ボケ~ッとテレビを見ていた。
テレビが、日中韓外相会談で来日した中国の王毅外相の発言を報じていた。
尖閣問題について、いろいろ報道があるが、半分は漁の季節であるため、もう半分は大げさに書きたてられているためだ」と。
また、「現在の状況を双方がコントロールし、日中関係の改善に努めるべきだ」とも。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00334112.html
これらの発言は、少し前に高野孟氏が日刊ゲンダイに投稿していた「日中漁業協定も読まずに中国脅威論を煽る愚」という主張と符合する。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187925/1


そのことを語る前に、「日中漁業協定」なるものをおさらいしておこう、と思う。
Wikipediaによると、1997年に日中漁業協定(新協定)が締結されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E4%B8%AD%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%AE%9A
その協定の中で、日中両国で領有権の折り合いがつかない尖閣列島の北方に関しては「暫定措置水域」を設置することで妥協され、
暫定措置水域内では、いずれの国の漁船も相手国の許可を得ることなく操業することができ、各国は自国の漁船についてのみ取り締まり権限を有する。
・同水域における操業条件は日中共同漁業委員会が決定する。同水域において相手国漁船の違反を発見した場合は、その漁船・漁民の注意を喚起すると共に、相手国に対して通報できる。

とある。

つまり、日中漁業協定では、中国漁船が暫定措置水域内である尖閣列島における日本の領海内で操業すること自体は何の問題もない
問題となるのは、操業条件や漁獲量を守らなかった場合であり、その場合でも中国漁船を取り締まれるのは中国公船のみということになる。
今回の場合、中国漁船が大量におしかけ操業条件守らなかった可能性は十分ある。
そうした違法操業の中国漁船を取り締まるために、
中国公船はその旨を日本側に通告した上で出張ってきているのだと、高野氏の寄稿の中で元外交官は語っている。
日中漁業協定を読んだこともない記者が、中国脅威論をあおる与太記事を書いているとも。


ものごとには表もあれば裏もある。
外交上の駆け引きともなれば、なおさらだろう。
中国公船が、違法漁船を口実に何らかの調査を尖閣列島周辺で行なった可能性だって否定できないとは思う。
が、少なくとも中国脅威論をあおり、軍事衝突の可能性を語るよりは説得性のある見かただ(と、ぼくには思える)。
中国が覇権国家を目指しているという見解をぼくも否定しない。
が、いまや経済は世界中が網の目のようにからみあって動いている。
中国経済だって例外じゃない。
尖閣列島に軍事的な攻撃を仕掛けることが中国にとって何ほどのメリットがあるというのだろうか。

北朝鮮や中国の政治体制をぼくは支持しない。
多様性に価値観を見出すリベラリストたらんとするぼくにとって、一党支配の政治体制など容認できるものではない。
が、だからといって、中国や北朝鮮の脅威を不必要にあおり、安保法制の正当性を語り、防衛(軍事)予算を肥大化させていく動きにも与し得ない。
テレビなどで、「尖閣諸島に大量に押しかけているのは漁船ではなく、軍事訓練を受けた船だ」などと堂々と主張している人がいるが、彼らは一体どんな根拠を持っているというのだろう。
単なる流言飛語のレベルじゃないか。

尖閣列島の海域でギリシャ船籍の貨物船と衝突して沈没した中国漁船の乗組員を救助する海上保安隊
このことに対して中国は謝意を表している。


領土、領海などの問題は主張が相対する国のナショナリズムの油にいとも簡単に火をつける。
ともすれば、それが軍事対立にまで火の手は広がりかねない。
厄介なことに、意図的にそのことを目論むやからもいる。
あるものは利益のために、またあるものは偏狭な理念、あるいは自己満足のために。
ヨーロッパのように常に国境線を引き直してきた国の間ではなおさらだが、日中間、日韓間、日台間の領有権も事情は変わらない。
もともと自然の上には国境なんてものは存在しない
歴史をその根拠にするにしても、どこを起点にするかによって見方は180度変わってしまう。
そこに人が住んで生活をしているのならいざ知らず。
無人島であるのなら、ひとまず棚上げにして両国で知恵を出し合うのがベストだとシロートのぼくなどは愚考するのだが。
「反日」だとか「非国民」だとかのレッテルを貼ることで溜飲を下げたって何も生まれてきやしない。