あれからどれくらいの間、口付けを交わしていただろうか。
めぐみが視線を泳がせると、窓から差し込む夕陽が目に入った。
未だ寄せ合ったまま、めぐみの唇は律子を離そうとはしない。
それは律子も同じで、ただひたすらに求め合い与え合った。
絡まる舌が吐息を荒くさせ、身体と心を火照らせる。
―りっちゃん
意を決したようにめぐみから唇を離すと
二人の間を名残惜しそうに細い糸が引き、そして落ちた。
力なくもたれかかるその身体を抱きしめて顔を上げさせると
頬を赤く染め、うつろな瞳でめぐみを見つめる律子がそこにいた。
そんな律子に、めぐみは自分の中で高まる鼓動と衝動を抑えきれなくなった。
「んっ…」
もう一度唇を重ねる。
今度は奪ったと言った方が相応しいかもしれない。
先刻までとは違って、激情に任せ熱く深く
めぐみは律子の中に押し入ろうとした。
律子は戸惑いながらも、めぐみの想いを受け入れていく。
「めぐちゃ…」
めぐみの右手は自然に律子の胸へとあてがわれていた。
触れたそこから、律子の鼓動が直接伝わってくる。
密着させるほど、更にそれが高まっていくのがわかった。
ずっと、憧れていた辿り付きたかったその場所へめぐみは手を進める。
「…いや?」
その問いに律子は困ったように頬を上気させる。
一度は瞳を伏せたが、しばらくして首を小さく横に揺らすと
めぐみはそれを合図に、あてがう手指を少しずつ動かし始めた。
「…ん…ん…」
細く小柄な身体には少し目立つ、形の良い律子の胸。
思い描いていたよりずっと、温かく柔らかな感触にめぐみは驚いた。
それを撫でるように優しく、ゆっくりと揉みしだいていくと
律子はめぐみの手に合わせて小さく身体をひくつかせた。
「ふぁっ…ん…」
塞がれた唇から律子の喘ぎがくぐもって響く。
それを耳にすると、めぐみは更に大胆になって律子を求めていくのだった。
胸にあてがう右手と平行して、くびれた腰に左手を回し、誘うように撫で回す。
たったそれだけで律子の理性と自由は利かなくなり
もう立っていられない、というばかりに足をがくがくと震わせた。
手の内で撫で回す律子の胸から
下着とブラウス越しでもわかる、先端のとがった感触に気付く。
めぐみは中指をそこへ至らせると、執拗に擦り付けた。
「あっ…ぁ…」
唇を離すと、自由になった口から律子のか細く澄んだ声が響く。
「ずっと、こうしたかった…りっちゃんに触れたかった…」
めぐみがそう耳元で囁くと
その言葉と、かかる吐息に律子は肩を震わせる。
そして恥ずかしそうにめぐみの胸に顔をうずめると、律子は呟いた。
「私も…触れてほしかった…」
その言葉は、めぐみの炎に油を注ぐようなものだった。
「りっちゃん…」
めぐみはその手で律子の身体をまさぐったまま、耳元へ唇を落とす。
それは段々と降りていき、唇が何度も首筋をなぞっていった。
「ん…」
雪のように白い素肌に、紅い軌跡がいくつも印されていく。
律子は首元へ愛おしそうに口付けを繰り返すめぐみを見つめながら
愛され、触れられる喜びに胸がいっぱいになった。
そしてそれを伝えるにはめぐみの身体を抱きしめ返すだけで十分で
わかってると、律子の耳にはめぐみのその呟きが聴こえた気がした。
「…あっ…めぐちゃ…まって…」
めぐみが先を急ぐように、口付けたままブラウスのボタンをいくつか外すと
律子はめぐみの肩に手を当て、小さく声を上げて制止する。
「これ…以上は…ベッドで…」
二人が気付いた頃には夕陽はとうに暮れていた。
律子の肩を抱きながら、薄暗い寝室へとめぐみは足を進める。
めぐみが手探りに電気を付けようとすると、だめと律子は呟いた。
「つけ…ないで……カーテンも、しめて…」
そう、頬を染めながら消え入りそうに言う律子の声が響く。
少女のように戸惑う律子を前にして
更なる鼓動の高まりをめぐみは感じていた。
めぐみが空色のカーテンを全て閉じていくと
二人だけの世界は更に闇深くなる。
「これで…いい?」
振り向いてベッドに腰掛ける律子に声をかけた。
めぐみには律子の姿をはっきりと捉える事が出来た。
律子しか見えなかった、という方が正しいかもしれない。
闇が二人以外のものを全て消し去り、愛する者だけを映し出した。
「うん…」
律子の瞳がめぐみを見つめ返すと、合図が取れたように
めぐみは律子の身体に覆いかぶさった。
「りっちゃんっ…」
海のように青いシーツの上に押し倒され、律子は
溺れてしまいそうなほど、自身の欲情が高まっていくがわかった。
先刻までの余韻など、とうに越していた。
四つんばいの体制でいるめぐみに手を伸ばし、その頬へ触れると
律子の目には、めぐみの瞳で燃える情熱が確かに映った。
欲しい、と律子は心の底から思った。
そしてその想いはめぐみも変わらなかった。
もはや二人を隔てるものは何もない。
先刻までの情事をなぞるように、めぐみは唇を合わせる。
「んっ…ふぁ…」
仰向けに両手を伸ばし、自分を抱きしめてくれる律子の身体を
めぐみは熱情を込めて触れていった。
ブラウスのボタンが全て外され、腕を通って剥がされると
律子の上半身は胸を包み隠す下着だけになる。
めぐみは手を律子の背中へと回し、下着のホックに手をかけた。
「っ…」
胸元の開放感を感じて、律子は反射的に自分の腕でそこを隠してしまう。
「見せて…りっちゃんの身体…」
耳元でそう優しく囁くと、めぐみは律子の細い腕を枕元へ誘い
カップを上にずらしていった。
「…っ」
恥ずかしさから、律子は思わず瞳を閉じてしまう。
そんな律子を前に、めぐみの熱い視線が止む事はなかった。
「キレイだよ…すごく」
めぐみのその声と同時に、熱い手指が乳房を包み込む。
「んっ…」
再び愛しい唇を塞いで舌を絡ませると
律子はもう、めぐみのなすがままになっていった。
首元よりも更に白く、滑らかな律子の胸を
めぐみは先程までより更に大胆になって揉みしだく。
手の平にあたる、先端のとがった感触に誘われて
中指と親指とで、固く起き上がったそこをめぐみは弄んだ。
「んっ…んん…」
めぐみの一つ一つの動きに
律子は身体を震わせ、腰を浮かせるほど反応した。
めぐみは一旦舌を引き抜き、律子の唇を開放する。
「もっと聞かせて、りっちゃんの声…」
そう言うと、めぐみの唇は律子の素肌へ降りていく。
先程つけた紅い印をなぞっては
また新たに律子を愛した軌跡を残すめぐみ。
「あっ…ぁ…」
素肌を掠めるめぐみの前髪さえも、律子を敏感に追い立てて
唇からは淡い吐息がひっきりなく漏れてしまう。
恥ずかしさに閉じていた瞳を、潤ませながら見開くと
そこには切なげに律子の身体を愛するめぐみの姿があった。
「あ…んんっ…」
唇で胸をなぞると、めぐみの愛撫を待ちきれないように
淡い桜色をした頂が、更に固く起き上がっていく。
めぐみも自ら求めるまま、先端を味わうように舐め上げた。
「あぁっ…」
めぐみの舌を感じた瞬間、一際甲高い声を上げる律子。
それに気を良くして、めぐみは欲情のままに
小さく敏感なそこを舌でこね回し、音を立てては吸い付いた。
「や…そんな…吸ったら…」
強い刺激に頭を振りながら、律子は思わずめぐみの頭に手を伸ばす。
しかしその手がめぐみを拒絶する事はなく、まるでもっととせがむように
自らの胸に押し付けているかにも捉れた。
―もっと感じさせたい
もっとりっちゃんを感じたい
そう心で呟き、その胸は高ぶる。
めぐみはわかっていながらも
自らの荒く激しくなっていく呼吸を、抑えようとはしなかった。
唇で乳房への愛撫を続けながら、めぐみの手は律子の足先へと彷徨う。
視線をずらすと、律子自身も無意識らしく
耐え切れないように、落ち着きなく揺れるひざが目に入った。
そんな小さな動きも、今のめぐみを駆り立てるには十分だった。
「あっ…」
スカートの中に手を差し込まれ、律子の足が反射的に閉じられる。
愛しい人が見せる不安げな表情を察すると
めぐみは穏やかな視線で律子と瞳を交わした。
すぐに枷が外れたように、律子の足の力が解けていく。
それがわかると、めぐみの手は更に奥へと進んでいった。
「ん…ん…」
内股をさすられ、敏感な律子はそれすらも感じたように声を上げる。
首や胸、他の素肌と同じく、なめらかにすべる律子の感触に
めぐみは焦らすように、手指をその場所で往復させた。
「めぐちゃ…」
もの欲しげに名前を呼ばれ、めぐみも自制が効かなくなる。
既に感じている湿った空気に誘われて、めぐみの指はついに
律子の身体で一番敏感な場所へと至った。
「あッ…!」
めぐみに触れられた瞬間、例え下着越しでも
律子の身体に仰け反るほどの衝撃が走ってしまう。
もう十分湿りきった布地の上から、めぐみが更に指を進めていくと
指先も、シーツも、律子の蜜で帯びていった。
「すごい濡れてるよ…りっちゃん」
律子が確かに感じていてくれるという
何より正直なその証が、めぐみにはとても嬉しかった。
「…いや…あッ…はずかしい…」
めぐみの囁きを耳にすると、律子は恥ずかしさのあまり
自らの手で顔を覆い隠す。
「あっ…あ…」
右手は秘所に這わせたまま、めぐみは左手で律子の手を退ける。
真っ赤に染めた頬へ手を添えると、涙で瞳を潤ませた律子が
めぐみには愛しくて仕方かった。
「可愛い…」
そう、囁きながらめぐみが唇を合わせると、弄ぶ右手に
律子は更に高まって刺激を覚えた。
しばらくして、めぐみが手の動きを止める。
「もっと…触ってもいい…?」
その問いに律子は恥ずかしそうに視線を逸らすが
小さく頷くと、めぐみの手はスカートのホックへと至った。
それを外しファスナーを下ろしてから裾に手をかけると
手伝うように腰を浮かせた律子に合わせて脱がせていく。
ついに最後の一枚になって、それも同じようにめぐみが手をかけると
今度は律子に自ら身体を浮かせる余裕はなかった。
それでも薄い布地はすぐにも律子の身体を通り抜け
濡れたそこから糸を引いて離れていく。
「こっち向いて…」
両手両足を固く閉じ、うつむいていた律子に声をかけると
めぐみはその両手に自分の両手を絡め、枕元で押さえつける。
そして律子の細く白い身体を舐めるように見下ろした。
「りっちゃんの身体…すごくキレイだね…」
そう囁いて、生まれたままの姿になった律子を抱きすくめる。
「全部、キスしたい」
そう言って再び口付けようとしためぐみの服のすそを
律子はひっぱると、訴えかけるような眼差しを見せた。
「あ…」
律子は何も言わなかったが、それが何を伝えたかったのか
めぐみにはすぐに察する事で出来た。
「うん」
神妙に頷くと、めぐみは少し照れくさそうにしながら
自ら着ていたTシャツに手をかける。
律子が伝えたかったのは「自分だけでは恥ずかしい」という事ではなく
「直接めぐみの素肌と体温を感じたい」という気持ちだった。
そんな真意を、めぐみは律子の目を見ただけで理解する事が出来た。
程なくして、めぐみも律子と同じ一糸纏わぬ姿になると
改めて愛しい身体に手を伸ばし、想いをぶつけるかのように抱きしめる。
「めぐちゃんっ…」
律子は、初めて感じるめぐみの柔らかく暖かな感触に
たったそれだけで果ててしまいそうになった。
愛する身体を抱きしめ合い、唇を寄せ合うと
二人は互いの想いと温もりに溺れていく。
そして再びめぐみの手指と唇は律子を求めていった。
「んっ…ん…」
めぐみの手が内股を擦り、少しずつ秘所へと近づいていく。
唇で素肌への口付けを繰り返しながら
めぐみは律子の身体を、愛をもって支配した。
「あァッ!」
辿り着いた、熱く濡れきったその場所でめぐみの指は戯れる。
それと平行して唇は律子の乳首を貪り
溶けてしまうほどに舌で散々に舐めまわした。
「あッあっ…!」
敏感な場所の全てをめぐみに触れられ、弄られると
律子は、与えられる快感にひたすら喘ぎ返す事しか出来なくなる。
めぐみは構わず指の動きを早め、更に溢れかえる蜜を感じていた。
「りっちゃん…りっちゃんっ…」
息のかかった声で何度も名前を囁かれ
律子にはそれすらも、自らの鼓動と興奮を高めるものに変わっていく。
同じようにめぐみの欲情も、自我すら忘れるほどに達していた。
「めぐちゃんっ…あぁっ…」
律子の喘ぎが激しくなるほど、それに合わせてめぐみも大胆になる。
指先は快楽の証を求めるように、更に淫猥な動きを見せ
一番敏感な突起へ見つけると、断続的にさすっていく。
「そ…こは…あっ…あんっ…!」
指での愛撫を続けながら、見上げるように恋人の顔を覗き込むと
シーツを握り締め、苦しいほどの快楽に瞳を潤ませる律子がいた。
好きだと打ち明けた先刻までよりずっと、律子への愛しさは募っていて
めぐみの中に身を切るほどの幸せが走っていた。
―もっと気持ちよくしてあげたい
熱い想いがめぐみを駆り立て、それを止める理由は見つからなかった。
「ツメ、立てていいからね」
頬を濡らす涙をそっと舐めとりながら囁くと
めぐみは律子の手を自らの背中へ回させた。
「ぁ…ん…」
めぐみの唇が律子の素肌をなぞっては少しずつ降りていき
その鼓動は、期待と不安におおいにかき乱される。
いくら自制を効かせようとしても、めぐみの背中へ回す手に
段々力がこもっていってしまうのがわかった。
「めっ…めぐちゃん…!」
反駁する律子に構わず、両手で強引にふとももを開いていくめぐみ。
快楽の証で溢れ返ったその場所へ、ごく自然に顔を寄せていった。
「だめ…!あっ…あぁぁッ…」
めぐみの柔らかな舌が秘唇へ至り、粘膜の間を執拗に上下する。
思いもよらない刺激に、律子は拒絶すら思考から消えて
苛むほどの快感に耐える事しか出来なかった。
最初はぎこちなかった舌の動きが、慣れていくほどに
律子を敏感に攻め立て、めぐみの中では恍惚感が募っていく。
初めて味わう律子の味に、めぐみは我を忘れて酔いしれた。
「あっあっ…めぐちゃ…そんな…に…」
唇付けた律子の秘所から、悦びの粘液が休みなく溢れ出し
めぐみが吸い付きながら舌で弄ぶと、再び溢れかえる。
何度も繰り返し、固く起き上がった頂を
手指も合わせて重点的に責めさいなんでいった。
「はぁんッ…あッ…あンッ…!」
めぐみの立てる、淫らな水音が律子の耳に響いては残り
今まで積み上げられた刺激と快楽で、その身体の限界は近かった。
無意識に立ててしまった律子の爪で、めぐみの背中には
キスマークのような、いくつかの紅い印が刻まれていく。
めぐみにはそれが何よりもの快感にとってかわった。
「あッめぐちゃんっ…わたし…もう…」
律子が限界を告げるように、更に忙しない声を上げる。
めぐみがいくら飲み切ろうとしても
律子の蜜はきりがなく溢れ出し、シーツを更に湿らせていく。
めぐみは構わず、律子を促すように弄ぶ舌と手指の動きを速めた。
「あぁッ!めぐちゃんっ…めぐちゃんッ!」
ただ求めるように喘ぎ入り、愛しい者の名を呼ぶ律子。
そんな律子の視界には、めぐみしか映らず
瞳を閉じてもめぐみが消える事はなかった。
与えられる愛情と快楽に身を任せ、その心と身体からは
めぐみへの想いが溢れ返っていた。
「好きだよ、りっちゃん…」
身体がこれ以上ないほどに強張り、仰け反りながらも
伸ばされた愛しい左手を握り返し、律子は絶頂を迎えた。
「めぐちゃ…ッ…す…きッ…あっあッあぁぁぁんッ!!」
枷が外れたように、律子の細い身体がシーツへ沈んでいく。
「はぁ…はぁ…ぁぁ…」
不規則な吐息を繰り返し、律子は酸素を求める。
やがてそれも治まると、視界では今まで見た中で一番
穏やかで優しい瞳をしためぐみを、捉える事が出来た。
それは律子がずっと求めていた、世界でたった一人の人だった。
「めぐちゃん…」
確かめるように律子が力ない腕をそっと伸ばしていくと
めぐみの方から律子の身体を抱きしめてきた。
「りっちゃんっ…」
未だ虚ろな余韻が律子を支配し
抱きしめられる心地良さにただ身を任せていた。
そして二人はごく自然に口付けを交わす。
「…やっと…」
「え?」
何度目かのキスの後、ふいにめぐみが口を開く。
「やっと一つになれた気がする…あたしの“愛しいかけら”と…」
はにかむようにそう言っためぐみは、律子にとっても
何よりかけがえのない“愛しいかけら”だった。
「あたし、もぅ離れないからね、もぅずっとりっちゃんを離さないから!」
おもちゃを独り占めにした子供のように強い口調で言ってみせるめぐみ。
それがめぐみの精一杯の誓いだとわかった律子は
繋いだ手を噛み締めるように、ただ強く握り返した。
「めぐちゃん…ほんとうに好き、愛してる…」
再び口付けようと、めぐみが顔を寄せた時
今度は律子が懇願するように口を開いた。
「あたしも、愛してる…」
照れくさそうに耳元で小さく言っためぐみの言葉は
律子の胸で確かに響き渡る。
いくら言葉を重ねても、二人には伝え切れない想いがあった。
それでも、相手から受ける愛の言葉が、心の全てを満たしていた。
今確かに感じているしあわせを1mmも零さないように
互いを抱きしめ合う腕に力をこめる二人。
愛しい温もりに包まれて、やがて結ばれた欠片はまどろんでいった。