『サトシ、あの夏の思い出〜1通のLINEに込められた想い〜』

あれは夏の暑い日。
1通のLINEから始まった…。

会いたい…。
ただそれだけ。
送り主は…

高校時代の友達。
ただの友達じゃない。
サトシが振られた相手。

あれは夏の暑い日。
28歳のサトシは、勤務する大阪支店での仕事を終え、帰路につく。
その日は何だかまっすぐ帰る気にならず、西梅田の駅に行かす、駅ビルの地下二階の立ち飲み屋でビールを飲んでいた。
そんな時、1通のLINEが…

「会いたい…」

高校時代の好きだった相手、リナからだった。
リナとは1年の時同じクラスで仲の良かった女友達。
その時のサトシはただのエロガキ。リナの魅力に気づかず別のエロい体した女の子ばっかり見てた。
実はリナはサトシのこと好いてくれてたらしい。
それを知ったのは大学の時。
もう会えなくなってから知った。
卒業する時、めちゃくちゃ可愛くなっていたリナ。
卒業してから知って、もしあの時…と後悔したのは言うまでもない。

そんなリナと偶然大阪駅近くでバッタリ会った。
リナは昔の面影を残したままさらに綺麗になっていた。一目見てリナだと分かった。向こうも気づいた。

久しぶりやね。柔らかい口調でリナが言った。そうやな。高校卒業以来やな。サトシは心臓の音が速くなってるのが分かった。

久しぶり再開。本当に奇跡としか言えない偶然の再開。サトシは高鳴る鼓動をリナにバレないように平静を装い、久しぶりに会ったのも何かの縁やし、お茶でもどう?と声かけた。

リナからはそんなに時間に余裕がないんやけど、少しなら…との返事。

久しぶりの同級生の会話。他愛も無い会話。このままでは二度と会えなくなる。決死の思いで、「また今度ゆっくりお酒でも飲みながら会えへん?」リナに問いかけた。リナは少し戸惑ったが「ええよ」との返事。

LINEを交換してその日は別れた。

リナと別れたあと家に帰ってスマホと睨みあいのサトシ。
リナへの初LINEを入力しては消し、また入力しては消し…。
「今日は久しぶり」で間違って送信…。慌てて送信取消をしようとするも既に既読。

リナから「本当に久しぶりだったね。まさかあんな偶然があるなんてね。ちょっと嬉しかった。」とのLINE。

中途半端にご送信したのに返信が来てしまい、恥ずかしさからその日は返信できず…。

次の日、「昨日はごめん。寝落ちして文章途中で送ってしまった。
僕もまさか会えるなんて思ってなかったから嬉しかったよ。」と返信。寝落ちなんて嘘。だってリナからの返信に既読がついてるんだからね。笑

そのあと数回LINEのやり取りをして食事の約束をする。

約束の食事の日、朝からそわそわして仕事もミス連発。それでも約束の時間に遅れまいと必死に仕事を終わらせた。はずだった。

もうすぐ終業という間際、一本の電話が。定刻データからだった。サトシの担当先が倒産したのだ。当然帰れない。

すぐにリナに連絡。「ごめん。急なトラブルで今日は行けなくなった。」

リナからは「分かった」のみ。

どうして彼女とはこんなすれ違いばっかりに…。サトシは自分の置かれた状況を恨んだ。

その日は帰宅したのは0時をまわっていた。

もう流石に遅いよな…。

リナに「今日は本当にごめん。」それだけ送ろう。送信ボタンを押そうとした時、リナから連絡が。

「実は、言ってないことがあったんだ。私、結婚するの。
だからもしかしたらもう会えないかも…」

リナからのLINEに対して何て返信するべきか分からず、その日は本当に寝落ち。

次の日、少し落ち着いたこともありリナへ返信。「そうなんだ。本当にごめんね。そうとも知らずドタキャンしてしまって。
結婚するんや。おめでとう!なら中々会いにくくなるな…。でも仕方ないな。お幸せに。また落ち着いたら食事でも行こ」

コレが精一杯の返信だった。

リナから「そうだね。ありがとう。」とだけ返信。

そこから連絡もしにくくなり数日が経過した、夏の暑い日。

仕事帰りに駅ビルの地下二階の立ち飲み屋で飲んでると一本のLINEが…。

リナからである。

「会いたい…」

それだけ。

少し酔った頭をフル回転し、何で返せばいいのか考えた。

「どこに行けばいい?」

この答えが正しいのか間違ってるのか分からない。でもこの時はコレしか無いって思った。

リナから「高校。私たちが初めて出会ったあの高校」

「分かった。今から向かう。今大阪だから1時間半くらいかかるけどいい?」

「待ってる」

すぐにお会計を済ませ、電車に飛び乗る。四つ橋線難波駅から南海難波駅までダッシュして南海高野線へ飛び乗る。

電車内であのLINEの意図は?何で?結婚は?頭の中がぐるぐる回る。アルコールもあったから余計に…。

高校に到着したのはLINEが来てから約2時間が経っていた。

「遅い!」リナの声だ。

「ごめん。電車が無くて。コレでも特急まで使って最速で来たんやで…」

リナは高校時代の時と同じ笑顔だった。

「あのね、私高校一年の時サトのこと好きやったんやで。知ってた?アコのおっぱいばっか追っかけてるあんたを何で好きになったんか分からんけど…。でも確かに好きやった。」

何も言えなかった。大学の時に友達から聞いていたこともあって、なんて言ったらいいのか分からなかった。

黙ってるとリナは続けて

「あの時は私も若かったから私から好きってよう言わんかった。それよりも仲良くしてる関係が壊れる方が嫌やった。居心地が良かったんよね。あの距離感。片思いの距離感。2年になってしばらくしてもまだ好きやった。そんな時サトがアコとは別の子と付き合ったって聞いて諦めた。3年になって私にも彼氏ができた。その時やったよな?サト、彼女と別れて私に付き合ってって言ってきたの。」

「そうやな。彼女と別れてしばらくしてリナを見て、一年の時が懐かしくなって告白した。彼氏がいてたのは知ってたんやけど、今言わないと一生後悔するなぁって思って」

「ふふ。そん時な。ホンマは嬉しかった。でも…。遅いねん!乳ばっか追っかけてたからやん。アホって思った。」

「おっしゃる通り…」

「あれから話することもなく卒業したな。実は卒業して20歳の時にサトにメールしたんやけど、携帯番号変わってたみたいで届かんかったんやで」

「マジで?大学一年の時携帯無くして機種変より新規の方が安かったから番号変わったんよね。そこから会えた人には番号変わったこと伝えたんやけど…」

「そうやったんや。でもそっから会うこともなくすっかりあんたのこと忘れて、そのあと何人かと付き合った。今の彼氏とはもう2年になる。明後日の土曜日に結婚式やねん。」

「そうなんや。おめでとう」

「ありがとう。でもそんなタイミングで何でまた私の前に現れるんよ。しかも悔しいことにアンタは何も変わってない。高校の時とほぼ変わってない。会った瞬間にあの時の想いが駆け上がってきた。でも結婚が決まってるし、最後の思い出で食事でもと思ったのにドタキャンて…。私らってそういう運命やったんやろうなって思って諦めた。そんで明後日結婚式やし、久しぶりにここに来たら、高校一年のふざけあってた時の思い出が溢れてきて…。LINEしてもた。」

「そうなんや。でもオレもちゃんとあって話したいと思ってた。高校生の時、ただのエロガキやって、リナの好意に気づかず、3年になってリナのことが忘れられず告白した。その時フラれてようやく吹っ切れてたんやけど、20の時友達からリナが高一の時オレのこと好きやったんやでって聞いて…。それからずっとリナのことは頭の片隅にあった。だからあの偶然再開した日、運命やと思った。でも既に何もかも遅かったんやね。」

「そうやねん。アンタはいつも遅いねん。サト…一個だけお願いがあるんやけど…。」

「オレにできることなら何でもいいよ。」

「キスしてほしい。10年間の想いにケリをつけたい」

「分かった」

2人は黙ってキスをした。

どれくらいの時間が経っていたのか。

リナは小さな声で「ありがとう」と言った。オレは「ごめんね」と言った。「ホンマに」と返事があった。

そこからしばらく黙って。

リナから「帰ろっか」

「そうやな」2人は何も喋らず駅まで歩いた。自然と手を繋いで…

Fin