読了するのに時間がかかり過ぎた。

そのために映画「戦雲(いくさふむ)」の監督である三上智恵の撮影日記の「戦雲(いくさふむ)~要塞化する沖縄、島々の記録」(集英社新書)の紹介が遅くなった。

まずは、本書のプロローグ「戦雲(いくさふむ)」に包まれゆく島を歩く」からの抜粋。

切れ切れの文章になってしまっているのは、ぼくの責任。

なにとぞご海容を。

 

 

頑張っても踏ん張っても、沖縄県と国との裁判はことごとく負け、辺野古の埋め立て土砂は投入され続け、ミサイルも戦車も島に入って来る。敗北の場面を撮られるのは、現場の人々もつらい。カメラを回す方もつらく、見る側もつらい、そんな映画では制作費の回収も難しいだろう。

 

辺野古の基地建設も止められない。自衛隊ミサイル基地の建設も止められない。ならば私のやってきた報道もドキュメンタリーも、何の役にも立たなかったということなのか?そんなに敗北感に塗れて苦しいというのなら、もう廃業して家にこもっていればいいのでは?と自分に言ってみる。それでも迷いながらノコノコと現場に通っては身もだえし、立ちすくんで、冷静な撮影すらできない自分がいる。「何がしたいの?まだ何かできると自分を買いかぶっているのか?」と内なる冷たい声が響く。

 

実際、国の平和が瓦解するような重要な出来事が、全国に伝わっていない。沖縄だけの話にされたまま、人々の手の届くところに映像がない。誰れかがそれを置きに行かなければならないのだ。なのに、その映像をもっている私は一体何をしているのか。

 

沖縄生活30年の自分の敗北感とか、次作品のクオリティ云々は、もはやどうでもいい。ただひたすら大事な動きを世の中につたえる、その地を這うような仕事から逃げるな、と自分に活を入れ直した。

 

と、ここまで書いて立ち止まっていたところ、ご本人が語っている対談の動画を眼にした。

ならば、ぼくのつたない説明よりは、そちらを紹介する方がよほど良いと考え直した。

1時間もある長い動画だが、単なる反戦のためのプロパガンダ映画や著作とは一味も二味も違うことがよく理解出来るはず。

 

 

時間に余裕のない方は、上記の動画内でも紹介されている映画の予告編をどうぞ。

こちらは2分と短い。

 

 

本書に衝撃的な資料が記載されていたので併せて紹介。

第一次世界大戦軍人の被害92%民間人は5%

第二次世界大戦軍人の被害52%民間人は48%

朝鮮戦争軍人の被害15%民間人は85%

ベトナム戦争では軍人の被害5%民間人は95%

(杉江栄一、樅木貞雄共編者「国際関係資料集」1997年)

だという。

つまり、新しい戦争ほど自国の兵士は守るが、民間人は守らなく(守れなく?)なっている

 

(別冊付録)