生殖医療相談士の立場から、患者さんにとってわかりやすい妊孕性温存の情報を提供したいと思います。
苦境なとき辛いとき悲しいとき「にも関わらず」笑うこれをユーモアだと呼ぶのだそうです。ユーモアさって、人の大きな魅力の一つだと思います。ある意味エンターテイメント。人にだけ与えられた能力ですよね。妊活はときにシビアです。そんなとき、夫婦だったり、仲間と一緒に笑える。そんな状況になるといいなと日々思っています。
偶然は準備のできていない人を助けない、という言葉があります。結果はいつも偶然の要素をたくさん含んでいます。人の協力も必要です。説明のつかないこともたくさんありますよね。そう思うと、実は自分ができることはそんなに多くないことに気が付きますよね。タスクフォーカスして、自分ができることをし、あとは野となれ山となれ、くらいの気持ちでいたいですね。
少なくとも日本においては、PGT-Aは分岐点に立たされています。現時点では、先進医療Aにはならず、Bへ振り分けされており、未だ最終承認の通知は出ていなそうです。PGTを行うことで流産を極力回避することができることは全体的にコンセンサスが得られておりますが、妊娠率の向上という点には疑問が向けられています。それは、施設間による格差があまりにも大きく、技術力の高い施設でPGT無で胚移植>技術力の低い施設でPGT有で胚移植ということが明らかになっているためです。ここでいう技術とは、卵巣刺激、採卵術、受精操作、培養環境、生検技術などの掛け合わせです。とても専門的なスキルを要することから、かんたんなことではありません。また、それによって、本来正常であった胚を生検することでだめにしてしまう可能性があることも重大な欠点として指摘されています。ここで再度注目が集まるのは、従来のような形態学的評価にAIを組み合わせた考え方です。非侵襲のPGTというのも行われてはいますが、実用化には形態学評価のほうが近い印象です。Development of an artificial intelligence model for predicting the likelihood of human embryo euploidy based on blastocyst images from multiple imaging systems during IVF. D.M.Diakiw et al.,この研究では、胚盤胞の5000を超える画像データを読み込ませ、その画像の胚が正倍数体であるかどうか、その精度も含めて検討したものです。DeepLearningの素晴らしいところは、時間が立つほど精度が増すことと、疲れと衰えをしらないことです。それによると、正倍数性への精度を見ると全体では65%程度。品質の低い画像や誤りのあるものを除外すると、77.4%まで向上。AIスコアと正倍数体との間には明らかな相関関係があり、ハイスコアであるものとロースコアであるものの間には2倍以上の差があると報告しています。従来のガードナー分類を単純に用いるよりも13-19%程度有効であることも示唆されています。技術はいいことばかりではなく、侵襲性を伴うものもありますので、このようにもとの技術に立ち返りつつ、現代の技術と掛け合わせることでおこるイノベーションもあると思います。より侵襲度を低く、より受精卵に優しくも、高品質な医療が追求されています。
早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。といいます。不妊治療の道は遠いか近いもわからない霧の中を歩く旅。一人で進むには心許有りません。SNSだけがというわけじゃないですが、誰かとつながりながら歩むことを進めます。
生殖、という領域では、大変な不安や葛藤があります。そもそも、若年であったとしても、ヒトが妊娠する確率よりも妊娠しない可能性のほうが高いという世界観であり、加齢とともに、失敗してしまう可能性が加速度的に高くなります。日本の保険診療の制度でも、42歳までが保険診療であり、43歳以上の方には現状何も補助はない状態が続いています。それは、治療効率やエビデンスという観点でそうなのだと思うのですが、海外のデータで興味深いものがありましたので、紹介したいと思います。 Decision regret after failed autologous in vitro fertilization in women ≥42 years of age(42歳以上で体外受精を実施した患者の意思決定に対する後悔)David Huang et al.,Fertil Steril. 2022 Jun;117(6):1301-1308.この研究では、2012年から2018年の間に体外受精を受けた42歳以上の94人の女性を対象に横断調査が行われました。意思決定後悔スコアというものがあり、それが25を超えると、中程度から重度な後悔となったと条件付をしています。回答者の体外受精時の年齢の中央値は43歳でした。決定後悔スコアの中央値と平均は、それぞれ10と17.1(範囲、0〜75)でした。73%(n = 69)は、体外受精後、中程度の後悔があり、27%(n = 25)は重度の後悔(スコア、> 25)でした。出生に至らないことは後悔の増加と関連していました。最終的にお子さんを得られていないことや、流産などもここで変数としてかかってくるものと思います。治療が不成功だった人のうち、40%(n = 24)は中程度から重度の後悔を持っていました。このグループにおける中程度から重度の後悔の予測因子には、保険の適用範囲の欠如が含まれていました。治療費用はさることながら、成功確率が低いと知っていても、このように治療の不成功による心理的ダメージは患者さんを大きく覆います。だから、治療をしないのか、してはいけないのか、ということではなく、もっともっとカウンセリングや全体でのサポートをしないといけないと感じます。特にカウンセリングの充実はこの領域での一番の課題です。
働き一両、考え五両という上杉鷹山の言葉があります。すごい大切な言葉ですよね。真っ先に浮かぶのは家事のこと。よく旦那さんがゴミ出ししていて、家事手伝っている感を出す人いますよね。でもそのゴミ出しは、女性によって考えられたもので、男性のゴミ出しはただの働きってことですよね。それで、共同作業を語るのは難しいかなって思います。このケースであれば、どうしたらゴミの量自体が減るのかとか、を考える方がはるかに価値が大きいかなと思います。
FTは卵管性不妊の治療法として知られています。FTの要点についてまとめた動画を公開しました。FT(卵管鏡下卵管形成術)について卵管が狭まっていたり、詰まっていたりする卵管性不妊は従来、体外受精でしか妊娠する機会がありませんでした。事実、世界で初めて体外受精を行ったルイーズ・ブラウンさんも卵管性不妊だったと言われています。FTは、バルーンカテーテルを用いて、卵管鼠径部の詰まりや狭まりを解消することで、卵管通過性を高める手術です。これにより...youtu.beFTは保険診療での実施ができ、高額療養費の対象でもあり、加入保険によっては、生命保険も適用になります。卵管性不妊の方の根本的原因を解決することで、体外受精が必須で会った方が、自然妊娠や人工授精で妊娠できるようになる「ステップダウン」の効果があります。これは、男性でいう精索静脈瘤手術でも同じです。それをしなければ、絶対に妊娠ができないわけではありません。科学的には、そんな手術をするのではなく、体外受精でいいじゃんというコメントもあるかもしれませんが、治療を受けることによる心身への負担を軽視してはいけないと思います。もちろん、ご夫婦によって、負担の定義や度合いは違うので、こちらのものさしを押し付けることはありませんが、このように治療内容を軽減することができる治療もあるということを覚えておいてほしいなと思います。
朝活でヨガをはじめました。天候の変動も大きく、偏頭痛が出たり、気分も少し落ち気味な季節で、自分的にもかなり疲労が蓄積しているのを感じていました。娯楽を見る気分でもないし、ランニングや筋トレほど、圧をかけたい気分ではないって感じで、身体は驚くほど硬いんですが、チャレンジしたのがヨガです。いつも起きるよりも30分ほど早く起きて、30分間ほどヨガをします。素人なので、詳しいことはわかりませんから、NTCというナイキのアプリに身を任せています。上半身のメニュー、下半身のメニューをそれぞれこなす頃には、軽く汗をかくくらいに温まっています。特にお尻周り、骨盤周辺の血流はめちゃくちゃ良くなります。(調べてみると、卵巣の血流改善にも良いようなことがたくさん書いてありますね。)それからシャワーを浴び、水を飲んでリラックスして、仕事に臨みます。朝からメンタルもフィジカルもとても覚醒するし、いいことしか今の所ないです。皆さんはどんな朝活をされていますか?朝は本当に生産性が高いので、毎日「良い朝」を迎えられるといいですね。
災害大国ニッポンにいると、常に自然災害のリスクがあることを意識させられますね。首都圏直下型地震が起こるんじゃないかとか、南海トラフ巨大地震が起こるんじゃないかとか。考えたらきりがないとは思うんですが、そうしたリスクは日本にいる以上かならず存在しています。最近患者さんからの要望で多いのは、凍結保存物の保管場所を分散したいという要望です。当院では、そうした要望にもお答えできる体制を整えています。品川にある2施設、仙台、盛岡を最大限活用して、少しでも安全かつ高品質に保管することが大事ですね。特に卵子凍結や妊孕性温存などの長期保管を行うさいには、その重要度は一層増すことになると思います。
かたよらず、こだわらず、とらわれず。般若心経の教えです。(僕は無宗教です)治療をしているとその状況にとらわれてしまうことも多いと思いますが、治療がうまくいかなくたって、 自分の価値は微塵も揺るがないということを忘れないでください。
災害大国にっぽん国土技術研究センターの記載によれば、「日本の国土の面積は全世界のたった0.28%しかありません。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。また、全世界の災害で受けた被害金額の11.9%が日本の被害金額となっています。このように、日本は世界でも災害の割合が高い国です。」とされています。生殖医療の歴史が進み、一部の「劣化」が出るように生殖医療はまだまだ歴史の短い医療です。現在の凍結保存技術が確率されたのは2000年以降と考えて良いでしょう。それでも、20年以上の凍結保存をしている施設も出てきたということです。歴史が進み、一部の機器などにも劣化が出るには十分な時間です。近年、世界的には凍結タンクにまつわる事故の報告が相次いでいます。凍結保存タンクに万が一のことがあると、何十、何百もの患者さんの凍結物に対して、甚大な影響が出てしまう可能性もあり、安全な凍結保存体制はより一層重要さを増しています。日本には数多くの不妊治療施設がありますが、現在、どのような状況なのでしょうか。最近の調査や研究から紹介したいと思います。本邦における妊孕性温存療法に使用する凍結保存タンク管理の実施状況調査(厚生労働科学研究補助金(がん政策研究事業)研究班(20EA1004))この調査では、622施設を対象にアンケートを取り、回答が得られた352施設の保管状況を調査しています。Q1.凍結タンク内の液体窒素の残量管理液体窒素が満タンの状態から枯渇するまでには数ヶ月かかりますが、万が一タンクの不具合などが発生した場合には1日と持たず、液体窒素がなくなってしまうことも考えられます。その場合、タンク内の凍結保存物は融解されてしまうリスクがあります。そのため、凍結タンク内の液体窒素の残量管理は大変重要で、重量管理の導入が増えてきているように思います。液体窒素の管理は最も重要な点ですQ2.監視頻度管理体制がしっかりしていればあまり問題にはならないQ3.タンクに警報器がついているかなお、タンクに異常が生じた場合の決めている施設は45.2%に留まった、とこの調査では報告しています。卵子凍結にしてもそうなのですが、凍結しておしまいではなく、凍結したものは長期間安全に保管し、融解して使う時の品質が高い、というのが理想的な形だと思います。凍結しておいたけど、使う時全然ダメでした、では意味がないです。しかし、凍結保存体制一つをとっても、これだけのばらつきがあることは大変驚きますね。不妊治療の方でも、2人、3人のお子さんを考えられる人は、1人目の治療の際に余剰胚を凍結される方も多いでしょうし、卵子凍結や妊孕性温存の方も年々増加傾向です。これから凍結保存を検討される方には、ぜひこのあたりもしっかりと聞いておいてほしいものです。
患者様からいただいたお手紙を紹介しています。橋本先生、吉永先生この度、無事に出産することができました。(個人情報のため中略)つわりで体重が減ることを期待していましたが、全くつわりがなく、18週末まで当直Oncallをこなし、31週産休直前まで、手術の執刀もしていました。出産も前期破水で緊急入院、手術になりましたが、前日まで出歩いていたくらいです。今は夫婦で親になれたこと喜びを噛み締めています。(中略)N◎T関東病院での出産でしたが、スタッフの方も特に食事が美味しかったので、産院を迷ったら、ぜひすすめてみてください。心から感謝申し上げます。※お手紙はここまで※名指しでお言葉をいただけるのは本当うれしいし誉れですよね。泣いてありがとうと言っていただける、数少ない素晴らしい仕事だなと日々感じます。
「力強いとは、相手を倒すことではない。怒って当然というときに自制できる力を持っていること」なのだそうです。もちろんこれが一人でできたらよいけれど、先の見えない不妊治療などの場合、一人じゃ無理だとも思うんです。だからこそ、誰よりも夫婦が手を取り合って進めてほしいという思いと、夫婦だけでも足りないときはカウンセラーの先生にお願いして、この自制心を手に入れられると良いですよね。
ホルモンについては非常に重要です。女性のバイオリズムに合わせて様々なホルモンが上がったり下がったりしていて、その状態を正確に見極めることで、治療の塩梅を調整して、時期などを特定しています。今回は卵巣から産生されるエストロゲンとプロゲステロンについて紹介していきます。女性ホルモン:エストロゲン(E2 イーツー)卵胞ホルモンとも呼ばれるエストロゲン(E2 イーツー)は卵胞の中にあり卵子を取り囲む「顆粒膜細胞」が産生分泌しています。正式名称は、エストラジオールと呼ばれ、生殖器の発育、卵胞成熟の指標となり、子宮内膜の肥厚にも関連してきます。排卵時の成熟卵胞は1個あたりおよそ200~pg/mlのE2を分泌します。卵胞が複数あれば、その個数の分だけ掛け算した値となります。この基準値を下回る場合には、未成熟排卵である可能性が考えられますし、卵巣刺激を行うことでE2は高値となりますが、3000を超えると卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まります。また、月経時に測定した基礎値が100を超える場合には、黄体化非破裂卵胞が疑われます。標準的な値は?卵胞期には25~195、排卵期には66~411、黄体期には40~261、閉経期には10~40となります。グラフに直すと二こぶラクダのような状態になります。測定する時期は?性周期によって変動します。高いとどうなる?妊娠時高くなるほか、排卵誘発剤を使用したことによる卵巣過剰刺激症候群の可能性もあります。低いとどうなる?卵巣機能不全や下垂体機能低下症などの可能性があります。女性ホルモン:プロゲステロン(P4 ピーフォー)排卵後の卵胞には「黄体」が形成され、黄体ホルモンが分泌されます。この黄体ホルモンがプロゲステロン(P4)を指します。プロゲステロンは、子宮内膜に作用し着床の準備を整え、体温を高温期に移行させ妊娠の維持には不可欠なホルモンです。黄体は妊娠が成立したには妊娠黄体と呼ばれ、P4の分泌を続けますが、着床(妊娠成立)しなかったときは、おおよそ2週間程度で低下することで月経が起こります。標準的な値は?卵胞期には0.2~1.5となり、排卵期には0.8~3.0となり、黄体期には1.7~27.0となり、閉経期には0.1~0.8(ng/ml)となります。グラフに直すと右肩上がりのような状態になります。測定する時期は?性周期によって変動します。高いとどうなる?妊娠時高くなるほか、排卵誘発剤を使用したことによる卵巣過剰刺激症候群の可能性もあります。低いとどうなる?黄体機能不全が疑われます。下垂体ホルモンと性腺ホルモンは関係性が深いため、整理しながら学んでいくと良いと思います。
年齢の傲慢さは許しがたい。若い人に教えを乞うべき。という言葉があります。まさにそのとおりですね。子どもは大人の手本ともいいます。どれだけ経験を重ねても常に謙虚にいたいものです。
患者さんからいただいた声を紹介しています。1.40-44歳 生殖補助医療で妊娠Q.通院中のことで特に印象に残ったものがあれば教えて下さい問診後に薬を処方される場合、待ち時間が大変長いことが多く、問診中に薬を渡して貰えると先生との確認も出来るので、効率的になるかなと思いましたQ.ご意見・ご感想がございましたら自由に記載ください。たくさんのスタッフ、先生のお陰でこの度、卒業することが出来ました。 涙する日もたくさんありましたが、親身になって対応して下さった皆様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。2.35-39歳 生殖補助医療で妊娠Q.通院中のことで特に印象に残ったものがあれば教えて下さい橋本先生がいつも的確に診察してくださり、安心して治療をして頂きました。看護師さんの方も皆さん優しく、励まされました。Q.ご意見・ご感想がございましたら自由に記載ください。私の場合は自然周期の移植が体にあっていたようですが、その場合は保険診療の対象外と伺ったので、その点が残念でした。 他院に問い合わせを行いましたが、他院では保険の対象のようです。対象と同じように貴院でも保険対応だとありがたかったです。→補足:こちらは院内および厚生局にも確認しましたが、自然周期ができないということではありませんのでご安心ください。3.40-44歳 卵子凍結→生殖補助医療で妊娠Q.通院中のことで特に印象に残ったものがあれば教えて下さい先生やナースさんの優しさがありがたかったです。 時間のかかる不妊治療ですが、知識をもつことで、生活との両立ができることを知りました。お世話になりました。4.35-39歳 生殖補助医療で妊娠Q.ご意見・ご感想がございましたら自由に記載ください。第一子を授かるまで、凍結胚移植を6回しました。とても長くつらかったですが、先生や看護師さんのおかげで、無事に出産できました。 第二子は2回目の移植で授かることができ、早い妊娠に驚きました。 不妊治療を始めて、自分は妊娠できるのだろうかと不安に思う日々も多かったですが、そんな私が第二子まで授かることができました。 本当に先生方のおかげです。長い間お世話になりました。ありがとうございました。人それぞれに様々な治療があり、まさに十人十色ですが、一人でも多くの方に一日でも早く妊娠していただきたい、妊娠率を1%でも高くしたいと願って、スタッフ一同努力しています。こうしたお声がスタッフにも大変励みになります。コメントいただいた患者様、本当にありがとうございます!
もしも今、タイムスリップして、10年前に戻れるとしたら、過去の自分に何を伝えたいでしょうか。僕自身は、「不安に感じているだろうけど、自分が正しいと思った道に進めば、幸せになれるぞ。」と言いたいです。それは、今自分自身が、日々充実した仕事や生活をしているからです。つまり「知っている」ということです。ただ、この言葉って、例えば、アントニオ猪木さんの「迷わずいけよ、行けばわかるさ」みたいなニュアンスですよね。実際ベルナールという方の言葉で「巨人の肩に乗っているから、遠くを見ることができる」という言葉があります。つまり、きっとこれまで各時代に生きてきた人たちの経験や知恵がちゃんと活かすってことだと思うんです。それを無視して、一から自分の手でやろうと思えば、人生が何回あっても足りません。妊活も同じだと思っていて、やはり、これまでの方の経験や知恵を最大限活かして、今だからできる最良の選択を出せるように考えられると、妊活を短く終えることができる可能性が高まると思います。正しい知識で、正しい妊活を。
不妊治療を考えるうえで、意外とつまづくことが多いのが専門用語の多さ、だったりします。その中でも特に難しいといわれるのが、ホルモンに関するお話しです。アルファベットやカタカナで同じようなものも多いため、混同されてしまいがちですが整理された知識を持つことは速やかに治療を行う上でかかせませんし知らないとイタズラに不安になることもありますので、簡単に不妊治療や妊活と関係のあるホルモンについてまとめてみたいと思います。下垂体ホルモン下垂体は様々なホルモンの働きをコントロールしている部位です。大きさはえんどう豆程度で、前葉と後葉からホルモンを分泌し、生体の機能維持を司っています。この下垂体ホルモンの中で、不妊と関連性が高いものがいくつかあります。FSH(エフ・エス・エイチ)FSH(エフ・エス・エイチ)は卵胞刺激ホルモンとも呼ばれ、卵巣における卵胞の発育に働きかけます。男性の場合には、精巣に働きかけ精子の生成を促進します。標準的な値は?卵胞期の基礎値は3.5~12.5、排卵期には4.7~21.5、黄体期では1.7~7.7、そして閉経期では25.8~(mIU/ml)ということで変動します。測定する時期は?基礎値を測定するには、月経3-7日目に検査をする必要があります。高いとどうなる?排卵障害や卵巣性無月経や早発閉経が考えられます。低いとどうなる?排卵障害や下垂体機能低下症が考えられます。LH(エル・エイチ)LH(エル・エイチ)は黄体形成ホルモンとも呼ばれ、卵巣での卵胞成熟と排卵を促し排卵後の黄体を刺激するという機能を持ちます。男性については睾丸からの男性ホルモンの分泌を促します。標準的な値は?卵胞期の基礎値は2.4~12.6、排卵期には14.0~95.6と大きく変動し、黄体期では1.0~11.4、閉経期では7.7~58.5 (mIU/ml)ということで変動しますが、基本的には10以下と考えていればよいと思います。測定する時期は?基礎値を測定するには、月経3-7日目に検査をする必要があります。高いとどうなる?排卵障害や卵巣性無月経や早発閉経が考えられます。低いとどうなる?排卵障害や下垂体機能低下症が考えられます。PRL(プロラクチン)PRL(プロラクチン)は乳腺刺激ホルモンとも呼ばれ、乳腺の発達と乳汁分泌を促します。標準的な値は?時期による差はないとされ、3.4~24.1(ng/ml)とされています。測定する時期は?時期は選びませんが、妊娠時には上昇します。高いとどうなる?高プロラクチン血症(本来、妊娠した時に上がるものが妊娠していないのに高まることで排卵障害を起こしてしまう)が疑われます。低いとどうなる?下垂体機能低下症(分娩後のシーハン症候群)が疑われます。TSH(ティー・エス・エイチ)TSH(ティーエス・エイチ)は甲状腺刺激ホルモンとも呼ばれ、甲状腺ホルモンの分泌を促します。スクリーニング検査などでも検査しています。甲状腺の病気があると排卵が起きなくなったり、黄体機能が低下して、不妊症・不育症の原因になったりすることがあります。標準的な値は?時期による差はないとされ、0.54~4.54(μIU /ml)とされています。測定する時期は?時期は選びません。高いとどうなる?甲状腺機能低下症(橋本病・亜急性甲状腺炎が疑われます。低いとどうなる?甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病・亜急性甲状腺が疑われます。いかがでしたか。特に毎回の検査で測定しているのはFSHとLHですね。必ず医師やスタッフから結果は聞かれると思いますが、あまり気にされない方は医師のコメントを聞いていれば問題はないと思います。(あぁそうなんだって割り切るのも大事)このほか性腺刺激ホルモンもありますが、まずはここまで整理してみましょう。
おはようございます。ココ・シャネルの名言で、「私のように教育を受けていない、孤児院で育った無学な女でも、まだ1日に一つぐらいの花の名前を新しく覚えることはできる」というものがあります。ココ・シャネルといえば、ファッション界の偉人です。そんな方から出てくる言葉がこのような謙虚さを携えていることを思うと、毎日、怒涛のように過ぎていく中で、日々学ぶためには、常に謙虚に、初診を忘れずに、小さいとか大きいとかにとらわれずにいることではないかと思います。正しい知識で正しい妊活を送るために、これからも地道な発信を続けたいと思います。
子宮外妊娠や婦人科疾患などの様々な理由で、片側の卵巣を摘出した患者さんもいらっしゃると思います。復習になりますが、女性にはそれぞれ左右に卵巣があります。毎月、500から1000個の卵子を消費しながら、1つの卵子が選ばれて、自然に排卵をしています。この時、左右のどちらかから排卵するのかは決まっていません。きれいに毎回1対1の比率であれば、片側の卵巣がない状態になりますと、妊娠率は半分になるという計算が立ちますが、果たしてどうなのでしょうか。今回は片側卵巣を摘出した患者さんとそうでない患者さんを比較した論文について紹介したいと思います。Live birth and pregnancy rates after in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection in women with previous unilateral oophorectomy: a systematic review and meta-analysis(片側の卵巣を摘出した患者の体外受精・顕微受精の成績に関するメタ解析)Kenny A Rodriguez-Wallberg et al.,Fertil Steril. 2022 May;117(5):992-1002.この解析では、18の論文データから統合し、片側の卵巣摘出の既往がある方の1057周期と、両側の卵巣が残っている方の45813周期の比較検討を行なっています。この結果として、出産率については、対照群と比較して片側卵巣摘出の既往のある女性は、0.72倍、治療周期あたりの妊娠率の比率でも 0.70倍と低い結果となりました。また、投与されたゴナドトロピンの用量は有意に高く、回収された卵母細胞の数はUOの女性で有意に少ない結果となりました。つまり、片側の卵巣を失うことによって、ゴナトロピンへの感受性の低下、採卵数の低下があり、結果として、治療周期あたりの妊娠率、出産率の低下につながるとこの論文では主張しています。そのため、片側の卵巣摘出を行う場合には、事前に卵子凍結、受精卵凍結などを試みるべきではないかという指摘です。近年、子宮内膜症を始めとした悪性腫瘍ではない、良性疾患の患者さんであっても、積極的に妊孕性温存をする国が増えている印象があります。それもこれも、患者さんのリプロダクティブヘルスの高まりとセットでないと、考えられないことではありますが、ひとりひとりの女性が自分に備わっている妊孕能に早くから向き合い、健康、ライフプランをゆとりをもって考えられるようになることが望ましいと思います。