ファミリーホームの立ち上げに私がかかわった事業者から私に電話があった。開業後の直後からの措置費が県から支給されないと言われたという。しかしこの措置費が支給されないと県から言われどうしたらよいかという切羽詰まった相談だった。

 

民主党政権下で開業後6か月間は児童を養育するための基礎的な一般保護単価は、ファミリーホームが運営規程で定めた受け入れ児童の定員(5名又は6名)分の措置費が支給されることに変更された。この制度は現在も維持されている。

 

県の言い分は、開業日において措置された児童がいないという理由だった。

 

だが相談をよこしたファミリーホームの事業者は、ファミリーホームを開業する以前に里親をしておりその時点で2名の児童の「一時保護委託」をしていた。その一時保護委託に掛かる児童を継続してファミリーホームで委託していたことになる。

 

「措置」の中に県の担当者の誤った誤解があったことがこの件の原因ではなかったと私は考えた。措置の典型的なものは児童福祉法28条によるものである。一方で一時保護についても児童福祉法は「措置」という文言を使用している。さらに「措置費」についての詳細を規定した「要綱86号」は上記の28条措置と一時保護による「措置」を区別していない。結果件のファミリーホームは開業の初日に「措置」された児童を委託していたことが導かれる。となれば「措置費」の受給要件は満たされたこととなる。これに対して「措置費を支給しない」ことは法令違反となる。

 

行政たるものはこうした法令や要綱の取り扱いを間違えないでもらいたい。不用意に「措置費を支給しない」と言う前に正しい解釈はどうなのかを行政内部できちんと詰めたうえでファミリーホームの事業者へ伝えるのが責務ではないのか。こうした誤った「教示」は許されないことである。事業者に与える不安感やその後の事業者側の善後処理にかかるエネルギーは決して少なくない。行政の不慣れは理由にならない。不用意な教示をした職員は何らかの責任を取るべきである。