「寂しさ」、最後の最後まで著者に手のひらの上で転がされた「してやられた感」等が混ざってなんともいえない気持ちよさがあった。
時間が経ったらもう一度読んでみたいと思う。
・考察~想像力がない人は相手に想像力を求める~
この本の中で何度も登場し、そして一番心を動かされた言葉だ。
SNSが発達して普遍的なものになっている現在、自分のすごさや頑張っている過程、キラキラした生活、そんな「良い自分」、「強い自分」、「美しい自分」をこれでもかというくらいに周囲にアピールして自分の価値を保っているように見える。この文章を書いている自分だってそうだ。もう本当に心が痛いほど思い当たる節がありすぎる。今日自分が頑張ったこと、成長した成果、日常をenjoyしている過程、どうしてもアピールしたくなる時がよくある。
しかしそれは、自分で自分の価値を認められない、「いかに自分がすごい人間なのか」を常に周りに知られてないと足元がグラついて生きていけない脆弱性の裏返しなのだ。
つまり自分の想像力のなさゆえに、他人に「いかに自分が他の人と違うか」を想像してほしくてたまらないのだ。
自分も「自分の凄さを周りに想像してもらおうと頑張る想像力のない人間」は人間としての深みや魅力、色気が少ないと感じる節がある。自虐ではないが自分もこの物語の大学生たちと同じく「浅い」と我ながら感じる(笑)そしてそんな自分が嫌になる時がある。
しかし著者はそれを真っ向から否定しているようにはあまり見えない。そういう部分も人間なんだからあるよねーくらいに言ってそうだな、と感じる。
・まとめ
最後にこの本を読んで思ったのは、深みのある人間の魅力に気づけて良かった。ということだ。
今から完璧にそういう深みのある人間になろうとしてもすぐになれるようなものではないと思う。しかし今まで無意識下でやっていた数々の「想像力のない行動」を意識下に登らせることができるだけでも「想像力のある人間」への大きな一歩、なのだと思う。
