覆水盆に帰らずというが… 『話のつまらない男に殺意を覚える』

2007年02月12日
[評者]落合早苗

 公人の発言が社会的な問題に発展してしまうことがある。覆水盆に帰らずとはよくいったもので、公人に限らず、不用意な発言はその人の人生を狂わせてしまうことすらある。前後の文脈から汲み取れば、必ずしも非難されるほどのことがないこともあるものの、言葉というのは残念ながら一人歩きをしてしまうものだ。


 昨年末に発行された『話のつまらない男に殺意を覚える』(ドレミファガール編/小学館)は、日本最大のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)mixiのコミュニティから生まれた書籍。何も殺意を覚えなくても…という気もするが、まあそれは言葉のあや。「場の空気が読めない男」や「キモくてツマらない上司」など、思わず女性が毒づきたくなる男性の言動についての投稿を編集してまとめたものだ。デジタル読書の世界でもダイジェスト版が新刊と同時に順次配信され、PC・ケータイともに「いいとこどり」が読めるようになっている。


 書籍化/電子書籍化にあたっては、合コン、職場、彼氏や勘違い男、メールなど、シチュエーション別に構成。フォントの大きさや、紙の場合は太さ、デジタルの場合は色で強弱をつけるなど、視覚的なインパクトを与える作りになっており、コミュニティ掲示板上でプレインなテキストを読むのとはちがった印象を持つことになるだろう。これまでのネット発書籍と比べると、編集、とりわけレイアウト面が凝っている。


 基本的に本書は、多分に毒を含みながらも笑えるトーンで貫かれている。なかには投稿者側の単なるわがままでは?というものもあれば、井戸端会議的に誇張されているものあるのだろうが、うっかりするとセクハラ・パワハラ、ストーカー問題に発展しかねない事例もある。

 気の毒にもここで祭り上げられてしまった男性諸氏(もちろん個人は特定できない)は、おそらく心のどこかに女性とはこういうもの、という性差意識があるか、女性側の心理的なプライバシー空間に踏み込んでしまったのであろう。人は言葉そのものに怒るのではなく、その態度に怒るのである、とは誰の言だったか。態度だけでなく、その人の社会的背景や相手との関係性など、感情はノンバーバル・コミュニケーション(非言語伝達)に依存するところも大きい。かみくだいていうと「あんたに言われたくない」という気持ちがそうだ。


 もっとも本書はいちいち目くじらを立てて読むような類いのものではなく、あくまでもご愛嬌のレベル。女性が我慢できない男性の言動に注目、男性諸氏はくれぐれも日ごろのうっかり発言にはご注意を。