2018年に世の中騒がせてたのは…って考えていたのですが 『日大タックル問題』とか『和歌山県大富豪殺人事件』とか?

コロナ前ですからねー そうやって思い出すとかなり昔に感じる。 なのに自分の夫の没年度って考えるとつい最近のことと感じる。

時間軸の歪みと言うか、 当事者と世間との埋まらない時間感覚のズレを感じます。


8月16日

妊娠35週くらいに膨れた夫のお腹  腹水が余りにも溜まり過ぎているとの事でCART治療をする事に。

カートとは何ぞや、アルブミン値って? と次々出てくるワードに必死に検索してついて行こうとする私。

「がんばるぞ」と呟く夫に 命が風前の灯火のようになっている事を知ってしまった自分。

愛しすぎて哀しすぎて言葉に出来ないくらい苦しくて。   この頃から自分の心がじわじわ壊死し始めているのを感じていた。


8月18日

久しぶりに凹んだお腹で楽になったねーと喜んだのも束の間  朝、夫の病室を覗くと脂汗をかいて口もきけず苦しそうな表情!

なのに病室の外では看護師が平然と電子カルテを見てる。

「ねぇ!ちょっと!患者がこんなに痛がってるのに何してんの! 何でDr.呼ばんの!ムキー」 まじギレの私。

なかなか来ない医師。  「遅い!緊急事態なのに遅い!ムキー」 2度目のキレ。

ようやく来た医師は申し訳なさげに「ご主人退院を視野に入れていたので飲み薬の痛み止めでしたが点滴に変えます。医療用麻薬でモルヒネと同等の強さになります。」  言いたい事は山のようにあったがグッと堪える。先は長い、ミソにもクソにもキレてたら効果がなくなる。夫という人質預けてるようなものなんだから。 でもこれからはもっと頻繁にチェックに来なきゃ。泣いてる場合じゃない…。

患者は命に関わる大病を患う事になり、それだけで人としての尊厳を傷付けられた気持ちになると言う。そして強い痛みや苦しさも当人の尊厳を奪って行く。医療者がそれを放置するのだけは許せない。 あの人は私が守らなきゃ。。。


腹水は一度抜いてもすぐまた戻るというが、本当だった。 一週間ほどでまたじわじわと…

そして抗がん剤の休薬期間でも夫の食欲は落ちていった。 病院食は殆ど食べられず。 医師からは高濃度の経口補給食を勧められた。

夫は私のご飯が食べたいと言う。 幼稚園児より少ない量しか食べられなくなった夫。 その頃からは毎日夫のリクエストを聞いてオムライスだのサンドイッチだの麻婆豆腐だの素朴な家庭料理を運んだ。 夫も多分甘えていたのだろう こんな事結婚以来初めてだったが毎食私が食べさせた。 結婚してからいつも夫は亭主関白タイプで、歩く時だって1人スタスタ行ってしまうし、甘えてくるなんて殆どなかった。

結婚生活21年間の中のこれが一番夫婦らしい時間だったかもしれない。 今思い返しても、あんな状況でも私にとってはしあわせな時間だった。

それでも夫の体重はどんどん落ちていく。 ついにポート埋め込みを勧められる。 鎖骨の下あたりに穴を開け太い血管に直接栄養を流し込むのだ。 腕の細い血管からでは追いつかなくなったらこうなる。 私は嫌だった。これ以上夫が痛い思いをするのを見てるのは。

だが夫は前向きだった。 ポートからでも栄養をしっかり摂取して体力つけて次の抗がん剤に備えたいと。


その頃 台湾に行っている娘から絵葉書が届いた。 「元気ですか? こちらは楽しいよ! ところでお父さんは会社行ってる?」

とだけ書かれてあった。 やっぱりあの子も薄々感じているんだ 我が家の一大事を…


9月1日

夫の53歳の誕生日🎂  ちょうど私の両親がお見舞いに入院以来初めて来た。夫は急に姿勢を正し「お母さん来年の娘の成人式の為に振袖を作って下さってありがとうございます」と挨拶をした。 医療用麻薬で朦朧としているのに。


ちょっとこの辺りを書いていたら、久々に悲しくてたまらなくなって来ました、、、

またエネルギーチャージしてから書きますね。

長文を読んでくださりありがとうございましたキラキラ