何故「同時に」なのか?
20170602

 法人成り新規における建設業の許可申請と同時に建設業の廃業届をするのを法人成り新規の申請をした者が拒んだら行政庁は申請を受理しない。それでも、法人成り新規の申請をした者がそれを押し切っって法人成り新規の申請した場合、つまり、受理しないという行政庁に対して、行政手続法を楯に申請した場合、申請拒否処分をすることは十分ありうることだ。なぜか。経管又は専技が重複するととなり、建設業許可基準を満たさなくなるからである。この場合、行政庁は、既存の個人の建設業許可を取り消す処分をすることもできる。

 建設業法第7条は、「建設業の許可を得ようとする者は」と規定するので、建設業の許可申請の段階で、すでに建設業法第7条の基準を満たしていなければならない。建設業法第7条の基準を当該法人が満たしているならば、同時に、個人での建設業許可の申請許可基準を満たしていることはできない。そのような場合、建設業許可処分は覊束行為なので、行政庁に裁量の余地はなく、行政庁は、法人成り新規の申請を認容すべきであると私は思う。そうなると、個人の建設業許可は認められず、行政庁は、従前の個人での建設業許可の取消し処分をしなければならない。

 この取消し処分に関しては、建設業法は、行政手続法の不利益処分に関する条項をを排除しないので、行政庁は不利益処分の手続きをしなけれなならない。この取消し処分に係る行政手続法に則った手続きを回避するために、廃業届をしてくださいということである。

 ところが、建設業法第12条によれば、「30日以内」に廃業届をしなければならないとあるにもかかわらず、なぜ、同時に廃業届をしてくださという行政指導をするのか。法人成り新規の申請者が廃業届を出せば、行政庁は、二重の許可を明確に回避できるというメリットがある。

 法人成り新規の場合、法人成り新規の申請の時点で、経管又は専技についてその常勤性又は専任性について、個人と法人の両方を同時に満たすことは認められない。これは理解できる。厳密に言えばそうだろう。しかし、二重の許可を明確に回避できるというメリットはあるものの、建設業法第12条に反する行政指導までして、厳密なことを担保する実益はあるのだろうか。


 建設業の法人成り新規と廃業届については、申請の時点から、許可処分の時まで個人と法人のいづれの許可も有し得ないことになる。一カ月程度の無許可の期間ができる。この無許可の期間は、申請者が受忍しなければならないことになる。空白期間ができることを仕方がないと放置するのではなく、何らかの行政上の措置をしてもらいたいと私は思う。

 なお、申請拒否処分をされた場合は、従前のとおり、個人で建設業をすることになる。申請拒否処分に対して不服申立てをする選択肢もあるが、行政庁の行政指導に従うことを選択することも、あながち利益がないことであるとまでは言えない。

 

重ねての記述ではあるが、建設業法第12条によれば、「30日以内」に廃業届をしなければならないと規定する以上、これを反対解釈すれば「同時」も成り立つが、一方、申請者が30日以内に廃業届をすれば足るのであるのに、もし許認可庁が「同時」に廃業届を出さなければ許可しないことが行政法上許されるのかが問題となる。