中国唐代の禅僧洞山良价の残した禅語
「如愚如魯」
意味は『目立たぬように、誰がしたかわからぬように、ささやかなことでも人間のすべきことなら、きちんとしておくことです。売名や私欲のためでなく、ただ行なう。それは「愚直」とも言うべき言葉でしょう。
誰も見ていないところでベストを尽くす、精いっぱいするということは容易ではありません。しかし、それができてこそ、真実に他を愛し、人生を愛し、自分を愛することになるのです。
さらに、それは継続することによって意味があります。「只能く相続するを」と歌われるゆえんです。』
誰も見ていないところでベストを尽くす。
ただ行なう。それを続ける。
本来の句は「潜行密用(せんこうみつゆう)は愚(ぐ)の如く、魯(ろ)の如し」
大切なことは人知れず行い、利益のみで動くのではなくて
目立たないことにベストを尽くせ、という意味になります。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏も
禅語の影響を受け、「ハングリーであれ、愚か者であれ」
(Stay hungry,Stay foolish.)
という金言を生みました。
アップルは禅による教えから、「シンプル」なコンピュータの開発に力を入れます。
実はこの“愚の如く、魯の如し”に近い禅の話として
以下のような師匠と弟子のやりとりが教えられています。
弟子が熱心に坐禅をしていると、
師匠に「何を考えながら坐禅をしているのか」
と問われ、「悟りを開き、成仏するためだ」と答えた。
すると師匠は、おもむろに1枚の瓦を持ってきて磨きだした。
それを見た弟子が「瓦を磨いて何をするのか」と聞くと、
「瓦を磨いて鏡にするのだ」という。
弟子が「瓦を磨いても鏡にはならない」と言うと
師匠は「坐禅をして仏になれるのか?」。
本来の目的を失わないこと。
人はしばしば、「どう見られているのか」を期待し、人から評価を得るための生き方をしがちです。
本当に大事なことは「愚の如く」愚直に。「魯の如く」ひたすらに。
誰の目を気にするではなく、人から見られていないところこそ、大切なのです。
スティーブ・ジョブズは、こうも語っています。
「偉大な大工は、誰も見ないからといって、キャビネットの裏側にひどい木材を使ったりはしない」